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乙女ゲームの世界

さぁ、別荘へ:後編

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そうして香澄がまた部屋にやって来ると、引っ張られるままに別荘の外へと連れられて行く。
外へ出ると、生暖かい潮風を肌にうけ、私は海を堪能するように、大きく息を吸い込んだ。
海だぁ……!海なんて、前世以来だなぁ~。
徐に顔を上げると、日が西へと少し傾いていた。

プライベートビーチの為、海に人の姿はない。
砂浜の上をサンダルで歩いて行くと、水着に着替えたみんなの姿があった。

「彩華、用意していた水着じゃないのかい?」

お兄様は私の姿にすぐに駆け寄ってくると、目を見開き驚いた様子を見せる。
兄はラフなパーカー姿に、ブラウンの髪が太陽の光で鮮やかに輝いていた。

「あっ……その……えーと、香澄ちゃんが用意してくれたみたいで……ごめんなさい」

その言葉に兄は、私の腕にからんでいた香澄を睨みつけると、香澄は小さく舌を出して兄を威嚇した。
バチバチと音が聞こえるんじゃないかと思えるほど、鋭く睨み合う二人に困り果てていると、奏太が私の傍へと走り寄ってくる。

「彩華さん、とっても似合っています!!」

奏太は私の前に立つと、綺麗な体からのぞかせる男らしい体と鎖骨が視線に入り、私はサッと目線を上げた。
ニコニコと人懐っこい笑顔で話しかける奏太に、笑みを返していると、後ろからコラッと花蓮が奏太を私から引きはがしていった。
そんな二人様子を微笑ましい面持ちで眺めている中、彼らの後ろから二条と華僑君の姿が見え、私は大きく手を振った。

彼らは少し顔を赤くしながら私の傍へやって来ると、二人の水着姿に視線を向ける。
二条は腹筋がわれ、腕は程よく筋肉がつき、しなやかに伸びていた。
華僑君も華奢だと思っていたが、脱ぐと肩幅が思っていた以上に広く、目のやり場に困る。
イケメン半端ない……。
二人の姿は某雑誌に掲載されるだろうと思えるほど、整っていた。
きっとここがプライベートビーチじゃなければ、女の子達がハイエナのように集まって来ていただろう。

そんなどうでもいいことを考えていると、後ろから爽やかな微笑みを浮かべながら走ってくる日華先輩の姿が見える。
彼の水着姿は、テレビで見るアイドルよりも輝いていた。
眩しい……!!!

そうして皆と合流すると、勢いよく海に飛び込む二条と奏太を横目に、私は砂浜の上を歩いていく。
後ろから香澄と花蓮が走り寄ってくると、私は二人に引っ張られるように海の中へと連れられていった。
熱い日差しの中、水の中に入り、楽しそうに笑う二人の様子に、私は自然と笑みを浮かべたのだった。

しばらく海で遊んでいると、また始まった花連と香澄の争う姿を横目に、私は一人砂浜へとあがった。
濡れた髪を一つにまとめ、砂浜に置いていたパーカーを羽織ると、パラソルの方へと足を向ける。
すると後ろから一条!との声に徐に振り返ると、二条が私へ向かって走ってきていた。

二条に軽く手をあげ立ち止まると、彼は照れるような素振りを見せ、慌てた様子で私から視線を逸らせる。
次第に二条の姿が大きくなる中、彼は何かに躓いた様子を見せたかと思うと、大きくバランスを崩す。
そんな二条を支える為、私は咄嗟に手を伸ばすが……男の人の体重を支えられるはずもなく、そのまま二人で砂浜の上に倒れ込んだ。

「きゃぁっ!!」

「わぁっ!?」

いたたた……。
砂浜に仰向けに倒れ込み、ふと目を開けると、私の目の前に二条の顔があった。
整った綺麗な顔のドアップに見惚れていると、二条と視線が交わった。
二条は私に体重を掛けないよう、砂浜に両手をつくと、床ドンのような体制になっている。
この体制は……まるで私が押し倒されたような……、いやいや何考えているの自分!!
そんな事が頭をよぎると、次第に頬に熱が集まり、私は思わず二条から目を逸らせる。
私の様子に二条は、顔を真っ赤し悪いと小さく呟く中、彼の吐息を感じ、私の体は自然と強張っていった。
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