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後編 魔法学園での日々とそれから
113.願望&共通点2
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皆の視線がダニエル様に注がれる。
「次は私だな。願望は、全ての大陸の全ての民が同じ言語ならいいのにとは思うな。齟齬が発生しやすく面倒だ。他国へも召喚以外の方法での素早い移動方法がほしい。ただ……それも実際にあれば不法移民が入り放題になる。気楽に犯罪者の捨て場所にされてもたまらないから、ただの願望だな」
皆それぞれ特徴が出るなぁ。
ダニエル様も真面目だ。
「共通点はそうだな……私はジャンケンが弱い。同じ者はいるか」
ジャンケン!?
いきなりおかしな方向に!
この世界にもジャンケンが!?
シーン……。
「誰もいないのか……」
きっとかけ声も変換されているはず!
言ってしまおう!
「そう言われたらやるしかないと思う。皆でジャンケンしよ。せーの、ジャンケンポイ!」
わたわたしながら、皆が手を出した。
うん……あいこになると思ってた。
「あいこで――」
最初に負けたのがダニエル様とユリアちゃん。うーん……ジャンケンに強い弱いなんて、あるのかな。
ちなみに勝者は、ジェニファー様だ。
「私もジャンケンに弱い人として、手を上げさせていただきます……」
「仲間ができてよかった」
「恐縮です……」
「ダニエルさん、ジャンケンなんてすることあるの?」
私はこの世界でまだ一度もない。
王子様がジャンケンって……。
「兄弟でたまにな。あー……なんだ、前のアレを賭けるかどうかもジャンケンで私が負けたせいで通してしまったんだ。すまなかったな……」
前のアレってなんだっけ。
あ、私がレイモンドに落ちたかどうかってやつか……。実際はもう少し複雑だったらしいけど。
「アレって内緒なの?」
「いや、ここで堂々と言うのもなと思っただけだ」
「そっか、気になるならあとで教えるね、ユリアちゃん」
「あ、いえ、その、私はどちらでも……」
どちらでもってことは、やっぱり気になるのかな。
「最後は私ね。願望は……一度、お忍びをしてみたいわね。ダニエル様がレイモンド様と一緒にされたと聞いて羨ましくなってしまったわ」
……したことないの。それ、十分に実現可能な願望だと思うけど。
ジトッとダニエル様を見るとギクリとした表情をしたあとに睨みつけられた。
目を逸らすんじゃなくて睨むんだ。怖いなぁ。でも……やっぱりレイモンドよりも、男子って感じ。
私ではダニエル様の代わりにはなれないけど、護衛付きなら許されるよね。ユリアちゃんともう少し仲よくなったら、三人で遊びに行こうと誘ってみよう。
「共通点はそうね……詩集が好きかしらね。ユリアとかぶってしまうけれど」
「あ、私も好きです!」
「私も~、どんなのが好きなの?」
「そうね……幻想的な雰囲気のものかしら」
「例えば例えば?」
「く……食いつくわね。最近何度も読み返してしまっている詩集は、『失われたパズルの欠片』というタイトルね」
「そうなんだ。教えてくれてありがとう」
気になるな……ソフィになんとかして手に入れてもらおうかな。もっと教養があれば話を膨らませられたのに。結構覚えたのになぁー。かなり最近の作品なのかもしれない。
「アリスは? 好きなのよね?」
ううん……レイモンドと図書館に行った時に気に入って作者買いをお願いしているのはあるけど……。
「うん……子供っぽいって笑わないでね」
「そんな心配しないで」
「あのね、『出口のない迷路で明日まで遊ぼう』ってタイトルのが一番好き」
「あら、メルシーホワイトの作品ね。さすがアリス。マイナーなところを攻めるわね」
「知ってるんだ……さすがなのはジェニーだよ。ユリアちゃんは?」
「私は、有名どころだと『海の底を這いずる夢』ですね」
ヘルメンラトスか……私の部屋の本棚にもあった。
「基本よね、やっぱり。あの人のは私も好きよ。他に詩集が好きな方はいないかしら」
……レイモンドも好きではないんだ。
「そう。ではこの勝負は、レイモンド様とユリアの勝利ね」
忘れてた! 共通している人が多い人が勝ちって私が言ったんだった!
