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第3話 大間違い レナエル視点(2)

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「可愛い妹のためだ。オーガスティン様から身を引き、ザラに譲ってあげなさい」
「レナエル、拒否はさせないわよ。お姉ちゃんなのだから我慢しなさい」

 ザラの視線を追ってみると、現れたのはアントニンお父様とジュリーお母様。お二人は登場するや私への常套句を口にされ、愛おしげにザラの頭を撫でました。

「ふふふ。あの様子ならレナエルの計画は途中で、その段階ならいくらでも方法がありますのよ。いつものように、わたくしのものにできますのよ」
「確か……オーガスティン様は明日の正午に、あなたとデートを行うのよね? どうせレナエルは『あの方は私に強く興味をお持ちだから不可能よ!』と思っているんでしょう?」
「で・も・ね、レナエル。いくら興味があっても、何ら問題はありませんわよ。なぜなら今愛している人とは、もう会えなくなってしまうんですもの」

 ザラやお母様達によると、私は急病により面会が不可能となる――これから自室で、軟禁状態に置かれてしまうそうです。そうしてオーガスティン様から隔離した状態で、ザラが接触を行う。

 ――私には当分、少なくとも1年間は会えないと伝えること――。
 ――今後その影響は身体に残る可能性が高く、侯爵夫人にすれば様々な悪影響が出かねないと思わせること――
 ――それになにより、私より遥かに長所の多い自分がアプローチを仕掛けること――。

 それらによって、自身に好意を向けてもらえるようになる。ザラは――お父様もお母様もそう確信しているらしく、自信満々に説明が行われました。

「それでもレナエルは『そんなことをしても無駄』とか『オーガスティン様は絶対に心変わりをされない!』『1年でも何年でもずっと待ってくれる!』そう思っているのでしょう? だけどそれは、淡い幻想。その細工と『わたくし』が合わされば、実現してしまえるのですわ」
「ザラならではの、やり方だな。……レナエル、そういうわけだ。至急部屋に戻りなさい」
「さっき言ったように、拒否はさせないわ。……それにオーガスティン様を愛しているのなら、なおさら諦めるべきよ。だってこの子を選ぶ方が、オーガスティン様は何倍も得をして幸せになれるんだものね」

 お父様とお母様は自身の容姿に強い自信を持っていて、ザラはそんな自分達とそっくり――良いところどりをした、絶世の美少女だと思っています。そしてそんなザラ自身も自分を完璧だと思っているため、『行えば成功する』と確信しています。
 そのため私は2人の使用人によって自室へと連れ戻され、部屋に閉じ込められてしまったのでした。

『うふふふ、レナエル。可愛い妹の恋の成就を、そこから応援していてくださいまし』
「………………うん、そうするよ。頑張ってね、ザラ」
『ぷぷっ、強がっていられるのも今のうちですわ。良い知らせ・・・・・を、楽しみに待っていてくださいねぇ。お姉様ぁ』

 扉の向こう側からザラの嗤う声が聞こえてきますが、これは強がりではありません。

((オーガスティン様の好意が、あの子に向いたら……。全ての問題が、解消されます……))

 嫌で辛い思い出しかない人達が、大問題を引き取ってくれるかもしれない。そんな状況なため心から応援をしていて、やがて翌日の正午と――約束の時間となりました。


 オーガスティン様は……。心変わりを、してくださるのでしょうか……?

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