蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

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第十八章 闇に染まった英雄

18-3 エドナサイド

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 船旅も終わって、ようやくロランス聖国の港にたどり着いたんだよ。

 ロランスにたどり着くまで、何度か、壁を突き破って、海に落ちちゃったんだよ。そのたびに、スイレンさんに助けられたんだよ。壁を突き破らなくっても、船が揺れるたびに、転んで、そのまま、揺れに合わせて、転がっていったんだよ。

 ロランスの港には、武装した兵士さんが沢山いたけど、この人達はコルネリアの人には見えないんだよ。ということは、ロランスの兵士さんかな? ということは、この辺は、まだコルネリアが攻めて来ていないんだね。 

「まだ、まだ、この辺は、攻められていないようだけど」
「あ! カチュア達! 無事だったんだな」
「あら~。レオちゃんだわ~」

 港には、レオさんがいたんだよ。

 そう言えば、ダグザに残ったレオさんも、ロランスがコルネリアに侵略されている報告を受けて、ロランスに向かっているって手紙に書いていたんだよ。

「セシルで起きた話は聞いている。無事で、なによりだ」
「ところで、コルネリアが攻めて来たのは聞いていたッスけど、誰ッスか? 知らせを受取った時はまだ、攻めて来た将の名前は不明のままだったッス」
「あたしも、ダグザで知らせを聞いた時には、まだ誰が攻めて来たかは、分からなかったんだ」
「そうッスか」
「全く、誰だよ!? ロランスに攻め込んだバカ将は!?」

 レオさんは頭を「ボリボリ」と音を鳴らしながら、かいているんだよ。痒いのかな? でも、かいたら、危ないんだよ! あたし、以前、痒いところをかいていたら、血が出ちゃったんだよ。あの時は大変だったんだよ。手が血まみれになったんだよ。そう言えば、村長さんが、「どんだけ力を入れて、かいたんだよ?」って怒られたんだよ。

「レオ殿! ここにいましたか。敵将が誰か分かりました」

 あたし達の元に、一人の兵士さんっぽい人が駆けつけてきたんだよ。

「スイレン様! あなた様も戻って来られましたですね」
「それよりも、敵将が誰か分かったようですが、誰ッスか?」
「そうでした! 敵将はあのゲブンです!」

 はうう! あのゲブンが攻めてきたんですね! ……ん? あれ? ゲブンって……。ゲブンって……。

「そっか。攻めてきたのは、あのゲブンか」
「ゲブンって、誰だったかしら~」
「カチュアさん。以前、ルイドの街にある賭博所に見かけましたよね? オークの」

 そうだったんだよ。コルネリアの八騎将の一人のゲブンなんだよ。珍しくオークの将の? 何だよ。

 あ! つい、さっきまで、ゲブンのことを忘れていたんだよ。

 よかったんだよ。カチュアさんも、ゲブンのことを、忘れていたみたいんだよ。あたしだけ、覚えていなかったと思ったんだよ。

「は~。納得です」
「ルナちゃん? 納得ってどういうことなんですか?」
「兄様が言っていたんですけど、膨大な土地を欲していました。ロランスなら、立地がいいから、今回ゲブンが単独で動いた感じですね」
「でも、何で、そんなに、土地が欲しかったのかしら~?」
「娯楽施設とかが、欲しかったらしいですよ。コルネリアは広いですが、他の貴族達の取り合いになります。かと言って、八騎将の名を使って、土地を奪い会っていたら、皇帝様に潰される恐れがあったからそうです」
「取り敢えず、国都マティアへ向かうッス」
「……待って~、スイレンちゃん。何かに来るわ~」

 はうう!!! 港町の出入口から、危険種か魔物が入ってきそうなんだよ。その危険種か魔物は、二本足で歩く豚さん見たいな危険種か魔物なんだよ。しかも、その危険種か魔物には手には、大きな斧を持っているんだよ。

 でも、あの危険種か魔物はどこかで見たことがあるんだよ。確か、あれは……。

「はうう! あれはゲブンなんだよ! それも、何体もいるんだよ!」
「そーねえ~。わたしも賭博所で見たことあるわ~」
「ボケている場合じゃねえよ! あれが、本物のオークだよ! 魔物だよ!!」

