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2話(2)

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「今日は折角学舎が休みで、夕方までだらけるつもりだったのに……。父さん母さん、うるさすぎだよ」

 一階におりてきたお兄様は、「アンリエット、おはよ」とニッコリ。いつもより穏やかにゆっくりと、頭の痛くない部分を撫でてくれたあと――恐らく頭に対する悪いイメージを追い出してくれたあと、私を遮る形で前に立ってくださいました。

「日曜日の昼間から大騒ぎをするのは、家庭内迷惑だってば。昼寝タイムが台無しだよ」
「シャルルっっ、なにを呑気に目を擦っているんだ! クラメール家滅亡の危機なんだぞ!!」
「アンリエットのせいで、アンタは堕落した生活を送れなくなるのよ!? 聞こえていたなら、全て把握しているでしょ!?」
「そだね、全て把握してるよ。だけど残念ながら? ちょくちょく嘘も混じってるんだよねぇ。養女の件、とかさ」

 シャルルお兄様がいつもの調子でニコニコと口を動かすと、お父様とお母様の表情が急激に変化します。怒りに満ち溢れていた瞳に、動揺が含まれるようになりました。

「この際だからハッキリ言うと、俺は昔から知ってるんだよね~。養女については、善意じゃあない。父さんと母さんは打算があって、アンリエットを養女にしたってことをね」
「な、なにを言いだすんだっ! 父さん達は――」
「王族、それが無理なら有力貴族へと嫁がせ繋がりを作る目的で、容姿端麗文武両道な子を選んで養女にした。だってウチは貴族と言っても、使用人さえ雇えない下級貴族ですからねえ」
「「……………………」」
「んん? 無言ってことは、肯定ってことなのかな? 肯定で、いいんだよね?」

 お兄様が首を傾げると、お父様達はそれに何も返さない。さっきまでの怒気がすっかりなくなっているので、全て本当にようです……。

「それなのに恩を仇でなんたらってのは、間違ってるでしょ。そっちが利用しようとしなければ起こっていない問題だし、そもそもアレはアンリエットに非はない。どう考えても、悪いのはジルベールだよね?」
「そ、それは、そうだが……。だからどうだというんだ!?」
「王族相手に理屈は通用しないわ! どうであれこの子が原因で、全てが終わるのよ!?」

 お父様お母様は再び血相を変え、お兄様に詰め寄ります。

「何もかもがなくなるのだから怒りたくもなるわよ!! 逆にどうして、貴男がそんなにも平然としているのか知りたいわ!!」
「奇跡的に上手く事が流れるとでも思っているのか!? それとも、あれなのか!? お前は寝ぼけていて、これが夢とでも思っているのか!?」
「いやいやいや、流石の俺でもそこまで間抜けじゃないよ。……あのクズを返り討ちにしてアンリエットを守れる自信があるから、平然としているんだ。――ってのが、答えかな」

 僅かの間お兄様の声音がクールで真面目なものになり、目つきは別人のように鋭くなりました。
 シャルル、お兄様……? 今のは、一体……?
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