「待って、レイモンドが無理矢理手を上げさせただけだし。ユリアちゃんの勝利でしょ」
「いえ。アリスさんのこと私、好きですよ。無理矢理ではありません」
「ありがと……」
でも、色々とこのままではいけない気がする。このままお開きにしちゃ駄目だと思う。一つずつ解決していこう。
まず、ダニエルさんに私を好きだと手を上げさせただけで終わらせるのはよくないよね。
「じゃ、私からもう一つ質問ね。ジェニーが好きな人!」
「えっ……ァ、アリス!」
全員が手を上げた。
「これで私も勝ちだね」
「もう! あなたこそ無理矢理じゃない」
ダニエル様が手を上げたのを見て、顔を赤らめて動揺している。ジェニファー様……可愛すぎる。
「無理矢理じゃないよ。それから、私がダニエル様のことをダニエルさんって呼んでいるのにジェニーがレイモンドを様付けしたら駄目でしょ」
「えっ……あ、そうね、なくてもいいとはおっしゃっていただいたのだけど、アリスにも確認をと思って。それならここではレイモンドさんにするわ」
「うん、そうして。それにダニエルさんのこともだよね。様つけてたよね、さっき」
「え、う……」
こう呼んでとかダニエル様も言えばいいのに。
「私のことは好きなように呼べばいい」
「それなら、ダニエル様――」
「ダニエルさんの愛称って何」
「……ダニーだろうか……」
「それでジェニーが呼んじゃ駄目なの」
「別に構わない。好きなように呼べばいいと言っている」
「だって、ジェニー」
「そ、そうね……そうするかもしれないわ……き、気持ちを固めてから……」
どうしよう。今すぐ、もっとくっつけたくなってきた。でも……ジェニファー様、顔がつくれなくなってきているし、そろそろ退散した方がいいかな。
「それじゃ、自己紹介も終わったし、私は女の子だけでもう少し話をしたいな。二人を連れていってもいい?」
「いいよ、アリス。夕食の時間まで長引きそうなら呼びに行くよ。ダニエルもそれでいいよね」
「構わない」
「じゃ、行くね」
私、もしかして仕切っちゃってる人……?
クラスでは大人しくしておこうと決めて、二人を片付けたばかりの私の部屋へ案内した。
「次は私だな。願望は、全ての大陸の全ての民が同じ言語ならいいのにとは思うな。齟齬が発生しやすく面倒だ。他国へも召喚以外の方法での素早い移動方法がほしい。ただ……それも実際にあれば不法移民が入り放題になる。気楽に犯罪者の捨て場所にされてもたまらないから、ただの願望だな」
皆それぞれ特徴が出るなぁ。
ダニエル様も真面目だ。
「共通点はそうだな……私はジャンケンが弱い。同じ者はいるか」
ジャンケン!?
いきなりおかしな方向に!
この世界にもジャンケンが!?
シーン……。
「誰もいないのか……」
きっとかけ声も変換されているはず!
言ってしまおう!
「そう言われたらやるしかないと思う。皆でジャンケンしよ。せーの、ジャンケンポイ!」
わたわたしながら、皆が手を出した。
うん……あいこになると思ってた。
「あいこで――」
最初に負けたのがダニエル様とユリアちゃん。うーん……ジャンケンに強い弱いなんて、あるのかな。
ちなみに勝者は、ジェニファー様だ。
「私もジャンケンに弱い人として、手を上げさせていただきます……」
「仲間ができてよかった」
「恐縮です……」
「ダニエルさん、ジャンケンなんてすることあるの?」
私はこの世界でまだ一度もない。
王子様がジャンケンって……。
「兄弟でたまにな。あー……なんだ、前のアレを賭けるかどうかもジャンケンで私が負けたせいで通してしまったんだ。すまなかったな……」
前のアレってなんだっけ。
あ、私がレイモンドに落ちたかどうかってやつか……。実際はもう少し複雑だったらしいけど。
「アレって内緒なの?」
「いや、ここで堂々と言うのもなと思っただけだ」
「そっか、気になるならあとで教えるね、ユリアちゃん」
「あ、いえ、その、私はどちらでも……」
どちらでもってことは、やっぱり気になるのかな。
「最後は私ね。願望は……一度、お忍びをしてみたいわね。ダニエル様がレイモンド様と一緒にされたと聞いて羨ましくなってしまったわ」
