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閑話 イタリア共同演習5

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二日目はD・Cクラスの大型に対して、お互いの力を思う存分発揮していく。
ただし、学生と下の階級のみの演習である。

上の階級は別にある。もちろん高位クラスの吸血鬼を相手に討伐していくのだから、自分達の相手は高位クラスの力を持った相手だ。

「人形」と言われるもので、ロボットとも違う。頭に埋め込まれているチップから司令部より、対吸血鬼のクラスの力を出せる、関節人形のような物だ。力はチップからの伝達で調節が出来る。

S・Aクラスの「高位クラス武器保持者」は他の軍人より早いスピードで倒していく。もちろん隊員と協力して普段と変わらない討伐だ。
ただし例外がいる。それが夜神だ。Sクラス設定の「人形」に一人で討伐をする。大変さなど微塵も感じさせず余裕で討伐していく。
イタリア軍の上層部も来ていて「是非とも我が軍に転属しませんか?」と引き抜きを受けている光景は日本の上層部も黙っていない。水面下でバチバチに火花を散らして牽制する。

『夜神中佐、素晴らしい動きですね。まるで踊っているようだ。「双剣の舞姫」と言われるだけの事はありますね。美しい』
ベルナルディ中佐が夜神にこれでもか!と賛辞を述べる。
だか、夜神にとってはどうでもいいことなので、興味なさげに答える。
無視するには大人気ないし、お礼を言ったら更に何か言われそうだと思ったからだ。
『討伐するのに、美しいもなにもないと思いますよ。確実に吸血鬼相手に遅れを取るようなことが、ないように精進するのみです。美しいなど論外です』
『ストイックな考えは貴方の魅力をますます輝かせますね。貴方は美しいさなど考えて動いてはいないと思いますが、見ている我々はその動きに美しを見出している。貴方は本当にご自分のことを何も分かってない。良ければ私が教えて差し上げましょうか?』

ダメだ。誰か助けて下さい。中佐から貴方に変わっているし、何か教えようとしてくるし、すでに私の何かのメーターが吹っ切れてしまいそう。

夜神が色々と考えていると、間に七海と式部が割り込んでくる。
『相変わらずキザなセリフを並べるのが上手いですね。ベルナルディ中佐。うちの夜神中佐は嵐山大佐以外から教えてもらうのが苦手なので、この辺りでお話は切り上げてもよろしいかしら?』
『夜神がワタワタするのは見ものなんだが、その後の八つ当たりの被害が俺に来るからこの辺で勘弁してやってくれよ。カルロ中佐』

二人からの援護射撃に夜神は心のなかで安心のため息をする。二人から言ってもらえるならベルナルディ中佐もこれ以上はないだろう。

『虎は色々大変だね。長谷部室長に何か言われてるのかい?あの人は表情を表に出さないから読みづらいんだよね。式部中尉もお久しぶりです。相変わらず虎と仲がよろしいと見受けられる。羨ましい限りだ』
『室長やってんだから、俺たちの数倍頭がキレないと無理だろう。あの人の無表情は上とやり合う中で身に付けた、一種の武器みたいなもんだからな。式部とは相変わらずの仲だよ。羨ましいだろう?』
七海は無精ひげを撫でながら、式部の肩に手を回し、自分の肩に寄せる。いかにものアピールでベルナルディ中佐は「やれやれ」と肩をすくめて苦笑いをする。

『虎、あまり見せつけるな。夜神中佐もそう思うでしょう?』
『私は別に構いません。二人の仲がいいのは今にはじまったわけではないので』
私に話を振らないで欲しい。だけど虎次郎と式部中尉の仲が良いのは私的には有りなので、そこは断言しておく。
『そうですか。いつか夜神中佐もそんな風に思える相手がいるといいですね。私はいつでも歓迎しますよ?』

もう、無理です。暴れてもいいですか?夜神は普段なら考えもしない事を考えてしまっていた。
だか、七海の顔が「今は我慢しろ!」と訴えているので、何とか色々なものを飲み込んで我慢する。とりあえず愛想笑いで何とかやり過ごす。
『軍の仕事が大変なので、まだまだ先になりそうですね。軍の人間が一人で討伐出来るぐらいに成長してくれたら、私にも余裕が出来るのでその時に考えます』

絶対に無理な案件で押し通す。これ以上のやり取りはない事を相手に知らしめる
『・・・・・なるほど。今はまだその時ではないと。分かりました。これ以上の無駄話はいけませんね。折角の演習だ。明日も・・・あるので私はこの辺で失礼します』
『ああ、明日も・・・お互い頑張ろうな。楽しみにしてるぞ』

何かを考え話を切り上げて、ベルナルディ中佐は自分の軍に戻っていく。夜神達はお互いの顔を見て眉を寄せる。
「とりあえず、明日思いっ切り暴れていいから、今はまだ我慢しろ。長谷部室長からも第四室長からも藤堂元帥からも許可もらってるから」
「藤堂元帥からも?豪華な顔ぶれね。虎、頑張ったのね。夜神中佐明日まで我慢ね」
「明日は色々とリミッター解除させて頂きます。恨むならベルナルディ中佐を恨んでと伝えておいて」

三日目の明日は、色んな意味で荒れる三日目になりそうだと七海と式部は空を見上げて、少しだけ現実逃避してしまったのだった。
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