【完結】目覚めたらギロチンで処刑された悪役令嬢の中にいました

桃月とと

文字の大きさ
1 / 16

1 蘇った悪女

「うわぁぁぁぁぁ!」
「ウワァァァァ!!?」
「キャーーーー!!!」

(なに!? なにごと!?)

 ミケーラが目覚めると、なんだか周りが大騒ぎしているのがわかった。なかなか目のピントが合わない。ここがどこかもよく思い出せない。

(なんか変な夢みてたな……悪女レティシアになれって迫られる夢)

「レティシア!!!」

 まだ夢の中にいるのだろうかと思ったが、ミケーラはその男性が誰だかわかった。レティシアの父親だ。彼はこの国の宰相で、公爵家の当主だった。

「うそ!? 首が繋がって……!?」
「き、奇跡だ!!!」

 そうしてゆっくりとレティシアの記憶が流れ込んできた。

(あ……私、レティシアになっちゃったんだ)

 自分が起き上がったのはベッドの上ではなく、棺の上だと言うことにも気がついた。

 レティシアは昨日処刑されたのだ。ギロチンで首を切り落とされた。
 その記憶がミケーラの中に入ってきた時、流石にゾッと身震いした。

 レティシアはその身分の高さ故に遺体が辱めにあうことはなく、家族による葬儀も許された。

 彼女の両親や使用人達が泣いているのが見える。どうやら巷で噂の悪女は家族からとても愛されているようだった。

 ミケーラがどうしていいかわからず、ただ棺の上に座っていると、空から一羽の美しい白い鳥が舞い降りてきた。瞳と嘴と長い尾が金色に輝くとても神々しい姿をしていた。

「アルテニア様の使い鳥だ!」

 アルテニアとはこの国の国教の神である。聖書でこの使い鳥はアルテニアの声を届ける役目として活躍していた。

(聖書なんて読んでなかったけど、レティシアの記憶は便利ね)

 ミケーラは目覚めてまだ一言も発していなかった。状況が飲み込めてくると、最早なんと言ったらいいかわからなかったのだ。

(どうも~? みんな元気だった? は、違うか……)

 ただミケーラ……レティシアを眺めながら人々はどんどん興奮して話を進めていった。

「やはり冤罪だったのだ! だからアルテニア様がレティシアを返してくださったに違いない!」
「レティシア様は嵌められたのだ!」
「神官様もご覧になりましたよね!?」

 この場で唯一レティシアの復活を喜んでいないのはこの司祭だというのがミケーラにはわかっていた。レティシアの記憶で、聖女と一部の教会の神官達が手を組んでレティシアを陥れてたことを知っていたし、何より今ブルブルと小刻みに震えていた。

 その時、頭の中に声が響いた。

「メドルバ様とパミラ様によろしく!」

 その声の通りに神官に声をかけると、

「ヒィ!」

 と声を上げて逃げていった。

 ミケーラは棺から出され、風呂に入れられ、綺麗な服を着せられ、美味しい食事を堪能した。皆ミケーラにとても優しく親切だった。

 ミケーラがレティシアになる前、彼女は王都で娼婦をしていた。人気はあったのだが、その娼館のオーナーが最悪で、彼女への見返りはほとんどなかった。だが逃げようとすればいつも痛い目に合わされていたので、ただただ、娼婦として生きていくしかなかった。
 彼女がその娼館から出ることができたのは、流行病に罹ったからだった。他の娼婦しょうひんに移されたらたまらないと、身一つで放り出された。そうして自由を堪能することもなく、彼女は路上で一人亡くなった。雨に濡れた石畳は冷たく、体が痛かった。

 ちょうど時刻を同じくして、レティシアの首も落ちた。

 直後、彼女達は生と死の狭間の世界に呼び出されたのだった。
感想 8

あなたにおすすめの小説

運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。

ぽんぽこ狸
恋愛
 気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。  その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。  だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。  しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。  五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

王子、おひとり様で残りの人生をお楽しみください!

ちゃっぴー
恋愛
「ラーニャ、貴様との婚約を破棄する!」 卒業パーティーの真っ最中、ナルシストな第一王子ウィルフレッドに身に覚えのない罪で断罪された公爵令嬢ラーニャ。しかし、彼女はショックを受けるどころか、優雅に微笑んで拍手を送った。 なぜなら、ラーニャはとっくに王子の無能さに愛想を尽かし、この日のために完璧な「撤退準備」を進めていたからだ。

婚約破棄された男爵令嬢は隠れ聖女だった。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

無能と罵られた私だけど、どうやら聖女だったらしい。

冬吹せいら
恋愛
魔法学園に通っているケイト・ブロッサムは、最高学年になっても低級魔法しか使うことができず、いじめを受け、退学を決意した。 村に帰ったケイトは、両親の畑仕事を手伝うことになる。 幼いころから魔法学園の寮暮らしだったケイトは、これまで畑仕事をしたことがなく、畑に祈りを込め、豊作を願った経験もなかった。 人生で初めての祈り――。そこで彼女は、聖女として目覚めるのだった。

未来の記憶を手に入れて~婚約破棄された瞬間に未来を知った私は、受け入れて逃げ出したのだが~

キョウキョウ
恋愛
リムピンゼル公爵家の令嬢であるコルネリアはある日突然、ヘルベルト王子から婚約を破棄すると告げられた。 その瞬間にコルネリアは、処刑されてしまった数々の未来を見る。 絶対に死にたくないと思った彼女は、婚約破棄を快く受け入れた。 今後は彼らに目をつけられないよう、田舎に引きこもって地味に暮らすことを決意する。 それなのに、王子の周りに居た人達が次々と私に求婚してきた!? ※カクヨムにも掲載中の作品です。

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)

ラララキヲ
ファンタジー
 乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。  ……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。  でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。 ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」  『見えない何か』に襲われるヒロインは──── ※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※ ※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※ ◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

婚約破棄される前に、帰らせていただきます!

パリパリかぷちーの
恋愛
ある日、マリス王国の侯爵令嬢クロナは、王子が男爵令嬢リリィと密会し、自分を「可愛げのない女」と罵り、卒業パーティーで「婚約破棄」を言い渡そうと画策している現場を目撃してしまう。 普通なら嘆き悲しむ場面だが、クロナの反応は違った。