同級生がCEO―クールな彼は夢見るように愛に溺れたい(らしい)【番外編非公開中】

光月海愛(こうつきみあ)

文字の大きさ
107 / 110
夢ならさめないで

愛しい

しおりを挟む
 こんなに体調悪いなら、今日の打ち合わせキャンセルすれば良かったのに。
 荒い息遣いの神城くんを見つめながら、電話をかける。

 こんな時なのに。
 こんな時だからこそ。
 愛しい。

 三川さんが車を近くまで寄せてきて、二人で神城くんを席に乗せた。

「とりあえず近くの病院行こうか」

「はい、お願いします」

 私の返事に、三川さんが一瞬、″おや″という表情を見せる。

「なつみちゃん、保育園お迎えあるだろ? もうこのまま帰っていいから」

「え、は………」

 そうだった。
 一緒に車に乗り込んで病院まで付き添う勢いだった。我ながら、母親として失格だ。
 そんな私の側に、冬美が走って近寄って来た。

「なに、神城社長、ぶっ倒れたんだって?」

「うん。後は三川さんに任せて私達は帰ろう」

「は? 何言ってんの? なつみは行かなきゃダメでしょ? 帰ったらあんた一生後悔するよ」

 ここで、三川さんがやっぱりって顔をした。


「胡桃は私が迎えに行くから。冷凍母乳も離乳食もあるんだから任せて付き添いな、ね?」

 こんなふうに姉に身体を優しく撫でられたのは子供の頃以来だった。

 ――いいのかな。
 いまさら、許される?

 冬美が言うように、世間体も、プライドも、母親としての責任よりも、何も考えずに、ただ今は好きな人のそばにいたい。
 心で色んな人に謝りながら、私は頷いた。


「この人、胡桃の父親なんです。病院に同行させてください」



 移動中の車内で、神城くんはまるで死んだかのように眠っていた。
 時々額の汗をハンカチで拭って、目に入らないようにすると、その時はわずかに瞼を上げて何か言いたげな顔になった。
 三川さんは、ただひたすら運転に徹している。

「後は大丈夫? 俺、店に戻るけど」

「はい。大丈夫です。お世話かけました」

 病院のロータリーで私達を降ろすと、三川さんはなんとも言えない表情で首を横に振った。

「俺、こんなふうに鈍いから、前の嫁さんからも逃げられたんだろうな」

「………え」

「いや。なんも。じゃあ、帰り気をつけて」

 クラクションを軽く鳴らして三川さんが車を走らせる。
 めちゃくちゃ忙しいのに、申し訳なかった。


「電話した神城です」

 ふらつく神城くんの腕を取って発熱外来の受付をした。受付の女性二人が神城くんを見て、"あっ "と顔を輝かせ、背を向けた途端にヒソヒソと話していた。

「やっぱり神城社長だよ」
「病院とか行くんだね」


 そりゃ行くよ。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! *全28話完結 *辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 *他誌にも掲載中です。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

元遊び人の彼に狂わされた私の慎ましい人生計画

イセヤ レキ
恋愛
「先輩、私をダシに使わないで下さい」 「何のこと?俺は柚子ちゃんと話したかったから席を立ったんだよ?」 「‥‥あんな美人に言い寄られてるのに、勿体ない」 「こんなイイ男にアピールされてるのは、勿体なくないのか?」 「‥‥下(しも)が緩い男は、大嫌いです」 「やだなぁ、それって噂でしょ!」 「本当の話ではないとでも?」 「いや、去年まではホント♪」 「‥‥近づかないで下さい、ケダモノ」 ☆☆☆ 「気になってる程度なら、そのまま引き下がって下さい」 「じゃあ、好きだよ?」 「疑問系になる位の告白は要りません」 「好きだ!」 「疑問系じゃなくても要りません」 「どうしたら、信じてくれるの?」 「信じるも信じないもないんですけど‥‥そうですね、私の好きなところを400字詰め原稿用紙5枚に纏めて、1週間以内に提出したら信じます」 ☆☆☆ そんな二人が織り成す物語 ギャグ(一部シリアス)/女主人公/現代/日常/ハッピーエンド/オフィスラブ/社会人/オンラインゲーム/ヤンデレ

一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~

椿蛍
恋愛
念願のデザイナーとして働き始めた私に、『家のためにお見合いしろ』と言い出した父と継母。 断りたかったけれど、病弱な妹を守るため、好きでもない相手と結婚することになってしまった……。 夢だったデザイナーの仕事を諦められない私――そんな私の前に現れたのは、有名な美女モデル、【リセ】だった。 パリで出会ったその美人モデル。 女性だと思っていたら――まさかの男!? 酔った勢いで一夜を共にしてしまう……。 けれど、彼の本当の姿はモデルではなく―― (モデル)御曹司×駆け出しデザイナー 【サクセスシンデレラストーリー!】 清中琉永(きよなかるな)新人デザイナー 麻王理世(あさおりせ)麻王グループ御曹司(モデル) 初出2021.11.26 改稿2023.10

甘い束縛

はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。 ※小説家なろうサイト様にも載せています。

私の婚活事情〜副社長の策に嵌まるまで〜

みかん桜
恋愛
身長172センチ。 高身長であること以外ごく普通のアラサーOL、佐伯花音。 婚活アプリに登録し、積極的に動いているのに中々上手く行かない。 「名前からしてもっと可愛らしい人かと……」ってどういうこと? そんな男、こっちから願い下げ! ——でもだからって、イケメンで仕事もできる副社長……こんなハイスペ男子も求めてないっ! って思ってたんだけどな。気が付いた時には既に副社長の手の内にいた。

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

処理中です...