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新鮮な考え

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「でも、俺もルシャの意見に賛成だ。今なら殿下との婚約が解消されたばかりで他の縁談も進んではいないだろうし、希望を言ったところで親父さんは頭ごなしに怒るタイプでもないんじゃないか?」

「それは、そうかも知れないが……」

そんな事を考えた事すらなかったものだから、お父様がいったいどんな反応をするかなんてからっきし分からない。殿下の婚約者だった頃はその婚約に異を唱えるなんて論外だったし、婚約が解消されてからは与えられる役割を全うすればいいと思っていた。

消極的なものではなく、自らの意思で。

結婚せずに騎士として生涯過ごしたい、なんて言ったらお父様はいったい、どう思うんだろうか。

「そんな難しい顔しないでさ、言うだけ言ってみればいいんじゃない? 」

「その通りだ。下手な貴族の奥方に収まるより、騎士として身を立てた方が国や民、ひいては家のためになる事もあるかも知れないじゃないか」

「そうだよね。それに騎士のレオニーと結婚したいって人だってきっといるよ。そういう人と一緒になった方が絶対にみーんな幸せになれると思うけど。だってレオニー前に言ってたよね。この国って別に恋愛結婚が禁止されてるわけでもないんでしょ」

騎士のままで、結婚する。

ルシャのその自由な発想に、私は絶句した。男性はもちろん騎士のまま結婚して家庭を持つわけだけれど、女性は騎士になるのならば結婚は諦めるものだと思っていた。もしくは、結婚を機に騎士は辞するものだと思っていた。

けれど確かに別に騎士のまま結婚してはならないなんてルールなんてない。

女性の騎士が圧倒的に少ないからきっと前例がないだけだ。

「確かに恋愛結婚は別に禁止されてはいないし、いまはもしかしたら貴族でも恋愛結婚の方が多いかも知れないが……ただまぁ、いざとなると家格の違いは結構デカいハードルにはなるんだよな」

「なるほどね。でも禁止されてないなら問題ないじゃん」

「まぁ問題はないな。あるとすればレオニーは競争率が高そうって事と、親父さんと弟君が手強そうってことくらいか」

「うえー、弟、シスコンなの?」

「かなりな」

ルシャとダグラスが仲良く話しているのをぼんやり眺めながら、私はひとり、高鳴る胸を押さえていた。

今日帰ったら二人の言う通り、お父様に自身の希望を伝えてみてもいいのかも知れない。それで叱られたら、その時はその時だ。私は騎士として生きていきたい。婚姻の心配も不要だと、そう伝えてみよう。

お父様はどう答えるのだろう。
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