……したことないの。それ、十分に実現可能な願望だと思うけど。
ジトッとダニエル様を見るとギクリとした表情をしたあとに睨みつけられた。
目を逸らすんじゃなくて睨むんだ。怖いなぁ。でも……やっぱりレイモンドよりも、男子って感じ。
私ではダニエル様の代わりにはなれないけど、護衛付きなら許されるよね。ユリアちゃんともう少し仲よくなったら、三人で遊びに行こうと誘ってみよう。
「共通点はそうね……詩集が好きかしらね。ユリアとかぶってしまうけれど」
「あ、私も好きです!」
「私も~、どんなのが好きなの?」
「そうね……幻想的な雰囲気のものかしら」
「例えば例えば?」
「く……食いつくわね。最近何度も読み返してしまっている詩集は、『失われたパズルの欠片』というタイトルね」
「そうなんだ。教えてくれてありがとう」
気になるな……ソフィになんとかして手に入れてもらおうかな。もっと教養があれば話を膨らませられたのに。結構覚えたのになぁー。かなり最近の作品なのかもしれない。
「アリスは? 好きなのよね?」
ううん……レイモンドと図書館に行った時に気に入って作者買いをお願いしているのはあるけど……。
「うん……子供っぽいって笑わないでね」
「そんな心配しないで」
「あのね、『出口のない迷路で明日まで遊ぼう』ってタイトルのが一番好き」
「あら、メルシーホワイトの作品ね。さすがアリス。マイナーなところを攻めるわね」
「知ってるんだ……さすがなのはジェニーだよ。ユリアちゃんは?」
「私は、有名どころだと『海の底を這いずる夢』ですね」
ヘルメンラトスか……私の部屋の本棚にもあった。
「基本よね、やっぱり。あの人のは私も好きよ。他に詩集が好きな方はいないかしら」
……レイモンドも好きではないんだ。
「そう。ではこの勝負は、レイモンド様とユリアの勝利ね」
忘れてた! 共通している人が多い人が勝ちって私が言ったんだった!
「待って、レイモンドが無理矢理手を上げさせただけだし。ユリアちゃんの勝利でしょ」
「いえ。アリスさんのこと私、好きですよ。無理矢理ではありません」
「ありがと……」
でも、色々とこのままではいけない気がする。このままお開きにしちゃ駄目だと思う。一つずつ解決していこう。
まず、ダニエルさんに私を好きだと手を上げさせただけで終わらせるのはよくないよね。
「じゃ、私からもう一つ質問ね。ジェニーが好きな人!」
「えっ……ァ、アリス!」
全員が手を上げた。
「これで私も勝ちだね」
「もう! あなたこそ無理矢理じゃない」
ダニエル様が手を上げたのを見て、顔を赤らめて動揺している。ジェニファー様……可愛すぎる。
「無理矢理じゃないよ。それから、私がダニエル様のことをダニエルさんって呼んでいるのにジェニーがレイモンドを様付けしたら駄目でしょ」
「えっ……あ、そうね、なくてもいいとはおっしゃっていただいたのだけど、アリスにも確認をと思って。それならここではレイモンドさんにするわ」
「うん、そうして。それにダニエルさんのこともだよね。様つけてたよね、さっき」
「え、う……」
こう呼んでとかダニエル様も言えばいいのに。
「私のことは好きなように呼べばいい」
「それなら、ダニエル様――」
「ダニエルさんの愛称って何」
「……ダニーだろうか……」
「それでジェニーが呼んじゃ駄目なの」
「別に構わない。好きなように呼べばいいと言っている」
「だって、ジェニー」
「そ、そうね……そうするかもしれないわ……き、気持ちを固めてから……」
どうしよう。今すぐ、もっとくっつけたくなってきた。でも……ジェニファー様、顔がつくれなくなってきているし、そろそろ退散した方がいいかな。
「それじゃ、自己紹介も終わったし、私は女の子だけでもう少し話をしたいな。二人を連れていってもいい?」
「いいよ、アリス。夕食の時間まで長引きそうなら呼びに行くよ。ダニエルもそれでいいよね」
「構わない」
「じゃ、行くね」
私、もしかして仕切っちゃってる人……?
クラスでは大人しくしておこうと決めて、二人を片付けたばかりの私の部屋へ案内した。
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