それって食べ物ですか？いいえ飲み物です。

8章

136 告白

マリ　視点

なんかいつの間にか騒動は沈静化しつつあった。

そろそろサモエドさんと話したい。

「サモエドさん！マリちゃんと話したいでしょ？片付けしとくから行きなさい！」

「ありがとう！マリ！こっちに来て！」

おばさんありがとう！

気を利かせてくれたのは近所のおばさんだった。
私達2人は工房を出た。
サモエドさんが連れてきたのは私達が初めて会った草原だった。

「マリ、ここ覚えてる？」

「うん、ここはサモエドさんと会って餅つきした場所。」

「俺、あの時は店の商品が売れなくてヤケになって餅をついてたんだ。」

「そうだったの？」

知らなかった…あれがサモエドさんのストレス発散方法だったんだ。

「そしたら怪しい女がこっちを見ていたから声をかけたんだ。」

あの時警戒してたのね。

「その女は可愛かった…だけど、怪しかったから餅をつかせた。」

「なんで餅をつかせたの？」

「餅の出来で性格がわかるからね。させてみた。」

作法で人を見る感じかな？
もし不合格だったらどうなっていたのかな？

「そしたら綺麗な餅がつきあがった。だから信用できると思った。」

今は辞めとくけど、何が基準なのか今度サモエドさんに問い詰めよう。

「この首飾りは求愛の証って聞いたよ。」

「最初はマリを保護するつもりであげたんだ。でも、マリと仕事して撫でられて生活するうちに好きになった。」

サモエドさんも私と同じ気持ちだった…
サモエドさんと仕事して、愛でて生活したから好きになった。

「でも、マリは知識族領に行った。
だからせめてマリの無事を知りたくて愛の女神様に祈った。
そしたら、オッケーもらった。」

「私、了承してないけど？」

「それなら、愛の女神様は番だから問題ないよ！と言ってた。」

せめて、確認欲しかった。
というか私とサモエドは番なんだ。
ルナールさんとカグリアさんみたいな関係か…

「それからはマリの無事を確認しつつ待ってた。」

ずっと待っててくれたんだ…

私はサモエドさんにまた抱きついた。

「私も帰りたかった。でも、帰れなかった。
私はサモエドさんと別れて寂しかった。
でももう離れないよ！
私、サモエドさんのこと好きだもん！」

チュー！

私達は初めてキスをした。

…

…もきゅ

もきゅもきゅもきゅ…

ダバー！

ん？？なんの音？

私が視線を茂みに移すといくつもの赤い目が暗闇に光っていた。
怖っ！

「あっ！？バレた！ティーちゃん達静かにしないとダメでしょ！」

茂みの中からウサギの毛皮を着たルナールさんやティーちゃん、さらにご近所さん達が次々と現れた。
というかルナールさんはさっきまで普通の服でしたよね。

「婚約おめでとう！これで正式に夫婦ね。」

「え？」

私は理解が出来なかった。
さっきのやり取りみんなに見られた！？カー…恥ずかしい
私は顔が真っ赤になっているだろう。
というか夫婦？

「初めまして！私、愛の女神のフローラです。貴方達を夫婦と認めます！」

のっしのっしと青いウサギの毛皮を着た女性が来た。
というか、女神様がなんでいるのよ。
それに口のところからみんな顔が出ているからウサギの頭が上を向いているから異様に見える。

「本来なら祝福の塩をかけるのですが、持ってきてないのでそこのシュガーラビットの砂糖で代用しますね。」

パラパラ…

「甘っ！」

私達は砂糖を振り掛けられた。
サモエドさんの毛には砂糖に絡み付いた。

一通り見物人から祝福を受けた後、私達はサモエドさんの家に戻った。
ルナールさん達とはあの場で別れた。
今度お餅を買いに来るそうだ。

今はサモエドさんと2人っきりである。
何をしているかというと毛づくろいである。
さっき砂糖が絡みついたので櫛を通している。
ついでに冬前ということもあり生え変わりの時期で抜け毛がごっそり取れる。
今度クッションにでもしてみるか。

「サモエドさん。私これからもここに居ていいだよね。」

「もちろん、ずっと居て！」

「うん。」

こうして、私は餅屋になった。