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第二章 学園編

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* * *

 ガララッ
 教室の扉を開けると、早速マリア様と目が合った。
 うわ、嫌だなぁ。また何か言わたらどうしよう。
 ビクビクしていると、マリア様の方からぱっと目を逸らした。

 良かった、今日は絡んでこないみたい。

 ほっとしながら席に着き、鞄から教本を取り出した。
 そうそう、今日は早速魔法の授業があるのよね。 

 前世にはない魔法の存在。
 前世で科学的に証明出来ないような事象に対してロマンを感じるタイプの人間だった事もあり、密かに魔法の授業を楽しみにしていたのよね、ふふ。

 実は家庭教師で習った知識を元に、私は何度か魔法を試してみたことがある。
 しかし、私が出来たことは、指先に一センチくらいの小さい炎をポッと出す程度で、それもすぐに消えてしまう。
 それに、私が出す炎は何故かほんのり黒いのだ。

 教科書には魔法で出す炎の色まで書かれていなかったし、授業中に先生に質問してみようかしら。

「イザベル嬢、おはよう」
「わっ! ヘンリー殿下!?」

 うわーーっ!! 
 朝から抱きついてこないで!?

「殿下! 昨日、人前でくっ付くのは目立つからやめて欲しいとお願いしたばかりですが」
「イザベル嬢の物思いに耽る横顔があまりに美しくて、つい手を出したくなった」
「もう、ヘンリー殿下はいつも急で困りますわ」
「ははは、すまない。怒った顔も可愛いな」

 ヘンリー殿下は私の髪にチュッと口付け、にっこり笑った。
 もー! 言ってるそばからこの王太子は!!

「ヘンリー殿下!」
「はは、そんな可愛い顔しても私には逆効果だよ。おや、クロエ嬢。イザベル嬢に用事か」
「え、ええ。ですが、お取り込み中の様でしたので改めますわ」

 クロエ様、そんな事言わずに助けて!
 私は目で必死に訴えたが、クロエ様は心なしか赤い顔で「お姉様を独り占めされるのは悔しいですが、美男美女の絡みは目の保養ですわね」と何やらブツブツ呟いていてよく聞き取れない。

「おや、もう授業か。では、席に戻るとしよう」

 はぁ、ようやく離れてくれた。

 ほっとしたと同時に複数の視線を感じ、はっと周囲を見渡した。
「ヘンリー殿下とイザベル様は仲良くて羨ましいわ」「朝から熱烈だな」というヒソヒソ声と共に、私とヘンリー殿下を見るクラスメイト達。

 か、完全にクラスから浮いている……!?

 断罪フラグを極力立たせないために、とにかく目立つ様なことはしたくなかったのに! 
 うぅ、もう泣きたい。
 私はいたたまれず、窓の外の景色を眺めていると、ガラッと教室の扉が開き、ローブを纏った小さな男の子が入ってきた。


 
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