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第百話 姫路ダンジョンの六階層から十階層を攻略

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 六階層の転移の柱に到着した。登録をしてセーフティーゾーンでお弁当を食べる。

「宝箱の中の延べ棒は何の金属でしょうか?」

 銀色の宝箱の中からは五本の金属の延べ棒が出てきた。最初の宝箱だし、初回特典で豪華になっているのかも知れないな。

「鑑定してもらわないと分からないけど、ただの鉄とかじゃないと思うよ。一応銀色の宝箱だからね」

 皐月は延べ棒には興味がないらしい。

「オレのストーンバレットだとソルジャーアントにあまりダメージが入らないぜ」
「僕も以前戦ったときには火魔法で倒しきれなかったな。キラーアントだとほとんどダメージを与えられなかったように感じたよ。皐月はソルジャーアントとキラーアント、それからマザーアントには魔法を使わないほうが良いかも知れないな。全員魔力枯渇には注意しておこう」
「フライアントが鬱陶しいです。初めて短剣を使いました」

 フライアントとは飛び回るワークアントみたいなものだ。皐月が盾でたたき落として、美姫が短剣で止めを刺していた。流石に弓での攻撃は無理のようだ。

「ここからはキラーアントとマザーアントも出てくる筈だから、注意していこう。マザーアントは僕達よりも大きいらしいから、噛まれたら大変だよ。僕も一度も戦ったことがないよ」

 攻略を再開し、六階層を進んで行く。

 少し進むとキラーアントを見かけるようになってきた。残念ながらすべてのキラーアントは既に他の探索者パーティと交戦していた。キラーアントが宝石をドロップする情報は皆が知っているのだろうか?

 七階層を探索しているときにやっと大物アントに遭遇した。マザーアントは話に聞くより近くで見る方が圧倒的に迫力があるね。周りにキラーアントやソルジャーアントも数匹いる。マザーアントが統率しているのだろうか?

『僕がマザーアントの相手をしても良いか?』
『むしろリーダーに相手をしてほしいです。うちのエースアタッカーですからお願いしますね。周りの相手は出来るだけ倒しますが、リーダーも他のアントに注意はしてて下さい』

 雷を纏って高速でマザーアント目指し移動する。途中で出会うアリは邪魔なものだけ斬り捨てる。敵と判断したのだろうマザーアントが大きな身体に似合わず俊敏に動き近づいてきた。躱し際に頭部と胸部の間のくびれたところに向かって刀を振り下ろす。半分ぐらいは斬れただろうがまだまだ相手も動いて来る。もう一度躱し際に反対側から斬り、頭部を斬り落とし討伐を完了した。

 残っているキラーアントは一撃で頭部を斬り落とした。僕は強くなっていることを実感したが、まだまだこれからだ。最後は詩音が炎の槍でキラーアントを倒して戦闘終了だ。

 ドロップアイテムを拾っていると結構大きな宝石があった。ダイヤモンドではなさそうだから、依頼達成には五カラット必要だ。五カラットってどれくらいの大きさなんだ?大体カラットという単位は何を表しているんだ?興味がないから何も知らないな。

「これって五カラットあるのか?」

 知らないことは知っている人に聞いてしまうのが手っ取り早い。三人のパーティメンバーに聞いてみる。

「大きいっすね。多分五カラットはあるんじゃないっすか」
「オレもあると思うぞ」
「私もそう思います」

 何だかあやしい回答だが、宝石に興味がなければしょうがないよね。三人ともオシャレよりもダンジョンだもんな。

 一番の強敵を倒すことが出来たので、少し安心して探索を進めた。マザーアントを含む集団にも三回遭遇して倒した。僕を除いた三人だけでも倒すことが出来て、満足そうにしていたよ。十階層のボス部屋に到着した。一組だけ並んでいるのでその後に並ぶ。

「ちょっと話をしても良いか?」

 前に並んでいるパーティの中の男性一人が話しかけてきた。

「ええ、大丈夫ですよ。姫路ダンジョンをホームダンジョンにしている方達ですか?」
「ああそうだ。見かけないパーティだったので話しかけさせてもらった。俺達はここをホームダンジョンにしている地元のパーティで、ここを完全攻略してBランカーになることが目標だ。君達はここはいつから探索しているんだ?初対面で不躾な質問をして申し訳ないが教えてくれないか?」
「ええ、良いですよ。見慣れない人がいると気になりますよね。僕達は昨日姫路に来て、今日から探索を始めました。一応僕はAランカーでこちらの三人はBランカーです。いろいろな魔物と戦う経験を積むためにここに来ました。でも、どうしてこの階層を探索しているんですか?完全攻略を目指しているならもっと深いところまで進んでるんじゃないんですか?」
「今、四十階層まで進んでいます。ここは稼ぐために毎回一回は来るボス部屋です」

 言葉遣いが丁寧になった。どうしてそうなった?何か僕がしたのだろうか?

