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fluctuation 変動
事実
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「葉築がスナックのボックスを覗いたら、立道は、先方の行き過ぎた行為を、止めるどころか煽ってたんだと」
室岡さんが言いづらそうに話す事実は、立道から聞いていたことと違っていた。
「行き過ぎた行為……」
肩を抱かれたり、足を触られたのは何となく覚えている。
「 先方も、皆、相当酔って理性を失ってたらしくて、鷲ちゃんの……その、スカートの中に手を入れたりしていたらしい」
聞いてるだけで、恥ずかしい。
「″ 何なら、このまま皆でホテルに行きますか?″ って、調子に乗った立道が言ったところで、葉築がストップをかけた、と……」
葉築さんが……。
だから、さっきあんな顔を……。
「あちらは気を悪くしなかったんですか?」
「そういうのをうまく丸めるのが得意だから、葉築は最年少で支店長になれるんだよ」
「……」
なんにせよ、葉築さんが居てくれて良かった。
「葉築はデキる奴だ、同行したのがアイツだったなら、女子社員を生け贄にするようなことは絶対にない。今後、何かある時はアイツに託すようにする」
私より先に呼び寄せた立道さんに、室岡支店長は、一度は受理拒否した退職を促したのだという。
「営業マンとして、あるまじき行動。見過ごすワケにはいかない」
今回は、切るつもりでいるらしい。
その事で、葉築さんから「話がある」と言われ、帰りに彼を待つことに。
会社には、まだ室岡さんが残っていたので、例のカフェで待ち合わせをした。
「いらっしゃいませー」
仕事帰りのOLやサラリーマン、学生で賑わう店内。いつものように隅の席に座る。
今日は、葉築さんがいつも飲んでる深煎り珈琲をブラックで買ってみた。
「……熱っ」
ブラックだと、いつもより熱い気がする。 そして、苦い。
彼は、いつもこんなのを飲んでるんだ……。
昨夜の接待後も、わざわカフェに寄ったんだろうか。
葉築さんが来るまで時間をもて余しそうなので、会社でコピーしてきた営業マニュアルをコッソリ読むことに。
本当は社外秘なので、こんなところで見てはダメなのだけど……。
「それ、持ち出し禁止だぞ」
葉築さんの怒った声が聞こえて、顔を上げると、
「……なんてな」
冗談だったのか、ちょっと笑って私の手元のマニュアルを見ていた。
「お疲れさまです。思ったより……」
「早かった? 」
「……はい。忙しそうだったから」
師走は多忙なのは、どの業種も同じだろうけど……。
長い冬休みをとるディーラーに合わせて、納品だったりバージョンアップだったり、やることが必然的に詰まってしまう時期。
けれど、葉築さんは、
「営業やエンジニアになると、この師走や繁忙期は大変だけど、俺は無理な詰め方しないから、時間の調整は上手くできる」
相変わらずの、デキるっぷり。
「マニュアルでは取得できない事、俺が教えてあげるよ、手取り足取り」
けして、意地悪や冗談ではなく、本当に教えてくれそうな雰囲気で言うから、ちょっとドキッとした。
「……ありがとうございます。 それで、話って?」
それを隠すように本題に切り替える。
葉築さんはまた苦笑いをして、
「接待の時も、そうやって真面目な話に切り替えて、アルコールから逃げればいいんだよ」
今後のアドバイスをしてくれた。
「……そうですよね。自分から流れを変える事も覚えないと、ですね」
「うん。そう。……俺も何か飲もう」
そして、私と同じものを頼んでから、立道さんの今後について相談があった。
「俺は、立道には、まだ会社に残って貰おうと思ってる」
室岡さんが言いづらそうに話す事実は、立道から聞いていたことと違っていた。
「行き過ぎた行為……」
肩を抱かれたり、足を触られたのは何となく覚えている。
「 先方も、皆、相当酔って理性を失ってたらしくて、鷲ちゃんの……その、スカートの中に手を入れたりしていたらしい」
聞いてるだけで、恥ずかしい。
「″ 何なら、このまま皆でホテルに行きますか?″ って、調子に乗った立道が言ったところで、葉築がストップをかけた、と……」
葉築さんが……。
だから、さっきあんな顔を……。
「あちらは気を悪くしなかったんですか?」
「そういうのをうまく丸めるのが得意だから、葉築は最年少で支店長になれるんだよ」
「……」
なんにせよ、葉築さんが居てくれて良かった。
「葉築はデキる奴だ、同行したのがアイツだったなら、女子社員を生け贄にするようなことは絶対にない。今後、何かある時はアイツに託すようにする」
私より先に呼び寄せた立道さんに、室岡支店長は、一度は受理拒否した退職を促したのだという。
「営業マンとして、あるまじき行動。見過ごすワケにはいかない」
今回は、切るつもりでいるらしい。
その事で、葉築さんから「話がある」と言われ、帰りに彼を待つことに。
会社には、まだ室岡さんが残っていたので、例のカフェで待ち合わせをした。
「いらっしゃいませー」
仕事帰りのOLやサラリーマン、学生で賑わう店内。いつものように隅の席に座る。
今日は、葉築さんがいつも飲んでる深煎り珈琲をブラックで買ってみた。
「……熱っ」
ブラックだと、いつもより熱い気がする。 そして、苦い。
彼は、いつもこんなのを飲んでるんだ……。
昨夜の接待後も、わざわカフェに寄ったんだろうか。
葉築さんが来るまで時間をもて余しそうなので、会社でコピーしてきた営業マニュアルをコッソリ読むことに。
本当は社外秘なので、こんなところで見てはダメなのだけど……。
「それ、持ち出し禁止だぞ」
葉築さんの怒った声が聞こえて、顔を上げると、
「……なんてな」
冗談だったのか、ちょっと笑って私の手元のマニュアルを見ていた。
「お疲れさまです。思ったより……」
「早かった? 」
「……はい。忙しそうだったから」
師走は多忙なのは、どの業種も同じだろうけど……。
長い冬休みをとるディーラーに合わせて、納品だったりバージョンアップだったり、やることが必然的に詰まってしまう時期。
けれど、葉築さんは、
「営業やエンジニアになると、この師走や繁忙期は大変だけど、俺は無理な詰め方しないから、時間の調整は上手くできる」
相変わらずの、デキるっぷり。
「マニュアルでは取得できない事、俺が教えてあげるよ、手取り足取り」
けして、意地悪や冗談ではなく、本当に教えてくれそうな雰囲気で言うから、ちょっとドキッとした。
「……ありがとうございます。 それで、話って?」
それを隠すように本題に切り替える。
葉築さんはまた苦笑いをして、
「接待の時も、そうやって真面目な話に切り替えて、アルコールから逃げればいいんだよ」
今後のアドバイスをしてくれた。
「……そうですよね。自分から流れを変える事も覚えないと、ですね」
「うん。そう。……俺も何か飲もう」
そして、私と同じものを頼んでから、立道さんの今後について相談があった。
「俺は、立道には、まだ会社に残って貰おうと思ってる」
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