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なれるでしょ、どっちにも

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「幼い頃はかっこいい騎士か……可愛らしいお嫁さんになりたかったが、どちらも理想通りとはいかなそうだ」

私が笑うと、ルシャは不思議そうな顔をした。

「なんでさ。なればいいじゃない。なれるでしょ、どっちにも」

「騎士には……まぁなれるだろうが、殿下の護衛任を解かれた身だから騎士としても傷モノだ。家名に泥を塗ってしまったのだから、『かっこいい』騎士には程遠いよ」

お父様や弟のジュールにも迷惑をかけて恥ずかしい思いをさせているだろう。なんとか挽回したいが、汚名をそそぐにはきっと長い年月が必要だ。そもそも嫁に出されるかも知れない私に、汚名をそそぐ充分な時間があるのかさえもあやしいのだ。

「うちは仮にも侯爵家だからいずれ縁談はあるかも知れないが、可愛らしいお嫁さんは……こんなに育ってしまっては、ムリだろう」

ルシャを見下ろすこの高身長。可愛らしいというのは、ルシャやフルール様のような人にこそ相応しい言葉だと思う。なのに、ルシャは真っ直ぐに私を見てこう言い放った。

「なに言ってんのさ! 身長なんて関係ないでしょ。レオニーは素材がいいんだし、中身だってけっこう天然で可愛いよ。自分が自分を低く見積もってるだけだ。ちゃんと可愛らしいお嫁さんになれるよ」

「ふふふ、ありがとう」

「……信じてないな? いいよ、そのうち僕がちゃんと証明してあげる」

意外と面倒見のいいルシャのことだから、私を励ましてくれているのかと思ったのに、ぷくっと頬を膨らませてルシャはそう言い切った。もしかして背が低くなる薬とか、顔が愛らしくなる薬でも開発してくれる気なんだろうか。

「騎士の件だって、親父さんとは話してみたのか? 殿下の護衛から外れたのだって、別に落ち度があったわけでもないだろう。親父さんやレニーの弟がお前を恥に思っているようには思えんが」

今度はダグラスがそんな事を言い出す。

そうだろうか。理由はどうあれ、私が任を解かれたのは事実だ。ただ、そういえば婚約を解消するという話が出た時、お父様はホッとしたような顔をなさっていた気がする。

戸惑う私に、ルシャがたたみかけてきた。

「そうだよ。結婚のことだってさ、なんで受け身で待ってるの? レオニーは誰ともわからないヤツと結婚するんじゃなくて、騎士になりたいんだろ? ちゃんとそう言えばいいじゃない」

「……!」

「目ぇまん丸にするほどの事じゃないでしょ」

「い、いや、そんな事考えたこともなかったから」

「貴族社会じゃ婚姻の事で家長に意見するのは難しいんだ。特に女性は」

ダグラスがそうフォローしてくれる。そしてそのまま私を真剣な眼差しで見つめてきた。
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