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第七十二話 ダンジョンに入る前の練習場で

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 レアモンスターを討伐した次の日はパーティメンバーと一緒に岡山ダンジョンを探索する。朝の鍛練を終えて、しっかりと準備をした後にダンジョンに向かった。

 パーティメンバーとは探索者センターの中で落ち合った。

「皆、おはよう。いつもより到着が早くないか?」
「リーダー、おはようございます。皐月が朝早くから早く行こうって五月蝿くって、楽しみでしょうがないみたいです」
「リーダー、おはよう。オレは別に五月蝿くしてないぞ。楽しみにはしてたけどな」
「リーダー?オレ?皐月さんは体調でも悪いのか?」
「麟瞳さん、おはよう。皐月はオレっ娘だったみたいよ。パーティに入れてもらうために言葉に気をつけてたんだって、あれでも」
「あの言葉遣いの何処に気をつけてた要素があるんだよ」
「もう皐月の言葉遣いは諦めて、パーティの中では大目に見てあげて下さい。それに仮とは言っても、一応パーティメンバーですからさん付けはやめて下さいね」
「分かった、これからは皐月と呼ばせてもらうよ。まあ、身内の中では言葉遣いはあまり気にしなくて良いけど、オレか?外から見たら男性二人と女性二人のパーティに見えるかな?」
「リーダーはハーレムを作りたいんだろ。何を気にしてるんだ」
「別にハーレムを作りたい訳じゃないよ。皐月みたいに言う奴がいるから嫌なんだよ」
「リーダー、外から何を言われても気にすることはないと思います。早く用意してダンジョンに入りましょう」

 不毛な会話をしてしまった。肩を落として更衣室へと移動した。

 今度は僕の方が早かったみたいだ。受付の近くで皆を待ち、四人揃ったところで入場受付をしてもらう。探索者証を渡しチェックをしてもらい、武器ケースの封印を解いてもらう。

「ちょっと練習場に行きましょう」

 美姫の提案で練習場に移動する。ダンジョンに入る前に身体をほぐすことは大切なことだよね。

「リーダー、昨日何があったんですか?」
「いきなりどうしたんだ?」
「いいから答えて下さい。何がありましたか?白いジャケットも着ていないし、刀も変わっています。おかしいと思います」

 隠すつもりは無かったんだが、聞かれてから答えるのには罪悪感が湧いて来るな。昨日のことについて皆に説明した。

「リーダーが戦闘狂だとは思っていませんでした。これからは気をつけないといけませんね」

 美姫がとんでもない勘違いをしているようだ。ここはしっかりと訂正をしておかないといけない。

「美姫、僕は戦闘狂ではないよ。間違った認識をしてもらうと困るぞ」
「そんな勝てるか分からない魔物と戦って、戦闘狂ではないと言われても信じられません」
「戦うしかなかったんだ。僕以外にはあそこにはDランカーしかいなかったんだし、僕は彼女達の保護者と思っているからね」
「保護者と思っているなら、尚更戦うべきではないです。やはり戦闘狂で確定です。普通なら帰還石を使います。この前このダンジョンで手に入れたばかりだから今も持っている筈だと思います」

 僕は手に帰還石を出してみた。手にして自分自身で愕然とした。皐月に腕輪の性能を隠すことを忘れてしまうほど驚いていた。何故帰還石のことを忘れていたのだろうか?

「その反応は、まさか気付かなかったんですか?リーダー、しっかりして下さい。もう私達のリーダーなんです。他の人達とむやみにパーティを組まないで下さい。このパーティ内ならフォローは出来ますから」
「リーダーもバカだったんだな」
「麟瞳さんの顔を立てるようにって美姫から言われたでしょ。麟瞳さんはこのパーティの大黒柱なんだから。この場合はリーダーもおバカだったんだなが正解よ」
「この場合はバカではなく、抜けているが正解だと思います」
「じゃあ、リーダーもおマヌケだったんだな」
「もというところがおかしいよ」

 何でこんな会話を聞かされているのか分からないが、僕の心が削られていることだけは確かだ。立ち直ることが出来そうにない。

「今回のドロップアイテムの中にレアモンスターの皮があるんだよ。それを加工してもらって皆のジャケットを作らないか?今回のことがあって、装備品は良いものにしておいた方が良いと思ったんだ。今回は黒い皮だから色的にどうかと思うかもしれないけどね。前回の赤い皮を残しておけば良かったと思ったよ」
「ちょっと待って下さい。前回って、リーダーはそんなにレアモンスターに会うんですか?私は一回もあったことありません」
「オレもあったことはないぞ」
「これも麟瞳さんのスキルのせいだったりしてね。麟瞳さんとレアモンスターを戦わせたいのかな?考えるとなんだか怖いね」

 気を取り直した後にジャケット作りを提案してみた。折角なので、実物を見せてみる。

「これだけ大きいとパーティメンバー全員の物が作れそうです。加工にどれくらいの費用が掛かるか調べてみないといけませんね。ドロップアイテムでこの大きさとは………よくこんな相手に勝てましたよね。レイドボス級の大きさだと思います」

 前向きに考えてくれているようだ。

「私は賛成だよ。黒の装備なんて恰好いいじゃない。麟瞳さんは全身真っ黒になっちゃうね」

 後日に費用などを調べて結論を出すことに決めた。話しながらストレッチで身体をほぐすことが出来たし、さあダンジョンに向かいましょう。




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