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新しい関係

だって、変なんだ

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体をしっかり拭いて、腰にバスタオルを巻いたまま脱衣所から出ようと思ってちょっと迷った。

……何も着ないで行くのはあからさまかな……。
灰咲さんは客じゃない。ちゃんとした恋人だもの。少しは慎みというものを持った方がいいかもしれないよな。

俺は悩んだ挙句、下着とパジャマの上だけを着て寝室に向かった。

ガチャッと寝室の扉を開ける。
部屋の中では、灰咲さんがベッドの上で壁に背を預けてスマホを弄っていた。
俺が入って来たのを確認すると、脇に在るチェストの上にそれを置いて俺に手招きした。

何だかちょっと照れ臭いな。

トコトコと歩いて、灰咲さんのベッドにちょんっと座った。

「なに畏まってんだよ」

そう言いながら灰咲さんが、俺をズリズリと引き上げる。

「……だって、なんだか恥ずかしいし」
「――ああ、そうか。……にしては、この格好……」
「ヒャアッ!」

パジャマの下を穿かずに生足を晒していた俺の太腿を、灰咲さんの手がするりと撫で上げた。

びっくりするじゃないか!

素っ頓狂な声を上げてしまったのが恥ずかしくて、ちょっぴり顔を顰めて灰咲さんを振り返った。

「ん? 違ったのか? 触ってほしいからそのままなのかと思ったんだが」
「……だ、だって……、そこ……」

ゾクゾクした。それにビクンって、ビクンってなったんだもん!

「うん? ここがダメだったのか? じゃあ……」
「……っ、んん……っ」

今度はパジャマの下から手を突っ込んで、灰咲さんは俺のわき腹を触る。

へ……、変だ俺!
誰かに触られて、こんな感じたこと……。
「……あっ!」

今度は大げさにビクンって跳ねた。

「……は、灰咲さん……」

戸惑って名前を呼ぶと、灰咲さんは伸びあがり俺の顔前に顔を出した。

ドキドキするほどかっこいい素顔の灰咲さんに、また顔が熱くなる。
……だって、なんだか今の灰咲さん……妙に色っぽいし……。

「なんだ?」

声も、いつもより低くて……、ううっ。甘くて腰に来るんだけど……。

「尚哉?」
「……あ、あの。俺、なんか今日変なんだ」
「変?」
「……なんて言うか、……感じやすくて……、灰咲さんが触れただけで……ビクンって言うかゾクゾクと言うか気持ちいいっていうか……」
「…………」

一瞬、灰咲さんの表情が止まって、苦笑いへと変わって行く。

「お前って、意外と……」
「……え?」

意外と、なに?
そう聞こうと思ったのに、灰咲さんの唇で塞がれて、俺は言葉を発することが出来なかった。

潜り込んできた舌が、俺の舌を甘く絡めとる。解かれては絡まり、そして淵を這うようになぞられてビクビクと震えた。

俺はもしかしたら、灰咲さんには何をされても過剰に反応してしまうのかもしれない。
だって、こんな風に身も心も溶けるように、そしてあちらこちらが疼くことなんて、経験したことなんて無いんだもの。

カプリ。
「……あ、……やっ!」

またビクンと大げさに跳ねた。
灰咲さんが俺の耳を甘噛みしたからだ。

「……ここも弱いんだな」
「……あっ、ああっ……」

嬉しそうに言いながら、噛んだところを舐めるのは止めて!

「尚哉……。お前……」
「……っ、な、何だよ」
「いや、可愛いなと思って」

そう呟いた灰咲さんは、俺の首筋に唇を移動した。


その後俺はパジャマの上をしっかりと脱がされた――
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