「あのー、言葉遣いは前のままで良いですよ。多分僕達の方が年下だと思いますし、三ヶ月はここのダンジョンを探索する予定ですから、何回か会うと思います。いろいろと教えてほしいこともありますから、気を使われると聞きにくいですしね」
「因みに俺達は全員二十五歳の同級生パーティです」

 もっと年上かと思ったぞ。ギリギリ年上で良かったよ。

「僕達は二十二歳と二十三歳ですから、やっぱり丁寧な言葉はやめてください」
「ああ、分かったよ。俺達は《白鷺騎士団》という六人パーティだ。よろしくな」
「僕達は《千紫万紅》という四人パーティです。よろしくお願いします」

 騎士団好きがここにもいた。名前を聞いたとき笑いそうになったよ。あぶないあぶない。近所の美味しいお店を早速聞いた。そんな情報が欲しいのかと言われたけど、一番大事な情報だよね。《白鷺騎士団》がボス部屋に入って行った。

「ここのボス部屋情報を確認しよう。美姫、よろしく」
「分かりました。ここはマザーアントが二匹いる集団です。少なくとも五十匹はいますから、囲まれないようにしないといけません」
「僕の刀の雷魔法でいこうか?」
「いや、いいっす。あれは勘弁してくださいっす」
「オレも耳栓がないと嫌だぞ」

 かなり嫌われてしまった。早く対策を考えないといけないな。

「じゃあ、美姫はキラーアントとソルジャーアントを中心に魔法弓で倒していってくれ。皐月は美姫の側で護りをお願いな。詩音と僕は数を減らしていこう。途中でマザーアントが倒せるようなら攻撃をしていくよ。美姫は全体をよく見て指示出しをお願いね」

 ボス部屋の扉が開いた。僕を先頭にボス部屋に入り、扉が閉まった。マザーアントの二匹が二メートルで、一メートルのキラーアントが十匹以上いる。見た目はなかなかの迫力ある布陣だ。戦闘を開始しよう。

 美姫が連射して倒している方には近づかず、キラーアントに向かって移動する。刀を一閃するごとに黒い靄になり消えていく。

『マザーアントに攻撃を入れる。もう一匹に注意しながら他を減らしてくれ!』

 一匹のマザーアント目掛けて接近する。移動させないためにまず脚に攻撃を集中する。一本、二本と斬り捨て、動きが鈍ったところでいつものくびれた部分に刀を振る。一撃で頭部は落とせなかった。少しがっかりしながら止めを刺した。

 もう一匹は三人で倒してもらおう。全員で成長していこう。

『今度は周りの面倒は僕が見るから、三人でマザーアントをお願いね』

 指示出しは美姫に任せたのに、僕が最終的にはしてしまった。少し反省。

 三人の邪魔にならないように一匹ずつ確実に倒す。すべて一撃で始末する。最後にマザーアントの頭部に詩音の槍が突き刺さり頭部を燃やして討伐完了。

 ハイタッチで健闘を讃えあった後にドロップアイテムの回収に向かう。ドロップアイテムを拾うのがマジで大変だったよ。数が多すぎるよ。回収途中で小さな銀色の宝箱が現れた。皐月が開けた宝箱の中身は宝石が一つだけ入っていた。これはダイヤモンドではないのか?結構大きな宝石だった。

 ボス部屋奥の階段を降りて十一階層の転移の柱に登録する。

「これからどうする?まだ五時にはならないだろう」
「もう一度ボス部屋を回るほどの時間はないと思います。時間までお茶でもしながら待ちましょう」

 今日の探索はここまでにしてダンジョンを出ることになった。僕の腕輪の中から回収したドロップアイテムを三人に渡していく。腕輪の情報は出したくないからね。

「リーダー、一日で依頼達成ですね。【豪運】スキルが凄すぎです。三ヶ月後には私達大金持ちになっている予感がします。もっとクランハウスを豪華にしておけば良かったのかしら?リーダーだけが出資しなくても良いと思います。私達も十分出せるようになりそうです」
「本当に凄いっすね。私もリーダーと美姫と同じ装備にしたいっす。ヘルメットさえあればリーダーの一撃も大丈夫そうっすから。でも、色は黒以外にするっす」
「オレも折角だからそうするぜ。勿論、黒にはしないぞ」

 何故そこまで黒を嫌うんだ。結構気に入っているんだぞ。多分、僕と美姫の方がスタンダードな考えだな。………ただの願望だけど。

 予想以上にドロップアイテムが多い。二週間もこの階層で練習してたら本当に大金持ちになってしまいそうだ。たまに鉱物がドロップするって言ってたのは誰だ!

 転移の柱からダンジョンの外へ転移した。
 


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