 サリナさんに怒られたんだよ。

「正確には、オーガオークという二足歩行の豚型の魔物です。鬼の形相はしているんですけど、豚鼻のせいで、台無しの魔物です。ですけど、中級魔物ですから、油断はできませんよ」

 ルナちゃんが説明してくれたんだよ。それにしても、って、同じ名前を二回繋げる名前ってあるんだね。

「さっさと、倒しましょ~」
「カチュアが言うと説得力がないんだが……」
「そ~れ~」

 カチュアさんは斧を投げる付けたんだよ。

 ポヨ~~~ン。

 はうう! カチュアさんの投げた斧が、のまん丸お腹に命中したんだけど、いつものように、体に穴が開かないで、跳ね返っちゃたんだよ。

「オーガオークっていうよりかは、メタボオークだな」
「あの柔らかいお腹はダメージを吸収する見たいですね。まさか、カチュアさんのバカ力さえ、吸収してしまうなんて……」
「でも、いつものカチュアさんなら、魔物を灰にしちゃうんだよ」
「カチュアさんの蒼い炎は、自身が触れた物しか蒼い炎を纏えません。手放した武器には、蒼い炎は消えるんですよ」

 あれ? そうだっけ?

「おーい! 初めて聞いたような顔するな!」
「てっ! 襲ってきますよ!」

 はわわ!!! が斧を構えながら、こっちに向かって来たんだよ!!!

 シューーーーン!!!

 あたしは、慌てて、弓を構えながら、風の矢を作ったんだよ。そして、矢を放ったんだよ。だけど、詠唱時間が短めだから、普段扱っている風の矢よりも、風の魔力が弱めだったんだよ。

 ドーーーーン!!

 慌てて、矢を放ったあたしは、後ろへ転んで、お尻を地面に強くぶつけたんだよ。

 はうう、痛いんだよ。

「あら~。エドナちゃんの風の矢が当たったわ~」

 本当なんだよ。の一体の体に穴が開いたのが見えたんだよ。そのはそのまま倒れたんだよ。

「成程。こいつら、魔術の耐性が紙っぺらのようですね」
「それなら、このまま相手にしていたら面倒臭いから~」

 レオさんの両手が燃えたんだよ。火の魔術かな?

 ガォーーーン!!!

 レオさんの燃えている両手をくっつけたら、その間から火が一直線になってに向かっていったんだよ。

 その火はの体を貫射っていっているんだよ。

「あら~。レオちゃん、気合入っているわね~」
「気合入っているような表情ですけど……」
「ん~、わたしは魔術は使えないから、どーしよう~」
「リスクはありますけど、カチュアさんには蒼い炎がありますから、単純にそれを纏った武器で攻撃すればよろしいのでは?」
「……あ~。そーだったわ~。よ~し~」

 カチュアさんは大剣を取り出したんだよ。

「いくわ~」

 カチュアさんは大剣を構えながら、目掛けて走り出したんだよ。

 でも、カチュアさんと、カチュアさんの持っている大剣には、魔物に有効な蒼い炎を纏っていないんだよ。

「そ~れ~~」

 ドーーーーーーーン!

 カチュアさんの大剣がのお腹に当たったんだよ。

「まだまだ、いくわよ~」
 
 カチュアさんはを大剣で押しながら走り出したんだよ。

 ドン! ドン! ドン!

 カチュアさんが目掛けて走り出し、どんどんと、を巻き込んでいったんだよ。大剣の刃の先には十体以上のが密集していたんだよ。

「これでいくわよ~」

 ここで、カチュアさんの体と大剣から蒼い炎が出てきたんだよ。そして、密集しているがいる状態で、大剣を、さらに振るったんだよ。

 ボォオオオオオオオ!!!

 密集しているを一遍に、カチュアさんの大剣による一振りで、体を半分に切り裂かれたんだよ。

 これで、港入り口に現れたを全部倒したんだよ。

「カチュアさん! そんなに派手に蒼い炎を使ったら大変ですよ!!」
「わたしはだいじょうぶよ~。それよりも、早く、スイレンちゃんのお母さんとお兄さんの元へ向かいましょ~」

 全然大丈夫ではないんだよ! カチュアさんの体には傷はないんだけど、呼吸が荒くなっているんだよ。ルナちゃんが言うには、蒼い炎を使うと、カチュアさんの命が危ないらしいんだよ。

 それでも、カチュアさんは国都へ向って、歩き出したんだよ。
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