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初めての社交界へ

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そうして彼と出会って、6年の月日が流れると、私は12歳となった。
努力の賜物か、はたまた才能か……その頃になるとマナーやダンスはもちろん、歴史や経済学も極めていた。
母様も父様もそんな私の成長にとても喜んでくれていた。
その中でも魔術は飛び抜けて成長し、私の人生計画は順調に進んでいたんだ。


ところで12歳と言うと……貴族たちは社交界へのデビューの年となる。
私はこの日の為に作ったであろう淡い桃色のドレスを身につけ、腰まで伸びた髪を結い上げると、顔には化粧を施し、王宮へと向かう準備を整える。
エスコートはもちろんグレイだ。
私の家は位の高い公爵であるにも関わらず、私にエスコート役の申し入れが一切なかった。
なぜなのか……。
皆さんこの私のつり目が怖いからですか……?
それとも魔術オタクだからですかね……?
はぁ……自分で言ってて悲しくなってきた……。


グレイは一昨年にデビューを終えており、私の隣に立つ彼は引き締まった体に、深い青のタキシードを身につけ、少し伸びた髪を固め後ろにあげていた。
いつもとは違う、大人っぽい彼の姿になぜだか頬に熱を持つ。
整った顔立ちをしているとは思っていたけれど……洋服でこうも印象が変わるとは驚きだ。
いつもと違う彼の礼装姿にしばらく見惚れていると、彼はさりげなく私の手を取り馬車へとエスコートしてくれた。
紳士的な彼の様子に驚きを隠せない中、私はおずおずと言った様子で彼の手にそっと重ねていった。

王宮へとたどり着くと、会場内は人人人……貴族で埋め尽くされていた。
さすが公爵家である一人娘のお披露目だけの事はある……。
あまりの人の多さに萎縮していく中、私は必死に蓋をすると心を隠し真っすぐに顔を上げると、背筋をピンッとはり、一度深呼吸をする。
そっとグレイに視線を向け、差しだされた彼の手に私の手を重ねると、笑顔を貼り付けながら、優雅に王宮の扉を潜っていった。

中へ入るや否や……人々が私たちへと押し寄せる。
移り変わる人の多さにただただ笑顔で頷き、私はひたすらに賛辞を受け止めていた。
頬がつりそうね……。
それに同じ言葉ばかりだと……眠くなりそう……。

退屈に感じる中、突然に会場がシーンと静まり返ると、貴族達の視線が一点へ集まっていく。
私たちもそちらへ視線を向けると、大きく扉が開かれそこには、きらびやかな衣装をまとった威厳のある男性の姿が現れた。
仰々しい彼らの様子に、王族がやってきたのだと気が付く。
先頭には王と王妃が並び、その後ろには、第一王子の姿が見える。
皆が深い礼をとる中、私も連ねてスカートの裾を持ち上げると、淑女の礼をとった。
そんな中、こっそり顔を上げてみると、第一王子とパチッて視線が絡む。
第一王子の深いブルーの瞳に、何かが脳裏をかすめた気がした。
何か……どこかで……?

呆然とする中、王族が席へ着席すると、私の周りに集まっていた貴族たちが、王族の元へと移動していく。
私も父とグレイに連れられ、王族への挨拶を済ませると、一息つくように壁際へと移動していった。
疲れたな……。
苦しいし、はぁ……。
それに、このコルセット締めすぎでしょ……。

壁までエスコートしてくれたグレイは挨拶回りへ行くようで、絶対にこの場所から動かないこと!と言い残し私のそばから離れていく。
心配性な彼の様子に、父親のようだなぁと思いながら、自然と微笑みを浮かべて見せると、彼へと頷いた。
すると彼に続くように父と母も知人へ挨拶に行くと、会場の中へ消えていった。

一人になった私は、メイドが運んでいた果実ジュースを手に取り飲んでみる。
これ美味しい!
甘い果実に自然と顔が綻ぶのを感じながら、一人楽しく飲み物を堪能していると、誰かが私の傍へとやってきていた。

「僕と一曲踊っていただけませんか」

突然のお誘いに、驚きのあまりジュースをこぼしそうになったが、何とか持ち直す。
驚きを悟られないよう無理矢理に笑顔を貼り付けると、飲み物から視線を外し、声がした方へ顔を向ける。

するとそこには精悍な顔つきで、ブロンドのサラサラな髪に海のように深い青色の瞳の青年が、爽やかな笑顔を浮かべながらに、私へと手を差し出していた。
あれ……この姿……王子様じゃないの……。
笑みが徐々にひきつってくる中、王族の誘いを断れるはずもなく、私は慌てて頷くと、急いで彼に手を重ねた。


そうして王子に導かれるままに、ホールの中央へと誘われていく。
貴族の視線が私たちへ集中する中、とても居心地が悪い。
私たちが中央へ立つと、先ほどまで流れていた音楽がやみ、新しい音楽が流れ始める。

彼と向かい合わせに立ち、ゆっくりとお互いの腰に手を回すと、彼と密着する。
私は緊張したままに彼を見上げてみると、爽やかな笑顔に私も無理矢理に笑みを浮かべた。
私は緊張を隠すように優雅に微笑みを作ると、音楽に合わせ軽やかなステップを刻んでいく。
艶やかな音楽に合わせダンスは進んでいくと、私は彼のリードのにあわせるように、彼へ体を預けていった。

曲が終わり、私は彼の腰から手を離し、一歩下がり礼をとる。
このような場でのダンスは1曲が基本、2曲目も同じ異性と連続して踊ることは、婚約者もしくは既婚者だ。
さてまた壁へと戻ろうかなと、彼に背を向けようとした刹那、彼は世界中の女性を魅了するような笑顔を浮かべながらに、戻ろうとする私を引きよせ、耳元に唇を寄せた。

「もう少し……あなたといる時間をくれないかな」

彼の吐息がかかり、声変わりしたてのようなかすれたその声に、私の頬を自然と熱くなっていった。
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