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本編
465 俺の出番なし。
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「──ギュアアアアアアアアア!」
「──アォーン!」
『ギャアアアアアアアア!?』
イグニールの火球に照らされた上空では、ワイバーンライダーの群れをワシタカくんが蹴散らす。
頭の上に吸着の靴を用いてチョコンと座ったポチは、座射を用いて次々とライダーを射抜く。
反動とか少ない特殊なクロスボウなんだけど……まるでお手本のような射撃だった。
もうかっこいいのか可愛いのかわからんな。
かっこかわいい、それがポチ。
「──プルゥッハアアアアアア! 蹂躙せよ王室諸君!」
『うわあああああああああ!?』
地上では、ロイ様率いるキングス達が分裂して盗賊を囲ってタコ殴り。
王冠を身につけた多種多様の王族スライム達によってもうボコボコだ。
ミツバチの蜂球みたいに群がって。
ワッと散開したら、残されるのはボロ雑巾のようになって気絶した盗賊。
もっとも。
サモンモンスター達がやり過ぎてしまうのはいつものこと。
いつものことなのだが……。
そんな中で今日特に異彩を放つ存在、それがイグニール。
「──フレイムアロー!」
『散れ! 火槍の雨が降るぞ! みんな散れええええ!』
『あの火属性魔法を使う女が一番やべえ!』
『燃え広がって退路を阻まれたらどうしようもない!』
『急いで攻撃しろ! さっさと殺せ!』
本人は炎の矢を飛ばしているだけなのだが、装備のおかげで桁違い。
大量の炎の槍が、盗賊達に降り注いでいた。
「違うわよ! フレイムアローよ!」
盗賊達の叫び声を聞いて、訂正するイグニール。
「……矢って規模じゃないよなジュノー?」
「うん。どう見ても槍だし」
俺のつぶやきにジュノーも頷いている。
どっからどう見てもあれは槍です、ジャベリンです。
本当にありがとうございました。
「なに言ってんのよ。フレイムジャベリンっていうのは──」
俺とジュノーの掛け合いに少しムッとしたイグニールが詠唱する。
「──これのことよ!」
すると、ボッと彼女の正面に燃える槍が出現した。
空間を歪める陽炎は、とんでもない熱量を表している。
長さは約10メートルくらい。
どこがジャベリンだよ、グングニルじゃねーか。
「思ったより大きいわね……ま、いっか?」
放たれた槍は豪速で盗賊達の元へを向かっていく。
『──避けろ! 横に飛べえええええええ!!』
ゴウウウウウウウ!
ヤベェな……。
通過点にあった木々は一瞬で燃えかすになったぞ……。
もちろん逃げ遅れた盗賊達も一瞬で消えた。
マジで、とんでもない威力だった。
「こら! 我らも少し蒸発しただろうが! 苦言が来てるぞ!」
ロイ様の怒った声が響いてくる。
接近戦を仕掛けていたキングス達にも被害があったようだ。
「あのイグニール、さん……思った以上に威力あるから、ちょっと落ち着きませんか……?」
「なんで敬語なのよ」
「いやその」
だって怖いもん。
本当に怖いもん。
「まあ、思った以上に火力が強くなってるみたいだから、この機に全部のスキルをチェックするわよ」
「そ、そうしてください」
うーむ、スキルの実験台になる盗賊諸君。
非常にどんまいである。
「……ここは任せてジャード探しに行こうかな?」
「それが良いし。このままだとトウジの出番ないし」
「だよね」
深淵樹海では、頑張って戦闘とかしてたと思うんだけど。
みんなが本気を出したら、やっぱり俺の出る幕はない。
こと戦闘にかけてのみ。
俺はいつまで経っても一番下なのだと、再認識した。
「ロイ様、ジャード探しの方を手伝ってくるから、ここを任せていい?」
「了解した盟主よ。先行させている王種の一人を盟主の元に遣わそう」
「ありがとう」
盗賊とワイバーンライダーは、ひとまずこれでなんとかなる。
あとは、どこかに消えたジャードと怨嗟の鎖。
あいつらを見つけ出して、強制ハッピーにしなきゃいけない。
「ジュノーはどうする? ここに残る?」
「んー、今日はイグニール怖いからトウジで」
「ほい……では、ジャード探しに言ってきますねー?」
俺はジュノーをフードに入れたまま、ドルジとルイスにそう告げる。
「う、うむ……俺たちは一体どうすればいい?」
「ロイ様に従ってくれれば大丈夫だと思います。必ず守ってくれますから」
「そ、そうか……」
「トウジくん、僕も一緒についていくことは無理かい?」
「その場合、ルイスさんの安全は保証できませんけど……」
「や、やめておくよ……」
未だ戦いについていけず、唖然とした重森の他メンバーを尻目に。
俺は戦場を大きく迂回してジャードを探しに向かうことにした。
最初はやることが多くて面倒臭いな、なんて思ってたけど。
意外と早く終わりそうな予感がした。
