婚約破棄からはじまる売女と蔑まれる元公女と敗北の武王の物語

　「水も食料もなしに戦える兵などいないのですよ！」
　魔王軍との戦いがつづくなか、補給の重要性を訴え続けたばかりに武王にうとまれ、婚約破棄された元公女。一切の地位と財産を剥奪され、身一つで追放される。
　「このままにしておくわけにはいかない。陛下がやらないなら、わたしがやるしかない」
　もはや、無一文の元公女は自分の体を代償に傭兵団を雇い、補給路の警護に当たらせる。そのかいあって武王の軍は勢いを盛り返し、魔王軍を押し返す。調子に乗った武王は魔王城へと侵攻。しかし、補給の不備により敗北。武王その人も戦死する。
　人類最強の軍の敗北に人々は絶望する。しかし、この事態を予期していた元公女は、すでに一大勢力を築き上げ万全の防御態勢を敷いていた。数年に及ぶ防衛戦のあと、人類はついに魔王軍を追い払う。
　勝利の立役者である元公女には、
　──誰にでも体を開いた売女。
　としての悪評がついて回った。
　「わたしは必要なことをしただけ。わたしの体は汚れてなどいません」
　毅然として反論する元公女。その信念が揺らぐのは父親不明の三人の子供を見るとき。
　──この子たちは売女の子として蔑まされる。だけど、いつかきっと分かってくれる。
　いつかきっと、この胸の棘がとれ、心から笑える日がやってくる。元公女はそう信じて、今日も平気な顔をして生きていく。
　
　婚約破棄からはじまる棘付きハッピーエンド第四段。その身を張って世界を守った女性の物語を手軽に読める短編化長編にてお届け。
※『婚約破棄からはじまる交易商となる元公女と敗北の武王の物語』改題。
※『カクヨム』にても公開。