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第百九十二話 Aランクダンジョンを探索するための六人目のメンバー

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 《Black-Red ワルキューレ》さんと《花鳥風月》が、クラン同士提携してAランクダンジョンの探索をしていく事に合意したが、気になることは聞いておこう。

「世那さんと美紅さんは、Aランクダンジョンを探索する時の《千紫万紅》の六人目のメンバーはどうしたら良いと思いますか?《Black-Red ワルキューレ》さんの隠し玉的な、超優秀なユニークギフト所持者なんてレンタル出来ませんか?」
「ウチのユニークギフト所持者か?ええのがおるで、和泉と心春やったらいつでも貸し出しオッケイや」
「和泉と心春ですか?絶対に揉める未来しか想像できないですね。お二人は《千紫万紅》の六人目を、誰にすれば良いと思いますか?」

 先ほど聞いたユニークギフト所持者の成長速度の話を聞いたが、僕達のクランにはユニークギフト所持者は五人しかいない。Aランクダンジョンをフルメンバーの六人で探索しないのは自殺行為だろう。Aランクダンジョンの探索経験豊富なお二人はどう考えているのだろうか。

「私はユニークギフト所持者の恵梨花を《千紫万紅》に加えて、Aランクダンジョンの探索に臨むのが良いと思うな」
「美紅、それはあかんわ。斥候としては麟瞳の方が、探知も素早さも圧倒的に上や。しかも麟瞳は正輝と二人でエースアタッカーもこなす、恵梨花がおっても役に立たんで。ウチは綾芽を薦めるわ。まだ二十歳にもなってないってビックリしたで。ウチが槍の使い方を教えたら、どんな探索者になるかワクワクする程の逸材や」
「綾芽とはまだパーティを組んでないから実力は分からないが、世那がそこまで言うほどだから力は本物なんだろう。一度見せてもらいたいとは思うが、恵梨花よりは良いのかもしれないな」
「いやいや、綾芽はまだ高校を卒業したばかりですし、ユニークギフト所持者じゃないですよ。僕としては妹ということもあるかもしれませんが、過酷な探索をさせたくないです。もっと《カラフルワールド》の皆と楽しく過ごしてもらいたいと思っています」
「麟瞳、俺も出来ればその方が良いとは思うが、四年という期限があるんだぞ。綾芽ちゃんが六人目のメンバーというのが、戦力的にみて妥当だと俺も思う」

 うーん、戦力的にと言われれば綾芽になるのかもしれないが、どうしても納得できないんだよな。

「シスコンの兄に聞いても決まらなさそうだ。福岡ダンジョンを完全攻略した時に、本人の意思を聞いた方が良いだろう。もしかしたら、世那と智美の指導で、他のメンバーからも候補が出るかもしれないしな」

 美紅さんはそう言うが、普通に考えて恵梨花か綾芽のどちらかになってしまうのだろう。何はともあれ、まずは《千紫万紅》の全員が今よりも力を付けないと、Aランクダンジョンの完全攻略なんて夢のまた夢だ。

「もう一つ提案があるんですけど、《Black-Red ワルキューレ》さんと《花鳥風月》はこれから運命共同体になるんですよね」
「まあそうやな、どっちがこけても日本は助からんやろな」
「では、絶対にこれから言う秘密を守ってくださいね」
「麟瞳さん、何だが怖いんだが………」

 もともと尊敬して信頼しているお二人である。Aランクダンジョンの探索では必ず必要になると思うし、長いこと福岡にいる予定で《花鳥風月》の十代の女の子を、岡山にいる親御さんと離れ離れにしておくのが心苦しかったんだよね。あれの存在を話しても良いのではないかと思う。

「前にマジックアイテムで一番高額なものは言えないと、お二人に言いましたよね」
「そうなんだよ。三億円のマジックアイテムより高額なものということで、気になってしょうがなかったんだ。軽く寝不足の日が続いたよ」
「ええっとですね、これからそのマジックアイテムを使ってみますね。一応神戸ダンジョンの探索者センターの支部長からは、オークションに出品すれば百億円や一兆円の値段が付いても驚かないと言われたものです」
「はっ、何やそれ。桁が違いすぎるで、一兆円って値が付くマジックアイテムってあるんか?ウチ等が教えてもろうてもええんやろか?何や怖いで」
「もう運命共同体ですから観念してください。他の人に知られない限りは大丈夫ですよ。絶対にAランクダンジョンの探索では必要になりますし、滅茶苦茶役に立つ筈です」

 四人でリビングへと移動する。リビングでは、風呂上がりのメンバーが数人話をしている。

「なあ、何処のドアが一番使わないだろうか?」

 リビングにいた真姫、美姫、桃、山吹、綾芽、恵梨花の六人に聞いてみる。

「あれを使うんですか?」
「ああ、正式に《Black-Red ワルキューレ》さんとうちが、ダンジョンの探索で提携することになったんだ。皆には事後承諾になり悪いとは思うが、これは変えられない決定事項なんだ。で、運命共同体になったからには、あれを隠す訳にはいかないだろ」
「麟瞳さんがそう思うなら、誰も反対しないわ。クラン《花鳥風月》のクランマスターである、点滴穿石の龍泉麟瞳の決定ですもの」

 今度真姫にも素晴らしい二つ名を考えて、贈ってあげようと決心したよ。

「携帯ハウスって押し入れもないし、案外ドアが少ないですよね」
「お風呂。あっちの大きいお風呂が使えるなら問題ない」
「なるほど、風呂なら向こうのドアからも近いし良さそうだな」
「リーダー、まだ繋がるかどうかは分かりませんよ。流石にダンジョンの中ですから、繋がらない可能性の方が高いように感じます」

 確かに美姫の言う通りだね。桃の案を採用して、風呂のドアに取り付けてみることにする。皆は風呂から出たのかな?

「ちょっと風呂に誰もいないか確認してきてよ」

 大分長く話をしていたから、全員が既に風呂から出ているようだ。何をするんだということで、全員がゾロゾロと風呂場に集まった。

「では、繋げてみるよ」

 腕輪の収納から繋ぐ札を取りだし、お風呂のドアに貼った。さて、岡山のクランハウスと繋がるでしょうか?












 
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