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中編 愛の深まりと婚約
97.仲よく昼食
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そうして――、すぐ右手の食堂らしきところで、皆で昼食を食べ始めた。
「お前は魔女を使いすぎなんじゃないのか……」
「美味しいし、いいよね」
「答えになっていない……」
「私もねぇ~、そう思うのよねぇ~。便利アイテムにされているんじゃないのかしらって。ダニエルちゃんもそう言いながら、私を使うわよねぇ~。でも、美味しいからどうでもいいかもしれないわねぇ~」
「ほら、魔女さんもそう言ってるし」
「はぁ……」
ダニエル様もダニエルちゃんになっちゃうんだ……似合わないなぁ。
魔女さんだけゴテゴテのホールケーキだ。この昼食は白薔薇邸に用意してもらっていて、魔女さんが取りにいって大きいバスケットごと持ってきた。王都へ召喚された時の部屋に置いてもらったらしい。
「魔法陣で昼食召喚するよりは、いいよね」
「お前……まさか、そんなことを……」
「したした。一度だけね」
「神の力の乱用だな……恐ろしい男だ」
「ダニエルに言われたくないね。真っ当な理由があればいいでしょ」
「昼食召喚の真っ当な理由ってなんだ……」
「そこは俺たち二人だけの秘密だよね」
こっちに話を振るな!
にっこにこ見るな!
レイモンドが用意してくれたのは、モッツァレラワッフルやフルーツサンドだ。やっぱり疲れは甘いものが癒してくれるよね。
おかずワッフルもあるものの、手は甘い方へと伸びる。
「本当に仲がいいのね……」
ジェニファー様が羨ましそうに言う。関係が微妙らしいし、会話が難しい。
「ジェニーこそ、今日は二人で待っていてくれたじゃない。すごく嬉しかったけど」
「久しぶりに会いたかったから。あれから来るって話がなかったし、レイモンド様ともあれ以来会ってはいなかったのよ」
これ……私のいないところで会ってすらいないから安心してって言ってる? さすがにジェニファー様にまで嫉妬はしないけど。二人きりじゃないし。
「そうなんだ。ダニエル様もお待ちいただいて、ありがとうございました」
「丁寧に話さなくていいと言っただろう。楽に話せ。様もいらない」
……そう言われてもね。
「ダ、ダニエルさん……ありがとう、待っていてくれて。こんな感じ?」
「それでいい。楽に過ごせ」
「難しすぎる……ナマ王子様に会うなんて、普通ないし」
「ナ……ナマ?」
「アリスの変な発言にも慣れていってよ、ダニエル。とにかく俺はアリスに楽に過ごしてほしいんだ」
「え、まさか、あんたの差し金なわけ? もしかしてダニエル様が楽にって言ってくれてるのも、あんたの要求?」
「様がついているぞ。それに、私もその方がいいのは事実だ。責めてやるな」
「ほら。こう言ってるし」
「根回ししすぎないでくれない? 恥ずかしいし」
「思いついたら即行動が俺だからね」
「あなたたち……そんな関係だったのね……」
前はもう少し取り繕っていたからなぁ。
ダニエル様がいない時は、ちゃんと様をつけよう。学園でも他の人の手前そうした方がいいだろうし、ここだけの限定かな。
「ジェニーと一緒なのも嬉しいなぁ。二年目はどの学科の予定にするとか決めているの?」
「私は……応用魔術かしらね……」
あ、チラッとダニエル様を見た。
同じところに入る気なんだ。
「ダニエルさんも?」
「そうだな……総合的に学んで多様な分野への理解を進めたいとは思っている。新しい研究開発の重点分野を定めて国として強化や支援を行うための知識を深めたい。劇的に今後発展する分野には、魔法が絡むことも多いだろう。魔女は何も教えてくれないしな」
「当然よねぇ~」
魔女さん……食べるの早くない? あんなに大きなホールケーキだったのに、もうほとんどないけど。
さすが人外……!
