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8章

115 鏡餅?

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マリ 視点

しばらくして我に返った私は部屋をそのままに職務室にいる副部長の所に行き起こった事を説明した。

「あいつら何やってんだか…まぁ禁忌を犯した者の末路と考えれば当たり前か…しかし被害が大きく…」

副部長が野木沢君に被害を調べさせたら少なくても部長の呪印が付いている兵士や勇者もミイラになって死んでいたようだ。
その数は50人くらいらしく国の侵攻と防衛の要の勇者や戦士も含まれていて甚大な被害が起きていた。

そして、その原因の毛玉まんじゅうの話になる。

「召喚で出て来たのが毛玉のまんじゅうでした。
見た限り動き出さず無害そうでした。」

「しかし、毛玉まんじゅうで勇者は死にましたと公表は出来ない。
あまりにもバカ過ぎる。」

そう言われても実際そうだとしか言えない。

「公式では神官長が強力な魔獣を呼び出し城を占拠しようとしたが、勇者ユウヤと勇敢な戦士達が命をかけて倒した事にしよう。突然ミイラになったのは勇者ユウヤが限界まで契約した仲間から力を借りた為としよう。」

「勇者教を敵にするんですか?」

「他に敵になる奴がいるか?周辺国や魔族が敵とするには死体が無いと証拠にならない。嘘をついても調査が入ればバレるのは確実だ。なんせ魔法がある世界だからな。勇者教なら自国の反乱として処理するから他国から批判される事は少ない。」

「そうですね。」

確かに誰を敵にするかとなれば部長と並び傲慢な勇者教の神官が適任だろう。
問題はその後の残った神官の行動だろう。

「とにかく、あとは俺が片付けるからしばらく部屋で養生してなさい。」

そう言われて部屋に養生させられた。

外は暗くなり城が静かなって来た頃、カチャ!と私の部屋の扉が開いた。

風かな?

私は一応用心の為、近くに護身用として置いていた剣を取り扉に近付いた。
すると視点の下の方に鏡餅があった。
いや、あの毛玉まんじゅうが増えて私の所にやって来たようだ。

「あう?」

毛玉まんじゅうの中から可愛らしい声が聞こえた。
あの幼女?のようだ。
入ってこないところを見ると許可が欲しいのかな?

「えっと!入っていいよ?」

するとズルズルと鏡餅のまま入って来た。
私がしゃがみ込むと毛玉まんじゅうが可愛い顔が現れ私の胸元を見ていた。
もしかしてこの首飾りかな?

じー…

「ぷっ!」

幼女がそう鳴くとオレンジの毛玉も同じようにぷっ!と鳴いていた。まるで会話をしているように見える。

すると今度は上段の餅が顔を出して私の胸元を同じように見た。
目の色は赤で、暗めの茶色の髪の毛で無表情ぽい顔が見えた。

この子達姉妹なのかな?

上の子は興味がなくなったのかズポッ!と頭を隠した。
見ている方は可愛いけど、何がしたいのこの子達は?

下の子も会話が終わったのか、向きを変え部屋を出て行った。
その姿は動く鏡餅にしか見えない。
私は好奇心にかられ鏡餅姉妹の後を追った。

しかし追って思った事は何故か兵士に合わないということだ。
ここは城であるため兵士は必ず見回りを行なっている。
なのにもう10分くらい鏡餅姉妹を追いかけているのに音もしない。
まさか、この子達が何かしたのかな?

そんな事を考えていると城の中にある小さな林にたどり着いた。
この国の自然が枯れ果てる中、魔導具を使って無理矢理残されている自然がここにある。

私が一瞬、林に気をとられた時に鏡餅姉妹を見失った。
探すか諦めるか考え出した時…

モキュモキュモキュモキュ…

何か食べてる音が聴こえた。
私はまさかと思い、そっと音の方に向かうと鏡餅姉妹が分離して何かをヨダレを垂らしながら食べていた。
そして驚いたのは下の金髪の子だけではなく上の黒茶の無表情の子も笑顔で食べていた。
あんな風に笑えるんだ。

…しかし、ヨダレで可愛い顔が台無しだ。
私はポケットからハンカチを取り出して姉妹の口を拭いてあげた。
このハンカチはサモエドさんから貰った物で首飾りと一緒にいつも持ち歩いている物だ。
ハンカチは汚れるけど洗えばいいだけだ。

綺麗に顔を拭き終わると金髪の方の幼女が布の袋を私に差し出した。
なんだろう?
私は空いている袋の穴に手を入れ手に当たった物を取り出すと干し芋が出てきた。

干し芋…サモエドさんと一緒に作ってかんころ餅の材料にしてたな…
私は干し芋をパクッと食べた。
それは甘くて美味しかった。
向こうの世界では食べなかったけど、サモエドさん家ではオヤツとしていつも食べていた。
少し前の事なのに懐かしや…

サモエドさん…ぐすん…

「むきゃ!?」

私が泣いたからこの子達が驚いちゃたようだ。

「驚かしてごめんね。」

そう言った時には鏡餅姉妹はまた合体して、鏡餅に戻っていて下の子のアホ毛?が腕に巻きついていた。
なにこれ!

そう思った瞬間、私は知らない家の前にいた。
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