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第5話 後悔する、フェリックス 俯瞰視点

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((……ローズは、そそくさと去ってしまった……。はぁ……。今の提案は、失敗だったか……))

 ローズが部屋へと逃げ帰った、直後のことでした。その姿を静かに見送っていたフェリックスは、心の中で大きく息を吐いていました。

((3人でカードゲームをしよう、と唐突に誘う。あまりに露骨で、こちらの意図に気付かれてしまったようだ))

 ローズのああいった反応を見たすぐあとに、こういった案を出す。それを、本人が気が付かないはずがなかった――。義妹として大切にしていきたい想いが先走りして、あまりも間抜けな失態を演じてしまった――。ローズは妹としての我が儘が恥ずかしくなってしまい、部屋へと逃げ帰らせてしまったんだ――。
 あの日に受けた魅了の魔法によって生まれた、ローズ・ブランシュへの特別な感情。それを家族愛だと思い込んでいる彼は、今日も大きく勘違いをしていました。

「…………サーラ、ごめん。君の妹を傷つけてしまったようだ」
「フェリックスさんは、ローズを想って提案してくださりました。それにこういった事は、一緒に暮らしている私が先に気付くべきでした。こちらこそ、ごめんなさい」

 サーラはフェリックスの左手に手を重ね、それによってフェリックスの顔には穏やかさが戻ります。そして2人は、「フェリックスさんは、本当にお優しい方ですね」「いいや。君には遠く及ばないよ」と微笑み合います。

 皮肉なことに――。

 ローズによる魅力が2人の絆を更に強くし、知らず知らず恋の援護射撃が発生していました。

「次は自然な形で、3人で遊べる状況を作らないといけないな。次にここに来られるのは、明日……。2人で出かけたあと、何かをして場を演出して――と明日の事をあれこれを考える前に、目の前の事に集中しておかないといけないね」

 このあとおよそ2時間後には、夕食があります。今夜はサーラとローズの両親が不在なため、食事は3人。
 あのように去ってしまったローズが気まずくならないよう、フェリックスは様々な計画を練りました。

「今回の二の舞にならないように、問題点をすべて排除して………………………………よし。これなら、上手くいきそうだ」

 彼は非常に満足していますが、そんなフェリックスは大きく勘違いをしています。
 そのためそういった配慮は配慮とならず、その全てが逆効果になってしまう。この時に浮かんだことが原因となって、ローズは再び、理解不能な行動に悩まされる羽目になるのでした。
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