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第三章・ご懐妊。13

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 キラキラと黄金に輝く光り。ゆっくりとこちらに降りてくる。これは……?
 手のひらまで降りてくると、光りは可愛らしい赤ん坊に姿が変わる。
 輝く白銀の髪に青空のような碧眼。白いおくるみを包まれた女の子だった。
 まあ、なんて可愛らしい。どうして、この場所に赤ん坊が?
 すると赤ん坊は、私の顔を見るとニコッと微笑んでくれた。
 あら、この子……何処となく私に似ているような?
「まんま」
「えっ……まんまって」
「うっーキャハッ」
 赤ん坊は、嬉しそうに雄叫びを上げる。手をバタバタと動かしながら。
 とても愛らしい。まんまってママの事よね? 
 どうして私をママって呼ぶのか分からず戸惑ってしまう。だが、何だろうか……。
 驚いたが、嫌だとは思わなかった。むしろ心の中があたたかくなり幸せな気持ちにさせてくれる。
「そうよ……ママよ」
 私は、そう応えた。もしかして……この子はお腹の子じゃないかと思えてならない。
 だってママって言ったし。私は、フフッと笑ってみせる。
 すると遠くから声が聞こえてきた。
『こら戻って来い。クリスティーナ』
 えっ? クリスティーナ? するとハッと目を覚ました。あれ……今のは夢? 
 気づくとベッドの上で眠っていた。するとルルとビビアンが慌ててこちらに来る。
「エルザ様。目を覚まされましたか!?」
「良かったですわ。三日間も高熱を出して、ずっと寝込んでいたのですよ」
 三日間も熱を出して? じゃあ、やっぱり夢だったのね。
 なら、婚約破棄も夢だったのかしら。何処までが夢だったのか記憶が曖昧だった。
 あの声は誰だったのかしら? 低く大人の男性だったけど、知らない声だったわ。
 それに、あの赤ん坊も……。
 不思議に思いながら起き上がろうとするが高熱を出したせいか、ふらつく。
「急に起き上がったりしたら危ないですわ」
「ねえ、レイヴァン様は? 婚約破棄なんてしてないわよね?」
「それは……」
 すると廊下から、バタバタと誰かがこちらに来る足音がした。
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