「王子様らしいね」
「茶化すのはやめてくれ」
茶化してないのに。
「王子様って言われるの、苦手なの?」
「そんな顔はしていないだろう。フランや、むしろソイツのがそれっぽい」
「え……してるよね、ジェニー!」
「そ、そうね。その……とても頼りがいのある精悍なお顔立ちよね。力強い国王様になりそうに見えるわよね」
「威圧感があるだけだろう」
「そんなことはないわ。それに威圧感も必要よ」
「婚約者だからって立てる必要はない」
「そうでなくたって、誰だってそう思うわよ」
ジェニファー様の顔が……赤くなって一生懸命な感じで可愛くなっている。ダニエル様もムスッとしながらも軽く照れている。
関係が微妙だ!
いい意味で微妙だ!
萌え感のある微妙さだ!
レイモンド……そーゆー意味で微妙だって教えておいてよ。体育会系の監督をやっていそうなんて思ったけど、だんだんと年相応の男子に見えてきた。
「お前がそう思うというだけのことだろう」
「そんな……こと……」
素直になれない男子だ!
レイモンドばっかり見ていたから新鮮だなぁ。
「ダニエルさん、ダニエルさん」
「な、なんだ……」
「ジェニーの顔立ちについてのご意見をお聞かせ願えませんか」
「はぁ!?」
「ジェニー、可愛いよね。綺麗だし、すごく色っぽいよね」
「う……く……」
「大丈夫、私たち退散するから! ジェニーの顔立ちについて、私たちがいない間に語っておいてね」
「え……ぇ、アリス? ちょっと……」
グッとお水を一飲みする。
「食器はあとで洗っておくわぁ~。私も少しの間だけ、姿を消しておくわねぇ。また呼んでちょうだい」
「え、魔女様まで何を……」
「おい、魔女、アリス嬢、何を考えて――」
慌てるダニエル様を無視して鞄を引っつかむ。こんなに可愛い顔になっているジェニーを、すぐにでもダニエル様と二人きりにしてあげなくては!
「行こっか、レイモンド」
「そうだね」
「ジェニーに褒めてもらったんだから、ダニエルさんもね!」
「おま……」
「それじゃ、また入学式……なのかな。よろしく!」
調子に乗りすぎたかな……。
もう少し見ていたかったけど、なんて思いながら寮を出た。
「お前は魔女を使いすぎなんじゃないのか……」
「美味しいし、いいよね」
「答えになっていない……」
「私もねぇ~、そう思うのよねぇ~。便利アイテムにされているんじゃないのかしらって。ダニエルちゃんもそう言いながら、私を使うわよねぇ~。でも、美味しいからどうでもいいかもしれないわねぇ~」
「ほら、魔女さんもそう言ってるし」
「はぁ……」
ダニエル様もダニエルちゃんになっちゃうんだ……似合わないなぁ。
魔女さんだけゴテゴテのホールケーキだ。この昼食は白薔薇邸に用意してもらっていて、魔女さんが取りにいって大きいバスケットごと持ってきた。王都へ召喚された時の部屋に置いてもらったらしい。
「魔法陣で昼食召喚するよりは、いいよね」
「お前……まさか、そんなことを……」
「したした。一度だけね」
「神の力の乱用だな……恐ろしい男だ」
「ダニエルに言われたくないね。真っ当な理由があればいいでしょ」
「昼食召喚の真っ当な理由ってなんだ……」
「そこは俺たち二人だけの秘密だよね」
こっちに話を振るな!
にっこにこ見るな!
