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最終章
似て非なるもの (其の一)
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私の処刑日が決定した日。
城では処刑の準備が行われていた。
重罪人にはこうして見せしめのため公開処刑が決行される。
広場に大きなギロチンが用意され、騎士たちが安全確認を行っていた。
ギロチンの周りには柵が張り巡らされ、街民たちが見学できるようセットされ、入場門が開かれる。
城の外には大行列。
皆、公開処刑の入場券を手に入れるため、朝早くから集まってきたようだ。
城側には来賓席が用意され、貴族たちが集まれるようになっている。
座席には各貴族の名が記され、大々的な公開処刑。
そんな中ピーターはこっそり広場から抜け出すと、城内へ入っていった。
回廊を進み階段を上がると、ノア王子の執務室前で立ち止まる。
ピーターはトントントンとノックをすると、深く息を吸い込んだ。
「ノア王子、少しお時間よろしいでしょうか?」
「あぁ、入ってくれ」
扉がゆっくりと開くと、ピーターは敬礼を見せる。
ノア王子はデスクの書類をまとめると、ソファへ座るよう促した。
メイドはすぐにお茶を用意すると、ピーターの動きを見ながらお茶を淹れ始める。
ピーターは言われた通りソファーへ腰かけると、深刻な表情を浮かべた。
「教祖の処刑が決定したところに恐縮なのですが……一つ気になることがございまして。教祖を捕らえた日から……リリーの様子がどうも変なんです」
ノア王子は複雑そうな表情を浮かべながら立ち上がると、向かいのソファーへ腰かけた。
メイドはすぐにお茶をテーブルへ並べると、ノア王子がチラッと視線で合図をした。
その姿にメイドは急ぎ足で下がると、深く一礼し扉を閉めたのだった。
ノア王子とピーターだけになった部屋の中、ノア王子はティーカップを手に取ると一口啜る。
「ふぅ、変か……。確かにそれは僕も感じている。最初は立場が変わったからだと思っていたけれど、どうも違うみたいだ」
「ノア王子もですか。俺先日リリーに話しかけたんですが……侯爵家ごときが気安く話しかけるなと言われたんですよね。あんな言葉今まで聞いたことがありません。爵位に触れたことなんて一度もなかった。それに雰囲気も以前とは別人で……。あいつこのまま騎士学園も辞めるとも言っていました。あんなに剣が好きだったのに……」
ピーターは不安げな表情を浮かべると、ノア王子は考え込むように腕を組んだ。
「僕も同じようなことがあったよ。婚約祝いにとリリーへカーネーションを送ったんだけれど、こんな安っぽい花はいらないと突き返された。それよりも高貴なバラがいいとね。少し前に送ったときはとても喜んでくれたんだけれども……」
「あー、遅くなってすみません、婚約おめでとうございます……。あの、なんかあれですよね。生粋の令嬢という言い方はあれですが、そんな感じに見えます。今までのリリーじゃない」
「それは同感だ。よく考えてみれば、最初からおかしかった。リリーとは長い付き合いだけど、こんなことは初めてで、婚約の件も正直おかしいよね。自分で言うのもなんだけれど、彼女は僕を……そういったふうに見ていなかったにも関わらず、婚約の話に即答した。舞い上がって気が付くのが遅れたけれど、どう考えてもおかしい。だがどうしてそうなったのかさっぱりわからない。まさか……あの教祖が何かしたのだろうか?」
ピーターは興奮した様子で前のめりになると、ノア王子の瞳を覗き込む。
「その可能性は否めません。不思議な力を持っているようですし……。ですのでこうして相談にきました。死んでしまえば、確かめることも出来ません」
「だが教祖とリリーが関わったのは、あの時の一瞬だけだ。あの状況で何かできるとは思えないけれど……」
歯切れの悪い言葉で俯くノア王子。
ピーターはクシャクシャと頭をかくと、深く息を吐きだした。
城では処刑の準備が行われていた。
重罪人にはこうして見せしめのため公開処刑が決行される。
広場に大きなギロチンが用意され、騎士たちが安全確認を行っていた。
ギロチンの周りには柵が張り巡らされ、街民たちが見学できるようセットされ、入場門が開かれる。
城の外には大行列。
皆、公開処刑の入場券を手に入れるため、朝早くから集まってきたようだ。
城側には来賓席が用意され、貴族たちが集まれるようになっている。
座席には各貴族の名が記され、大々的な公開処刑。
そんな中ピーターはこっそり広場から抜け出すと、城内へ入っていった。
回廊を進み階段を上がると、ノア王子の執務室前で立ち止まる。
ピーターはトントントンとノックをすると、深く息を吸い込んだ。
「ノア王子、少しお時間よろしいでしょうか?」
「あぁ、入ってくれ」
扉がゆっくりと開くと、ピーターは敬礼を見せる。
ノア王子はデスクの書類をまとめると、ソファへ座るよう促した。
メイドはすぐにお茶を用意すると、ピーターの動きを見ながらお茶を淹れ始める。
ピーターは言われた通りソファーへ腰かけると、深刻な表情を浮かべた。
「教祖の処刑が決定したところに恐縮なのですが……一つ気になることがございまして。教祖を捕らえた日から……リリーの様子がどうも変なんです」
ノア王子は複雑そうな表情を浮かべながら立ち上がると、向かいのソファーへ腰かけた。
メイドはすぐにお茶をテーブルへ並べると、ノア王子がチラッと視線で合図をした。
その姿にメイドは急ぎ足で下がると、深く一礼し扉を閉めたのだった。
ノア王子とピーターだけになった部屋の中、ノア王子はティーカップを手に取ると一口啜る。
「ふぅ、変か……。確かにそれは僕も感じている。最初は立場が変わったからだと思っていたけれど、どうも違うみたいだ」
「ノア王子もですか。俺先日リリーに話しかけたんですが……侯爵家ごときが気安く話しかけるなと言われたんですよね。あんな言葉今まで聞いたことがありません。爵位に触れたことなんて一度もなかった。それに雰囲気も以前とは別人で……。あいつこのまま騎士学園も辞めるとも言っていました。あんなに剣が好きだったのに……」
ピーターは不安げな表情を浮かべると、ノア王子は考え込むように腕を組んだ。
「僕も同じようなことがあったよ。婚約祝いにとリリーへカーネーションを送ったんだけれど、こんな安っぽい花はいらないと突き返された。それよりも高貴なバラがいいとね。少し前に送ったときはとても喜んでくれたんだけれども……」
「あー、遅くなってすみません、婚約おめでとうございます……。あの、なんかあれですよね。生粋の令嬢という言い方はあれですが、そんな感じに見えます。今までのリリーじゃない」
「それは同感だ。よく考えてみれば、最初からおかしかった。リリーとは長い付き合いだけど、こんなことは初めてで、婚約の件も正直おかしいよね。自分で言うのもなんだけれど、彼女は僕を……そういったふうに見ていなかったにも関わらず、婚約の話に即答した。舞い上がって気が付くのが遅れたけれど、どう考えてもおかしい。だがどうしてそうなったのかさっぱりわからない。まさか……あの教祖が何かしたのだろうか?」
ピーターは興奮した様子で前のめりになると、ノア王子の瞳を覗き込む。
「その可能性は否めません。不思議な力を持っているようですし……。ですのでこうして相談にきました。死んでしまえば、確かめることも出来ません」
「だが教祖とリリーが関わったのは、あの時の一瞬だけだ。あの状況で何かできるとは思えないけれど……」
歯切れの悪い言葉で俯くノア王子。
ピーターはクシャクシャと頭をかくと、深く息を吐きだした。
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