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第二章 学園編

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 クロエ様っていい人なんだけど時々暴走する癖があるよね。
 それさえなければ完璧な御令嬢なのに……と残念な目で見ていると、ガラッと教室の扉が開いた。

「おう、クロエ!」
「お兄様!!」

 燃えるような赤髪に、体格の良い男子生徒がこちらに向かって歩いて来た。

「もう、お兄様! ここは一年の教室なんですから、勝手に入って来ないで下さいまし!」
「俺は用事があってここに来たんだ。あれ、ヘンリー殿下は?」

 へぇ、クロエ様のお兄様か。
 随分体格の良い方ね。
 マルク家は代々騎士を輩出している家柄だし、この方もきっと騎士としての教育を受けているんだろうな。
 ヘンリー殿下を探している様だけど、さっき教室から出て行ってしまったから教えてあげようかな。

「あの、ヘンリー殿下でしたら先程教室を出て行かれましたよ」
「! お、おい、クロエ。こちらのご令嬢は?」
「まぁ、お兄様! イザベル様に向かってなんて口の聞き方ですか!」
「クロエ様、いいのです。申し遅れました、私は、イザベル・フォン・アルノー。アルノー家の娘でございます」
「こ、これは失礼致しました! 私はアーサー・ド・マルクです」

 アーサー様は挨拶をしながら私をジッと見つめてきた。
 ん? なんだろう?

「あの、アーサー様?」
「はっ! これは失礼。じゃあクロエ、またな」
「もう、お兄様!」

 アーサー様はそのまま身を翻し、教室を後にした。

「全く、お兄様ったら。イザベル様、兄が失礼な態度で申し訳ございません」
「いいえ、そんな事ありませんわ」
「イザベル様はなんと器の大きなお方なんでしょう。流石はおねえ……っと、今は人がいるからこの呼び方はいけませんね」
「え、ええ」

 良かった。もし大声でお姉様呼びされたら両手で口を塞ぐところだったわ。

「さて、人も少なくなって来たことですし、そろそろ教室から移動して寮に行きませんか」
「そうですわね、では一緒に参りましょう」

 そういえば、さっき見たクロエ様のお兄様、なんだか見覚えある顔なんだよなぁ。

「あ!」
「イザベル様、どうかなさいました?」

 あの赤髪の美丈夫! 
 間違いない、攻略対象者だ!!

「何か考え事ですか?」
「え!? い、いいえ、何でもございませんわ」

 まさかクロエ様のお兄様が攻略対象者だなんて、そんな……!
 ああ、頭が痛いわ。
 今日はもう、色々あり過ぎて疲れた。
 寮に戻ったら少し休もう。
 私は、クロエ様から見えない様にそっと頭を抑えて、小さくため息を吐いた。
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