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第二章 学園編
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しおりを挟む「皆さーん、おはようございます! 魔法担当の教師が体調不良でしばらく授業を欠席することになり、臨時教師として授業を担当することになりました、リュカ・エスタです!」
え! このちびっ子が教師!?
リュカと名乗るその教師は、クリクリとカールした茶髪が特徴的で、身体は完全に子供サイズだ。
明らかに自分達よりも子供が教師であることに生徒達も動揺しているようで、ザワザワと辺りが騒がしくなった。
「はーい、皆さんお静かに! 確かに今の僕はこの通り子供サイズだけど、ちゃんと成人した大人だよ! ほら☆」
次の瞬間、ちびっ子だったリュカ先生は、大人サイズへと変化した。
「ふぅ。子供サイズの方が魔力を消費しないから普段は子供の姿をしているんだ。ちなみに、これは僕の特殊能力で、己の姿を変化させる事が出来るんだよ☆ さぁ、話はこれくらいにして授業に戻りまーす」
凄い!
リュカ先生は特殊能力持ちなのね!
ちなみに特殊能力とは、六属性以外の能力を指す。
手品みたいな能力に釘付けになっていると、ヘンリー殿下がボソリと呟いた。
「驚いたな。教師役に魔法省のトップがお出ましとは」
「え、リュカ先生が?」
「しっ。彼は人前に出ないから知る者は少ないが、あれは間違いなく魔法省の長、リュカ・エスタ卿だ」
へぇ、なんだか凄い人が教師役で来たなぁと思っていると、リュカ先生は徐に教科書を開き「ふむふむ」と何かを確認し、開いた教科書をパタンと閉じてしまった。
「なんか教科書には詠唱魔法についてツラツラと書かれているけど、そもそも魔法なんて感覚さえ掴めれば詠唱しなくても出せるよ。これは僕なりのやり方なので教科書には載ってないんだけど、教科書通りのやり方は担当教師が復帰した時にでも教えて貰ってね☆」
え!?
リュカ先生はいきなり無詠唱魔法を教える気!?
魔法は普通、詠唱が必要だ。
無詠唱は高度なテクニックで、一般的に魔力が高くないと使えないとされているのに。
生徒達はいきなり高度なテクニックを教えようとするリュカ先生に戸惑い、ザワザワと騒ぎ出した。
「はーい、皆さんお静かに! じゃ、早速リュカ式魔法術を教えちゃいます☆ うーん、そうだな。まずは皆さんその場に立って下さい」
リュカ先生に言われるがまま立ち上がる。
「まずは身体に宿る魔力を意識するところから始めましょう。目を閉じて、自身の鼓動を意識します。集中すれば身体の中心に熱があるのを感じるはずですから、その熱を末端に向けてゆっくり移動させます。そうだなぁ、身体を巡る血液を想像するとやり易いと思います。そして、指先が徐々に熱くなってきたら、その熱を外に強く放出するイメージで魔力を出します」
私はリュカ先生の言われた通り、目を瞑り、魔力の流れを意識した。
おお、なんだか身体の奥にジリジリした熱を感じる!
熱は中心から末端へ向かって移動し、指先へと集まっていく。
そして、その熱を強く出すイメージでぎゅっと力を込めてみた。
「きゃ!?」
うわわわわっ!! なにこれ!?
ふと目を開けた先にあった物は大人の頭サイズ程の炎だ。
しかし、不思議と熱くはない。
どうやら魔法を出した本人に害はないようだ。
そして、やっぱり私の出す炎はほんのり黒い。
周りを見渡すと、水が出る生徒、風が出る生徒と様々だが、黒っぽい炎を出す生徒は私以外にいないようだ。
私の出した炎を見たリュカ先生が、深妙な面持ちで私に話しかけてきた。
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