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第4章 スケッチブック青年
体重管理
しおりを挟む「君、太ったんじゃない?大分体重増えたみたいだけど」
朝、出かけに彼が言った。
私が何となくふっくらしたなあと思ったから、母子手帳を覗いて体重をチェックしたらしい。
確かにつわりが収まってから、結構よく食べるようにはなった。
でも、お世話になっているお医者さんは、「お産までにプラス10キロが目安」って言っていたし、体重の増えすぎを注意されたこともない。
あと2カ月くらいで臨月だけど、たしか最初の体重測定から6.5キロ増だから、頑張ってますねって言われた。
つわりがひどかった頃、むしろ体重落ちちゃったせいもあるけれど、一応食べすぎには気を付けているつもり。
私は彼を「安心」させようとして、そんな話をしたつもりだったんだけど、
「へえ、随分甘い先生だね。
厳しい先生だと、臨月までの体重増加は5キロまでって制限つけているらしいよ?」
と言われた。
妊娠や出産について調べていて、そんな話をどこかで聞きかじるかチラ見したか知らないけれど、正直そういうのは極端すぎてついていけない。
「無理だよ…」
「でもさ、できる人がいるから、そういうの推奨する先生もいるんじゃないの?
赤ちゃんが3キロくらいで、あとは胎盤とかその他合わせて4キロとか5キロでしょ。
別に皮下脂肪とか増やす必要ないんだよ?
5キロに抑えておけば、産後ダイエットしなくてもいいんだし。
僕の言っていることは合理的だと思うんだけど」
「ごめん…」
私、何に対して謝ってんだろう…
「まあ僕も鬼じゃないからね、妊娠中にダイエットしろなんて言わないさ。
ただ、おやつはもっと減らした方がいいんじゃない?」
「はい、気を付けます」
「いい返事だね。でも、返事だけってのは駄目だよ。
ちゃんと実行してくれれば、僕もこれ以上うるさくは言わないよ」
何を頑張っても、絶対素直には褒めてくれない。
ちょっと失点があると、針小棒大に悪いところを責め立てる。
心がだんだん麻痺してきたのか、「いい返事だね」なんて、本当に温かい言葉に聞こえるようになってきた。
▼▼
外食に飽きたのか、文句を言いながらもうちのご飯を食べるようになってくれた。
顆粒だしじゃなくて、こんぶやかつおぶしから出汁をとったら、味が薄いって言われた。
「市販の出汁は塩気もあるから、むくみやすいって言われたから…」
「あのね、きっちり出汁を取るなんて、お料理のセンスがある人がやってこそなんだよ?
言い訳する前に、まずは食べておいしいものを作る努力したら?
君はもう1年近くご飯作っているのに、全然うまくならないよね。
下手って自覚しないと、うまくならないよ」
「ごめんなさい…」
「いちいち謝らなくていいから、塩コショウ持ってきて」
こんな調子だけど、食べてくれるようになっただけでも進歩だ。
相変わらず「いいにおい」させて帰ってくるので、まだよその女の人は抱いているんだと思う。
でもそこまで責めたら、多分文句は今の倍になるだろうから、ぐっと耐える。
+++
実家でそれとなく、「彼は浮気しているのかも」と言っても(彼自身が認めているので、「かも」じゃなく「確定」だけど)
「妻の妊娠中にはよくあることよ。
どれだけ浮気したって、妊娠までしてる奥さんの方が立場は上なんだから、どんと構えていなさい」
って言われた。
多分彼の浮気の相手は、昔私が言われていたみたいに、かわいいね、きれいだねっていっぱい言われているんだろう。
昔――でもないな。結婚したのは1年も前じゃないんだから。
立場が上とかどうでもいいから、その子たちみたいになりたい。
もっと若くて、もっときれいで、妊娠していない頃に戻りたい。
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