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8章

110 うさぎと餅つき

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マリ 視点

ここはどこなのだろうか…雲もないのに月も星も見えないなんて異世界と思ってしまう。
でも地面の花や草が光っているので暗くてもなんとか進める。
花や苔が光っていて幻想的に見える。これで蛍が飛んでいたら間違いなく写真コンテストで優勝出来そうだ。

私はその風景を楽しみながら進むと、ペタンペタンと何かを突く音が聞こえた。
こんな静かな場所で場違いの音がなるだろうか?

まさか、童話みたいにウサギが餅つきでもしているのかな?

私は息を殺して木の陰から覗き込むと二本足で立つウサギが本当に餅つきをしていた。
可愛い!

ペタンペタン…

餅つきなんて小学生の時くらいにイベントで見たくらいで最近は見た事なかった。
それよりもウサギさんが大きな杵を持って突いてる方に目がいった。
可愛い~!!

「ん!?そこにだれかいるのか?」

やば!気付かれた!?
というか話がわかるなんで?
ここはもとの世界でうさぎさんがミュータントで隠れて住んでいる?
それはないか…月どころか星がない空が日本にあるわけが無い。
あるとすればここが地下施設で地上を再現している可能性だ。
だけどそうなるとなぜ喋れる知能がうさぎさんにあるのかという疑問に当たる。
誰が管理しているなら知性は要らないしあれば邪魔だ。
もともと地底人とかなら独自の言語で話しかけるはずだ。
じゃああのうさぎさんは何者なのか…わからない。

それならここが異世界という方が説明がつく。

今、相手に敵意がないのはわかるから、ここは大人しく出て行った方が安全かもしれない。
それに小学生くらいの身長のうさぎさんなら蹴りと杵に注意すれば何かあれば逃げられるかもしれない。
私は両手を挙げ敵意がないようにして出て行った。

「て、敵意はありません!ここに突然飛ばされて何もわからない状態なんです。」

「ん~!訳ありか…とりあえず餅を突いてくれ!」

そう言われ私に杵を差し出した。
な、なんで?
なにかの習わし?

いや、私、女の子、力ないから…

そうは思ったが杵は小さかったからとりあえず持つ事にした。
意外にも杵は軽かった。これなら振れる。
私は杵を軽く振るとペタン!さっきより大きな音がした。

「いい音だ…続けて!」

なんか褒められた。
私は嬉しくなりウサギさんに言われるがまま杵を振り続けた。
まるでおとぎ話の出来事を体験している感じだった。
ウサギさんは皮の手袋をして臼の中の餅を素早くひっくり返したりこねていた。
あ!?そこはちゃんとしているんだ。

「もういいよ!」

そう言われ杵を振るのを止めると綺麗な茶色お餅が出来ていた。

「ん?なんで茶色?さっきまで白くなかった?」

「ああ、これは干し芋を入れてかんころ餅にしたんだ。
しかしいい出来だ。」

かんころ餅があるんだ…やっぱり現実世界なのかな?
ウサギさんは突いたかんころ餅を近くの台に置き、粉を撒きお餅を次々と棒状に伸ばして小さなバックにかんころ餅をしまって行った。
マジックバックは存在していた!
やっぱり異世界だ!

「これが君が突いたかんころ餅だ。食べながら君の話を聞こう。」

そう言って一口サイズに丸まったかんころ餅が乗った皿を差し出した。
私が突いたかんころ餅は日本の物と違って芋の甘みが強く美味しかった。
私はしばらくかんころ餅を食べた後、本題を思い出しうさぎさんに経緯を語り始めた。
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