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第百三十五話 僕の強化計画、そして憧れのお二人と

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「入団テストは無事に終わったんですか?」
「無事にとは言えないが、終わったよ」

 美紅さんの話によると、五人が青いオーガが消えた後に、ドロップアイテムを回収してダンジョンを出てきたのが夜の八時頃。出てくると周りはパニックになっていた。両クランのマスターとサブマスターがダンジョンから帰ってこないから当たり前の反応だろう。出てきた時間も遅いので、合格発表は次の日の午前中に《Black-Red ワルキューレ》のクランハウスで行うことにした。受験者は女性はクランハウスのゲストルームに男性は近くのビジネスホテルに泊まり、次の日が来るのを待った。ダンジョンから帰ってきたクランの幹部達で、ダンジョンの探索の結果を元に合否を決めたのが夜の二時。朝の十時に合格発表を行ったが、今回は不手際もあったので、不合格者の一人一人にどうして合格できなかったのかを説明して納得してもらった。合格者は《Black-Red ワルキューレ》が三人、《東京騎士団》が二人だった。その合格者達と合格パーティーを行ったのが昨日の夜だったそうだ。

「ん、ということは、僕は一日以上寝てたんですか?」
「そやで、なかなか起きへんから、皆心配しとったで」
「僕のクランメンバーはパーティーに参加できましたか?」
「あんたが心配で、それどころやなかったわ」

 《東京騎士団》と会えるのを楽しみにしていたのに、それは悪いことをしたな。

「君は榊さんにおんぶされてダンジョンから出てきて、すぐに懇意にしている医者に見てもらったんだ。バトルスーツはボロボロになっていたけど、大きな外傷は無く極度の疲れで意識が無くなったのだろうと言われて、ウチのクランハウスに泊めていたんだ。まあ、君が一日半で起きられて良かったよ。ボロボロの君を見て、世那も加納さんもアタフタしてたからな。面白かったよ」
「あんたもオロオロしとったやんか。美紅のそんなん見るの初めてやったわ」
「俺達は君を強くしないといけないらしいからな。早く良くなれよ」
「加納さん達は東京へはいつ帰るんですか?」
「君の意識も戻ったし、今日にでも帰ろうかと思っているよ」
「龍泉君のことを創一は心配していたんだ。壁を越えるのに君は消極的だったのに、創一が探索するのを決めたようなものだったからね。危険な目に合わせて申し訳なかったな。君を強くするために、また関西に来させてもらうよ」
「あのー、今日の御昼御飯ご一緒しても良いですか?僕のクランメンバーにお二人の大ファンがいるんです。パーティーで会わせていただく予定だったのですが、こんなことになってしまったので。よろしくお願いします」

 二人とも快く了承してくれたよ。

「あんたのところは、ウチのファンやったやろ」
「勿論ですよ。四人とも探索者の憧れですからね。誰が一番とか決められないですよ」
「あんたもウチのファンなんか?」
「いや、僕は美紅さん推しですね」
「なんでや~!」
「冗談ですよ」

 とりあえず部屋に戻り、クランメンバーに御昼御飯を加納さんと榊さんの二人と一緒に食べることを伝えた。勿論皆が大喜びだ。それからまだ調子が戻らないので、昼まで休ませてもらった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 《Black-Red ワルキューレ》の食堂でお昼をいただくことになった。《花鳥風月》のクランメンバーと共に食堂に入る。

「麟瞳さんがなんでここにいるんですか?」
「あれ、ほんとに麟瞳だ。何してるの?」

 元パーティメンバーの天沢和泉と紅心春にバッタリ会った。ここにいるということは、合格したようだね。

「二人は入団テストに合格したのかな。おめでとう」
「当たり前でしょ」
「合格できるとは思っていたけど、合格できてホッとしたわ」

 自信満々の心春と慎重な和泉らしいコメントだな。

「麟瞳、何しとんや?早う行かんと加納と榊が待っとるで」
「すみません。すぐ行きます」

 声をかけて来たのが世那さん。小春と和泉がビックリしてるよ。

「これから《東京騎士団》のクランマスターとサブマスターの二人と食事をするんだよ。じゃあ失礼するよ」

 待ってくれている二人の元に行き、遅れたことを謝る。

「遅くなってすみません」
「いや、まだ約束の時間になってないから、謝らなくて良いよ。今日は楽しく食事をしよう」

 二人を囲むように九人のパーティメンバーは座り、何故か僕は目の前に世那さんと美紅さんが座る。会食が始まった。うちのパーティメンバーには対人スキルが高い真姫がいるから安心だ。何を話題にしているのか分からないが滅茶苦茶盛り上がっている。僕は世那さんと美紅さんと結構真面目な話をしていた。

「君を強くしないといけない。週に何回かウチのクランに来てAランクダンジョンを探索しないか?」
「《花鳥風月》はまだCランクダンジョンをメインに探索してます。僕がいきなりAランクダンジョンに挑戦して大丈夫ですかね」
「この前のゴブリンとオーガを乗り越えたやろ。あんなに多いのAランクダンジョンでもなかったわ。あんたはAランクダンジョンで十分通用するで」
「どんなメンバーで探索するんですか?」
「私と世那は確定で、タンクはいらないだろう。どのポジションのメンバーを入れるのが良いだろうか?とにかく戦闘経験を積んでもらおうと思う」
「今度、新しく《花鳥風月》に入るメンバーの一人も連れて来たいんですが良いですかね」
「Aランクダンジョンを探索する力があるなら良いが、大丈夫なのか?」
「僕より強いから大丈夫だと思います」
「麟瞳が信用しとるんならええやろ。あんたの身体が直ったら週一回から始めてみよか」
「でも、そんなに親切にしてもらっていいんですか?僕には返せるものが何もないですよ」
「そんなん気にせんでええわ。あんたは強うなることだけ考えとき」

 ありがたい話をしてもらった。僕は正輝にもう一度声をかけてみようと思う。小春と和泉が合格したということは、《百花繚乱》は解散だろう。僕が解散させた張本人だ。しっかり謝って、許してもらってから《千紫万紅》に入ってもらおう。許してくれるだろうか?

 悠希の結果はどうだったのだろうか?まあ、そんなことはどうでもいいな。

 加納さんと榊さんの二人との会食は楽しく進み最後に記念写真を撮ってお開きとなった。何故か前列真ん中に僕。僕の左側に《東京騎士団》の二人、右側に《Black-Red ワルキューレ》の二人そして九人のメンバーが前列の端と後列に並んだ。

 これを待ち受け画面に設定だな。食事後に《東京騎士団》は東京へと帰って行った。因みに悠希は雑用係からやる気があるならという条件で合格したと聞いた。プライドだけが高い悠希がやっていけるのだろうか?

○●○●

 メッチャ悩んだっす。赤峯様の隣と黒澤様と赤峯様の後ろ。どっちがベストポジションなんすかね。取りあえず全力ダッシュをかましたっす。赤峯様の隣をゲットしたっす。

「もっとこっちに寄らないと写らないぞ」

 声をかけてもらったっす。天にも昇る気持ちになったっす。後ろだと声はかけてもらえなかったっす。選択は間違ってなかったっす。お二方と握手もしてもらったっす。

 前回の《Black-Red ワルキューレ》のパーティーでも目の前でお会いできて満足したっす。今回はそれ以上に感激したっす。本当に《千紫万紅》に入れてもらえて良かったっす。誘ってくれた美姫、入れてくれた皆、そして憧れのお二人に会わせてくれたリーダーありがとうっす。
 
 
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