レイモンドが用意してくれたのは、モッツァレラワッフルやフルーツサンドだ。やっぱり疲れは甘いものが癒してくれるよね。
おかずワッフルもあるものの、手は甘い方へと伸びる。
「本当に仲がいいのね……」
ジェニファー様が羨ましそうに言う。関係が微妙らしいし、会話が難しい。
「ジェニーこそ、今日は二人で待っていてくれたじゃない。すごく嬉しかったけど」
「久しぶりに会いたかったから。あれから来るって話がなかったし、レイモンド様ともあれ以来会ってはいなかったのよ」
これ……私のいないところで会ってすらいないから安心してって言ってる? さすがにジェニファー様にまで嫉妬はしないけど。二人きりじゃないし。
「そうなんだ。ダニエル様もお待ちいただいて、ありがとうございました」
「丁寧に話さなくていいと言っただろう。楽に話せ。様もいらない」
……そう言われてもね。
「ダ、ダニエルさん……ありがとう、待っていてくれて。こんな感じ?」
「それでいい。楽に過ごせ」
「難しすぎる……ナマ王子様に会うなんて、普通ないし」
「ナ……ナマ?」
「アリスの変な発言にも慣れていってよ、ダニエル。とにかく俺はアリスに楽に過ごしてほしいんだ」
「え、まさか、あんたの差し金なわけ? もしかしてダニエル様が楽にって言ってくれてるのも、あんたの要求?」
「様がついているぞ。それに、私もその方がいいのは事実だ。責めてやるな」
「ほら。こう言ってるし」
「根回ししすぎないでくれない? 恥ずかしいし」
「思いついたら即行動が俺だからね」
「あなたたち……そんな関係だったのね……」
前はもう少し取り繕っていたからなぁ。
ダニエル様がいない時は、ちゃんと様をつけよう。学園でも他の人の手前そうした方がいいだろうし、ここだけの限定かな。
「ジェニーと一緒なのも嬉しいなぁ。二年目はどの学科の予定にするとか決めているの?」
「私は……応用魔術かしらね……」
あ、チラッとダニエル様を見た。
同じところに入る気なんだ。
「ダニエルさんも?」
「そうだな……総合的に学んで多様な分野への理解を進めたいとは思っている。新しい研究開発の重点分野を定めて国として強化や支援を行うための知識を深めたい。劇的に今後発展する分野には、魔法が絡むことも多いだろう。魔女は何も教えてくれないしな」
「当然よねぇ~」
魔女さん……食べるの早くない? あんなに大きなホールケーキだったのに、もうほとんどないけど。
さすが人外……!
「王子様らしいね」
「茶化すのはやめてくれ」
茶化してないのに。
「王子様って言われるの、苦手なの?」
「そんな顔はしていないだろう。フランや、むしろソイツのがそれっぽい」
「え……してるよね、ジェニー!」
「そ、そうね。その……とても頼りがいのある精悍なお顔立ちよね。力強い国王様になりそうに見えるわよね」
「威圧感があるだけだろう」
「そんなことはないわ。それに威圧感も必要よ」
「婚約者だからって立てる必要はない」
「そうでなくたって、誰だってそう思うわよ」
ジェニファー様の顔が……赤くなって一生懸命な感じで可愛くなっている。ダニエル様もムスッとしながらも軽く照れている。
関係が微妙だ!
いい意味で微妙だ!
萌え感のある微妙さだ!
レイモンド……そーゆー意味で微妙だって教えておいてよ。体育会系の監督をやっていそうなんて思ったけど、だんだんと年相応の男子に見えてきた。
「お前がそう思うというだけのことだろう」
「そんな……こと……」
素直になれない男子だ!
レイモンドばっかり見ていたから新鮮だなぁ。
「ダニエルさん、ダニエルさん」
「な、なんだ……」
「ジェニーの顔立ちについてのご意見をお聞かせ願えませんか」
「はぁ!?」
「ジェニー、可愛いよね。綺麗だし、すごく色っぽいよね」
「う……く……」
「大丈夫、私たち退散するから! ジェニーの顔立ちについて、私たちがいない間に語っておいてね」
「え……ぇ、アリス? ちょっと……」
グッとお水を一飲みする。
「食器はあとで洗っておくわぁ~。私も少しの間だけ、姿を消しておくわねぇ。また呼んでちょうだい」
「え、魔女様まで何を……」
「おい、魔女、アリス嬢、何を考えて――」
慌てるダニエル様を無視して鞄を引っつかむ。こんなに可愛い顔になっているジェニーを、すぐにでもダニエル様と二人きりにしてあげなくては!
「行こっか、レイモンド」
「そうだね」
「ジェニーに褒めてもらったんだから、ダニエルさんもね!」
「おま……」
「それじゃ、また入学式……なのかな。よろしく!」
調子に乗りすぎたかな……。
もう少し見ていたかったけど、なんて思いながら寮を出た。
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