ちなみにパブリックスキルのブレスを使っていないから。
今日のイグニールはクマさんではない、とだけ言っておこう。
「──アォーン!」
『ギャアアアアアアアア!?』
イグニールの火球に照らされた上空では、ワイバーンライダーの群れをワシタカくんが蹴散らす。
頭の上に吸着の靴を用いてチョコンと座ったポチは、座射を用いて次々とライダーを射抜く。
反動とか少ない特殊なクロスボウなんだけど……まるでお手本のような射撃だった。
もうかっこいいのか可愛いのかわからんな。
かっこかわいい、それがポチ。
「──プルゥッハアアアアアア! 蹂躙せよ王室諸君!」
『うわあああああああああ!?』
地上では、ロイ様率いるキングス達が分裂して盗賊を囲ってタコ殴り。
王冠を身につけた多種多様の王族スライム達によってもうボコボコだ。
ミツバチの蜂球みたいに群がって。
ワッと散開したら、残されるのはボロ雑巾のようになって気絶した盗賊。
もっとも。
サモンモンスター達がやり過ぎてしまうのはいつものこと。
いつものことなのだが……。
そんな中で今日特に異彩を放つ存在、それがイグニール。
「──フレイムアロー!」
『散れ! 火槍の雨が降るぞ! みんな散れええええ!』
『あの火属性魔法を使う女が一番やべえ!』
『燃え広がって退路を阻まれたらどうしようもない!』
『急いで攻撃しろ! さっさと殺せ!』
本人は炎の矢を飛ばしているだけなのだが、装備のおかげで桁違い。
大量の炎の槍が、盗賊達に降り注いでいた。
「違うわよ! フレイムアローよ!」
盗賊達の叫び声を聞いて、訂正するイグニール。
「……矢って規模じゃないよなジュノー?」
「うん。どう見ても槍だし」
俺のつぶやきにジュノーも頷いている。
どっからどう見てもあれは槍です、ジャベリンです。
本当にありがとうございました。
「なに言ってんのよ。フレイムジャベリンっていうのは──」
俺とジュノーの掛け合いに少しムッとしたイグニールが詠唱する。
「──これのことよ!」
すると、ボッと彼女の正面に燃える槍が出現した。
空間を歪める陽炎は、とんでもない熱量を表している。
長さは約10メートルくらい。
どこがジャベリンだよ、グングニルじゃねーか。
「思ったより大きいわね……ま、いっか?」
放たれた槍は豪速で盗賊達の元へを向かっていく。
『──避けろ! 横に飛べえええええええ!!』
ゴウウウウウウウ!
ヤベェな……。
通過点にあった木々は一瞬で燃えかすになったぞ……。
もちろん逃げ遅れた盗賊達も一瞬で消えた。
マジで、とんでもない威力だった。
「こら! 我らも少し蒸発しただろうが! 苦言が来てるぞ!」
ロイ様の怒った声が響いてくる。
接近戦を仕掛けていたキングス達にも被害があったようだ。
「あのイグニール、さん……思った以上に威力あるから、ちょっと落ち着きませんか……?」
「なんで敬語なのよ」
「いやその」
だって怖いもん。
本当に怖いもん。
「まあ、思った以上に火力が強くなってるみたいだから、この機に全部のスキルをチェックするわよ」
「そ、そうしてください」
うーむ、スキルの実験台になる盗賊諸君。
非常にどんまいである。
「……ここは任せてジャード探しに行こうかな?」
「それが良いし。このままだとトウジの出番ないし」
「だよね」
深淵樹海では、頑張って戦闘とかしてたと思うんだけど。
みんなが本気を出したら、やっぱり俺の出る幕はない。
こと戦闘にかけてのみ。
俺はいつまで経っても一番下なのだと、再認識した。
「ロイ様、ジャード探しの方を手伝ってくるから、ここを任せていい?」
「了解した盟主よ。先行させている王種の一人を盟主の元に遣わそう」
「ありがとう」
盗賊とワイバーンライダーは、ひとまずこれでなんとかなる。
あとは、どこかに消えたジャードと怨嗟の鎖。
あいつらを見つけ出して、強制ハッピーにしなきゃいけない。
「ジュノーはどうする? ここに残る?」
「んー、今日はイグニール怖いからトウジで」
「ほい……では、ジャード探しに言ってきますねー?」
俺はジュノーをフードに入れたまま、ドルジとルイスにそう告げる。
「う、うむ……俺たちは一体どうすればいい?」
「ロイ様に従ってくれれば大丈夫だと思います。必ず守ってくれますから」
「そ、そうか……」
「トウジくん、僕も一緒についていくことは無理かい?」
「その場合、ルイスさんの安全は保証できませんけど……」
「や、やめておくよ……」
未だ戦いについていけず、唖然とした重森の他メンバーを尻目に。
俺は戦場を大きく迂回してジャードを探しに向かうことにした。
最初はやることが多くて面倒臭いな、なんて思ってたけど。
意外と早く終わりそうな予感がした。
ちなみにパブリックスキルのブレスを使っていないから。
今日のイグニールはクマさんではない、とだけ言っておこう。
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