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第三章・ご懐妊。14

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 そして勢いよくドアが開かれる。
「エルザが目を覚ましたって本当か!?」
「れ、レイヴァン様!?」
 私は、驚いて彼の名前を呼んだ。すると駆け寄り私をギュッと抱き締めてくれた。
「良かった……無事で」
 えぇっ!? 何故、抱き締められているの?
 急に抱き締められたのでさらに驚く。
「あ、あの……レイヴァン様」
 ドキドキしながらもレイヴァン様を見ると、真っ直ぐと私を見てくれた。
 やっぱりアレは、夢だったのかしら?
 どう見ても婚約破棄した後の対応とは思えない。いや、むしろ穏やかになっているような気がする。前は気遣ってくれたが、こうやって抱く以外は抱き締めてはくれなかった。冷たい表情でもないし……。
「レイヴァン様……私達はどのような関係なのでしょうか? 婚約破棄なんて……してないですわよね?」
 夢か現実か分からない記憶をハッキリさせるために尋ねた。聞くのは怖かったが、このままだと記憶が曖昧で良くないと思った。すると言葉を失うレイヴァン様。
 ルル達も黙ったままだ。えっ? 無言になるレイヴァン様だったが、重い口が開く。
「……本当だ。私と君は、もう婚約者でも何でもない」
「そ、そんな。どうして? あ、やっぱりレイナ様が……」
「彼女の名前を口にするな!!」
 レイナ様の名前を口に出した途端に凄い剣幕で怒り出した。それほど、私から彼女の名前を出してほしくないのだろうか? しかも婚約破棄は夢ではなかった。
 彼の感情を読むことが出来ず困惑する。レイヴァン様の顔色は青ざめており、手を震わせながら強く握り締めていた。よく見ると、左手には包帯が巻かれているではないか。怪我でもしたの!?
 よく見ると包帯に血が染み付いて痛そうだ。どうして?
「この包帯はどうしたのですか!?」
 怪我をしている様子だった。いつ? 私が寝込んでいる間に何かあったのだろうか?
 私は、思わず触れようとする。しかしパッと払い除けられてしまった。
 あっ……。 冷たい態度に驚いてしまう。
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