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第八十五話 岡山ダンジョンの三十五階層を攻略

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 探索用のジャケットを児島の工房に注文した翌日から、岡山ダンジョンの新層攻略を行うことにした。

 まずは今までと同じ二十六階層から三十階層を探索して新しい装備の試運転を行い身体に馴染ませていった。三十一階層のセーフティーゾーンでお弁当を食べながら三十五階層までの情報を共有する。

「ここのダンジョンはボス部屋の布陣をそのまま受け継ぐことが多いのが特徴だから、何度も三十階層のボス部屋で練習してきたことがいきると思う。三十一階層からのゴブリンパーティは三十階層のボス部屋ほど数がいない。まずは美姫と僕で後衛のゴブリンを倒す。前衛のゴブリンの内、ホブゴブリンは皐月と真姫と詩音で相手をしてくれ。三匹までは任せた。四匹以上いる場合には僕も参戦するよ。他のゴブリンソードマンとゴブリンファイターは美姫と僕で対応しよう。慣れているからといって気は抜かないようにしていこう」

 他の探索者に会うことなく探索は進んだ。剛腕の腕輪の威力は絶大だ。ゴブリンソードマンとゴブリンファイターを一撃で斬り捨てていく。

 真姫は水魔法の槍に苦労しているようだ。突けば穂先から水の槍が飛んで行き、振り下ろせば水の刃が飛んで行く。加減が難しいようで、全力で槍を振れば効果が大きいが魔力を使いすぎてしまう。使いながら慣れていくしかない。魔法は使わなくてもホブゴブリンは倒すことは出来るんだけどね。まあ魔法の効果を使いたい気持ちは良く分かる。

 詩音は火魔法の剣と重量軽減の槍を出し入れしながら、いつも通り相手を翻弄するようにダメージを与えていく。マジックアイテムにより大幅に火力が上昇したが、まだまだこんなものではないはずだ。頑張ってもらおう。

 この二人がいろいろ試しながら攻撃が出来るのも皐月のおかげである。相変わらずの安定感で、二匹、三匹のホブゴブリンの攻撃を受け止める。挑発の効果により常にゴブリンの意識を引き付けて、二人のアタッカーに自由に攻撃させているのだ。

 美姫も風魔法で変わった。今のところ一番変わったのは移動の速度だ。皆の攻撃の邪魔にならないような位置に移動して矢を射ていく。風魔法を使用して驚くほど移動速度が速くなった。矢に風魔法を纏わせることは上手くいっていないようだが、そんなにすぐ出来る技術ではないだろう。今後に期待している。

 それぞれに課題を設けて試しながらボス部屋の前に到着した。水分補給をしながらボス部屋の情報を共有する。

「皆、三十五階層のボス部屋の情報は取っているか?」
「勿論だぜ」

 皐月以外も皆が頷いている。

「後衛のゴブリンは相変わらずアーチャーとメイジが複数いる。これは美姫と僕で対処する。前衛のゴブリンはホブゴブリンだが、武器を持ったホブゴブリンが入ってくる。力が強くスピードもあり更に武器を持っているホブゴブリンは厄介だろう。注意していこう。皐月は何匹の相手が出来そうだ?」
「三匹はいけると思うが、実際に相手をしてみないと分からないな」
「最初は三匹をいつものように三人で相手してもらおう。早く討伐出来たら他のホブゴブリンを倒すのを手伝ってくれ。前衛と後衛を合わせて全部で約二十匹だ。美姫は全体を見ながら指示出しを任せた」

 準備も調った。五人でボス部屋に入った。入り切ると扉が閉まる、戦闘の開始だ。まずは美姫と分担して後衛ゴブリンに攻撃を加える。数が多い六匹もいる。

『皆、後衛ゴブリンが六匹もいる。もしかしたら倒す前に攻撃をして来るかもしれない。注意しておくように』

 念話をしながら魔法を撃つ。僕の魔法と美姫の連射が後衛ゴブリンを倒していくが、一匹のゴブリンメイジの魔法が放たれた。ファイヤーボールだ。

『ファイヤーボールだ。避けろ!』

「オレに任せておけ!」

 皐月の盾がファイヤーボールを防いだ。流石魔法防御の効果がある盾だ、びくともしなかったよ。美姫がゴブリンメイジに矢を射た。

 まだ戦闘は始まったばかり、靴の風魔法を使い高速でホブゴブリンに近づき、顔面にファイヤーボールを撃つ。まだ倒せてない時には刀で止めを刺す。この攻撃が一番効率的に討伐できるが、折角剛腕の腕輪を装備しているんだ、ここからは刀だけで相手をしよう。武器を持ったホブゴブリンには要注意だということを忘れずに。

 高速で近づき袈裟斬り、更に首を一文字斬りで落としていく。三人も最初の三匹を倒し、次のターゲットに挑発をし、引き付け二人のアタッカーで倒す。僕も負けていられない。高速で移動して刀を振る。さいごのホブゴブリンの頭を美姫の矢が貫いた。戦闘終了である。

 ホッと一息だ。最近恒例になりつつあるハイタッチでお互いの戦闘を讃えあい、ドロップアイテムを回収する。銅色の宝箱が出てきた。また美姫は僕に開けさせたいようだが、この宝箱を開けるイベントも探索者の楽しみの一つだと思っている。順番を決めて開けていくようにしようと提案した。

「私が一番ですね。遠慮せず開けさせてもらいます」

 順番はジャンケンで決めて、美姫、皐月、詩音、僕、真姫に決まった。美姫が開いた宝箱の中からいつもよりも色の濃い赤色と青色のポーションが五本ずつと巻物が出てきた。回収してボス部屋奥の階段を降りて次の階層に到着した。まずは転移の柱に登録する。

「いつもよりも色の濃いポーションですよね。これは高級ポーションなのでしょうか?」

 美姫の問い掛けに僕は答えておく。

「確かにこれは高級ポーションだよ。この前のレアモンスター戦でも役に立ったよ。これは買取りに出さずに各自で一本ずつ保管することにしよう。僕はこの前のこともあったので常に一本は持ち歩くようにしているんだ。これで皆が持っていれば安心できるよ」
「オレは魔法は使わないから魔力ポーションは要らないぞ」
「いずれ魔法の効果のある盾か魔法のスキルオーブが出てくるだろう。その時の為に保管しておけばいいよ。魔力ポーションだけ何なら僕が代わりに預かっておこうか?」
「リーダーに預けておくぞ。持ってても使う頃には忘れていそうだからな」

 ダンジョンの外に転移し、いつものように武具店に寄ってから、買取りをしてもらいに行った。

「マジックアイテムは爆炎魔法のスクロールです。爆炎魔法は周りに人がいるところで絶対に使わないようにしてください。巻き込んでしまいますからとても危険です。買取り価格は五十万円です」
「何メートル離れていれば大丈夫ですか?」
「何メートルというよりも、スクロールを敵に向けて魔力を流しますから。その方向にいないようにしてください。何メートル離れていてもです」
 
 かなり危険な魔法のようである。使用時には注意しておこう。そして魔法のスクロールは使い切りアイテムだ。使い時が難しそうだ。

 高級ポーション全部と魔力ポーションも全部、そして魔法のスクロールは持ち帰りすることにして残りを買取りしてもらった。三十階層のボス部屋の宝箱から出てきたマジックアイテムも買取りしてもらったので皆の懐も暖かくなった。




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