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5章

73 毒鍋

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ルナール 視点

収穫物の説明と仕分けは終わり、ご飯の支度をしようと立ち上がった時にティーが何かを持っているのが見えた。

「ティーちゃん?何持ってるのかな?へ?」

興味本位で覗いただけだったが、ティーが持っていたのはなんと幻のキノコ万年茸だった…
万能薬エリクサーの材料であり、材料なのに高額の懸賞金がかけられている。確か大金貨1000枚だったはず…
その理由は出現率にある。
他の材料は植物や生物である為、ある程度生息地がはっきりしているので探知魔法を駆使すれば探すことは容易にできる。
だが、この万年茸は名の通り長い年月をかけて休眠して、突然成長するキノコであるので出現場所が予測出来ないのである。
しかも、生えて1日で腐ってしまうのですぐに脱水して乾燥しなくてはいけない。

「ティーちゃん…それママに頂戴!」

「…やー!」

この感じはそこまで嫌がってはいないわね。

「じゃあ、この干し芋と交換して?」

「…あい!」

いいんだ…この子の先行きにママ心配だわ。
騙されなければいいけど…

私はティーに干し芋を一袋渡し、万年茸を受け取った。
これで薬の研究ができるわ。

私が舞い上がっているとリア達が帰って来た。

「お帰りなさい!狩りはどうだった?」

「スタンボアとマグロンと魔グマが採れたわ。」

リアはアイテムバックから次々と戦利品を出した。

「で、このちっちゃいのは?」

「クリスの契約獣になったウーダよ。」

リアの背中にはクリスと黒いドラゴンの子供がおぶさっていた。

「へぇ!ウーダちゃん?か…ルナールよ。よろしくね。」

『…バブゥ!』

ふふ、可愛いわね。お家に帰ったら小屋を建てなきゃ!

「マグロンは処理は終わってるから使っていいよ。あとは今から処理するから!」

「わかったわ。リリスはどうする?」

「えーと…ルナお母さんの手伝いする!」

「美味しい料理を作りましょうね。ティーちゃんとクリスちゃんは風呂桶の中で遊んでいてね。」

私はティーとクリスとププとウーダを山小屋に外に付いている風呂桶の中に入れオモチャと干し芋を入れ離れた。
近くで調理しているから脱走しても気付ける。
私は土魔法でカマドを2つ作った。
さて、火起こし火起こし!

岩栗とツルイモは塩茹でして潰せばいいわね。
マグロンは炙りと刺身よね。少し厚めに切りましょうね。
なお!猛毒キノコ鍋は少し離したカマドで料理している。

ー数十分後ー

「盛り付け完了!刺身と炙りは完成ね。こっちはほとんど終わったけどリアはまだかしら?」

「ルナお母さん…この鍋紫で凄い悪そうな煙が出てるけど大丈夫なの?というか食べるの?」

「私達は平気だけどリリスちゃんとクリスちゃんは食べたら死んじゃうからね。」

「いや、食べないよ。」

「ルナ解体終わったよ。あっ!美味しそうな毒鍋ね。楽しみだわ!」

「毒鍋はリリスちゃんとクリスちゃんが食べ終わってから出すわね。ティーちゃんがこのキノコ全て見つけた物だから食べささないと可哀想だからね。肉は塩で焼く?」

「そうだね。やっぱり塩かなぁ。ルナに任せるわ!」

「じゃあ塩で焼きましょう!よいしょっと!リア、この岩塩を横に切ってくれない?」

私はアイテムボックスから昨日手に入れた岩塩を取り出し

「うん!いいよ!」

リアは私が使っていた包丁を取り構えるとスッ!と横に払った。
ツー…

大きな岩塩は静かに切れ目が入った。

パカッ!

「これどうするの?」

リアが上の岩塩を持ち上げた。

「平べったく方を上にしてカマドに置いて、岩塩プレートで焼いて食べるのよ!」

「美味しそうね。早く焼きましょ!」

「どんどん切っていくから焼いていって!」

何か忘れているわね…

「まっま!」

「うぇーん!」

チビ達を忘れていました。テヘッ!

「お待たせ!準備出来たから出してあげるね。ごめんね!」

どうやらクリスがオムツ交換で泣いたようだ。
風呂桶を除くと2人は立っていた。

「リア!リリスちゃん!見て!2人が立ってるわよ!」

「本当!」

「見せて見せて!」

みんなが驚いている為かクリスは泣き止んだ。
その後、救出しオムツの交換も終わり作った料理を食べた。
いつもと違って外で食べるのは美味しいわね。

クリスは岩栗が気に入ったらしくバクバク食べている。
ティーは毒鍋がメインの為か少しだけ食べている。哀しそうに鍋を見ないでちゃんとあげるから…
リリスはマグロンの刺身が気に入ったらしい。
誕生日には半身を出してあげるから喜んで欲しいわ。

ズルズル…ズルズル…
何の音かしら?

音の方向を山の道の上の方から大きなクラッシュベアが誰かに担がれて降りて来ていた。

「あれ?父ちゃんだ!」

「おお、リアか?」

「え!?お義父さん?」

クラッシュベアが降ろされお義父さんが出てきた。

「みんなお揃いか…何をしとるのじゃ?」

「グルメツアーよ!今の時期の味覚を食べに来たの!」

「そうか。おぉ!リリス、クリス、ティー!おじじだぞ!」

「おじじだ!」

「おー!」

「うっ!」

子供達はお義父さんに近付くと抱き抱えられ、ププとウーダは山小屋に逃げ出した…
怖かったのね。

「今のはなんじゃ?」

「ティーとクリスの仮契約獣よ。まだ子供だからいじめないでね。」

「そうか…すまん気を付ける。」

「そうそう、お義父さんよかったら毒鍋食べます?いっぱい猛毒キノコが入ってますよ!」

「おぉ!食べるぞ!即死茸は入っておるかの?あの味が好きでのう。」

「即死系のキノコは死神茸以外は入ってますよ!」

「死神茸は最果ての地のキノコじゃからなぁ。しかし、よく見つけたものじゃ。」

「ティーちゃんが見つけたんですよ!」

「ティーはすごいのう。毒キノコ名人じゃ!ははは!」

「はい!では注ぎますね!」

リリスとクリス以外に毒鍋の中身が入った器が渡り食べ始めた。

「本当に食べるんだね…クーちゃん…」

「…う」

「リリスちゃんたちはダメよ!死んじゃうかね!」

コクコク…

クリスも流石に危険を感じたのか近づかなかった。

「うまーうまー!ま!」ぶんぶん…

「口の中でとろたり、パチパチ弾けたりして美味しいわ。」

「今まで食べた鍋の中で一番じゃな。また食べたいのう。」

「ティーちゃんの髪が紫になってる!大丈夫なの?」

「あら?本当ね。毒を食べたからポイズンティーちゃんかしら?」

「何が出来るのかしら?毒だから…ティー!この葉っぱ握って見て!」

「あーい!」にぎっ!サラサラサラ…

葉っぱは塵のように崩れていった。

「なるほどのう。全身毒か!面白いのう!ティーは!」

「ティーちゃん少し毒を頂戴ね!」

「あいー!!きゃっきゃ!」

私達は盛り上がった!

「…ついていけないね。」

「…う」

なぜか娘達の呆れた声が聞こえた気がした。

鍋が空になったので今日はお開き、片付けと火の始末をして私達はお義父さんに別れ家に帰宅した。

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