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第1話 あの会話の前後にあったやり取り 俯瞰視点

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「うふふっ、そうでしたのね。憧れのライオニック様とダンス。素敵な夜になりましたわね、ルシール様」
「ええ、一生の思い出となりましたわ。幸せで、大満足ですわ……っ」
「もぅルシール様、ここで満足してしまってはいけませんわよ? 明後日はデートをされるのでしょう? ここからが本番ですわよっ」
「私も、微力ながら応援をさせていただきます。何かご相談があれば、いつでも仰ってくださいね」


((……明るくて、活発で積極的。それが、リーズ様の好みのタイプなのか……))


 ロベールが会話を耳にして、心の中でそう呟いた少し前。学院内にあるカフェテリアでは、4人の令嬢が食後の紅茶を飲みながら談笑していました。
 伯爵令嬢アンリエット・ノレア。伯爵令嬢ルシール・テルエ。子爵令嬢フラヴィ・オリズ。子爵令嬢リーズ・ハネット。彼女達はお茶会仲間でもある同学の友人なため、今日もプライベートな話題で盛り上がっていました。

「そういえば、伺ったことがありませんでしたわ。アンリエット様は初めてのデートの時、いかがでしたの? 緊張しましたの?」
「『次に繋げないと』という思いがあって、緊張して固くなってしまいましたわ。でも現婚約者レオン様が優しくエスコートしてくださって、それらはすぅっと消えてしまいましたの」
「まぁ。そうだったんですのね」
「ライオニック様はレオン様の親友で、そんな方が『お優しい』と称されているんですもの。きっと、大丈夫ですわ。素晴らしい一日になりますわよ」

 こういった恋に関する話をしたり、

「今日は、犬を飼う夢を見ましたの。アンリエット様、フラヴィ様、リーズ様。犬はお好きでしたっけ?」

 こんな他愛もない話をしたり。気心の知れたグループならではの内容で会話が行われ、その夢の話の延長として――

「その子はわたくしが大好きな甘えん坊タイプで、とても可愛らしかったんですの。皆様はどんな性格の子がお好きですの?」

 ――3人が頷きを返したため、ルシールはこんな質問を行いました。そのため、

「わたくしは、逞しい子ですわ。キリッとしていて格好いい子が好きですの」
「わたしは、アンリエット様とは正反対ですね。大人しくて、可愛らしい雰囲気の子が好きです」

 順番に質問に応えてゆき、

「あらまあ、そうなのですね。次は、リーズ様の好みを教えてくださいまし」
「私ですか? そうですね…………。しいて挙げるなら、明るくて活発で積極的、だと嬉しいですね」

 リーズは、このように答えました。
 そして――


((……明るくて、活発で積極的。それが、リーズ様の好みのタイプなのか……))


 ――それを偶然ロベールが聞いてしまい、このように解釈してしまいます。おまけに彼は友人と歩いていたためすぐにその場を離れることになり、

「明るくて活発で、積極的。でしたら、ゴールデンレトリーバーが近いのかしら?」
「ええ、そうですね。レトリーバーは大好きですっ。叔父様の邸にはランティス君というレトリーバーがいて、伺った際はいつも遊んでいます。ランティス君が――初めて仲良くなった子の性格がそういったものなので、そちらが影響しているのだと思います」

 その直後にあった、このやり取りを聞くことができませんでした。
 そのため犬に対するやり取りを人に関するものだと思い込み、こうして彼の勘違いが始まってしまったのでした――。

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