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第五章
新章3:名の売れた魔法使い
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私は水球をワリッドへ投げて見せるが……彼は易々と剣で水球を叩き落としていく。
彼と距離を取る為に、幾つもの水球を投げ続ける中、浮かべていた水球がなくなった瞬間に、彼は素早い動きで追撃してくると、私は慌てて後退していった。
なんてことなの……、あんな簡単に叩き落されるなんて……。
とっ、とりあえず、まずは距離を取らないと……。
接近戦は不利すぎるわ……。
もう~カミールの嘘つき!
……あのウサギなんかより全然速くて強いじゃないの!!
心の中で悪態をつく中、彼は素早いスピードでジリジリと距離を詰めてくる。
剣を握った事もなければ、武闘なんて全く経験したことない私が……騎士相手に接近戦で勝てるわけがない。
ささっと動きを封じたいところだけれど……凍らせるにも……あの速さで動かれたら狙いが定まらないわ。
とりあえず風魔法で移動している間は、彼が私に追いつくことはなさそうだ。
彼の動きを観察しながらに隙を見て氷柱や水球、風球を投げながら対抗していると、歓声がドームに響き渡っていった。
そんな小競り合いを繰り返す事数十分……彼の猛攻撃から何とか逃げ延び続けていると、会場からはブーイングの嵐が響き渡る。
コラッ、逃げるなぁ!!
逃げてたって勝てないぞ!
こっちは金払って来てんだぞ!!
さっさと戦え~~!
もっと楽しませろ!
くぅっ、むかつくわね……そんなに不満ならあなた達が戦いなさいよ!!
そう言い返してやりたいところだが……残念ながらそんな暇はない。
小さな魔法では剣で弾かれ……彼を止められない。
大きな魔法を放って避けられてしまったら……観客に被害がでる恐れがあるわ……。
でも勝つためには、大きな魔法を彼に当てる必要がある。
避けられることなくヒットさせるには……避けられないほどに接近した時を狙うしかないわよね……。
でも接近すればあの剣が飛んでくるし……あぁもう、どうしてこんなことに!!!
ジレンマにうんうんと頭を悩ませながら逃げ続けていると……気がつけば私は会場の隅に追い詰められていた。
彼は何も考えず突進してきていたわけではないのだと……そこでようやく気が付いたが……時すでに遅し。
逃げ道を探してみるが……壁が邪魔をして上手く逃げだせない。
まずいっ、ここは向き合うしかないわ。
一発なら……必ず防御魔法で耐えられる。
私は先ほどよりも防御魔法に魔力を流すと、強化していった。
彼の攻撃が届かない空中へ逃げることも出来るが……それだと魔力を消費しすぎて、他の魔法が使えなくなってしまう。
少し浮かせ風で移動するのは問題ないが、空を飛ぶとなると全くの別物だ。
一度ギルドの依頼時に試したことがあるが……かなりの魔力を持っていかれたのは記憶に新しい。
後ろは壁……横へ逃げるにはスペースが狭すぎる。
こちらを追い込むようにワリッドが私の前に佇むと、つまらなそうに剣を振り下ろした。
それを何とかギリギリで避けると、彼は次々と剣を繰り出してくる。
避けきれずに防御魔法に剣先が霞め、膜にどんどんヒビが入っていった。
「本気を出せ、まさかこのまま逃げ続け戦わないつもりか?……やはりお前がギルドの依頼をクリアしていたなんてデマだったのか?……まぁ、いい、戦う気が無いのならば、このまま死ね」
壁の隅に追い詰められ、冷たく放たれた言葉に私は脚を止めると、足元にかけていた風魔法を解いた。
ここで、やるしかないわ……っっ。
振り下ろされる剣を見つめながらに、私は彼の前に震えながらに両手を伸ばすと、素早く魔力を集めていく。
この距離なら、外さないし避けられないでしょう。
カキンッ、バリッバリバリパリン、
強い衝撃に共に防御魔法が壊れ、剣先が私の肩を掠め鈍い痛みが走るが……、私はそれを何とか堪えると、集めた魔力を一気に解き放った。
剣先が体を離れ、そのまま彼の体が風の渦に飲み込まれると、場外へと吹き飛んでいく。
会場内にドカーンと大きな音が響くと、彼がぶつかった壁が崩れ落ち、会場が騒然となっていった。
あぶな……、ギリギリだったわねぇ……
あぁ、もう痛いわね……。
肩から流れる血を押さえながらに、私はそっとローブから魔力玉を取り出すと口へと運ぶ。
そうして使用した魔力を補充すると、私はゆっくりと中央へと戻っていった。
「なんという破壊力、これはもう起き上がれない!!!逃げまどっていた美少女の大逆転勝利だ!!!!」
勝利宣言なのだろうか……会場にその言葉が響き渡ると、辺りが歓声につつまれる。
私は粉々に砕けた壁の元へ行ってみると、意識を失いグッタリとする彼の傍へしゃがみ込んだ。
動かない彼をよく観察してみると、あちらこちらに打撲はあるが……息はしているようだ。
その姿にほっと胸をなでおろすと、私は横たわる彼に治癒魔法をかけておく。
ひどい外傷のみをパパッと治癒すると、私は早々に会場を去っていった。
彼と距離を取る為に、幾つもの水球を投げ続ける中、浮かべていた水球がなくなった瞬間に、彼は素早い動きで追撃してくると、私は慌てて後退していった。
なんてことなの……、あんな簡単に叩き落されるなんて……。
とっ、とりあえず、まずは距離を取らないと……。
接近戦は不利すぎるわ……。
もう~カミールの嘘つき!
……あのウサギなんかより全然速くて強いじゃないの!!
心の中で悪態をつく中、彼は素早いスピードでジリジリと距離を詰めてくる。
剣を握った事もなければ、武闘なんて全く経験したことない私が……騎士相手に接近戦で勝てるわけがない。
ささっと動きを封じたいところだけれど……凍らせるにも……あの速さで動かれたら狙いが定まらないわ。
とりあえず風魔法で移動している間は、彼が私に追いつくことはなさそうだ。
彼の動きを観察しながらに隙を見て氷柱や水球、風球を投げながら対抗していると、歓声がドームに響き渡っていった。
そんな小競り合いを繰り返す事数十分……彼の猛攻撃から何とか逃げ延び続けていると、会場からはブーイングの嵐が響き渡る。
コラッ、逃げるなぁ!!
逃げてたって勝てないぞ!
こっちは金払って来てんだぞ!!
さっさと戦え~~!
もっと楽しませろ!
くぅっ、むかつくわね……そんなに不満ならあなた達が戦いなさいよ!!
そう言い返してやりたいところだが……残念ながらそんな暇はない。
小さな魔法では剣で弾かれ……彼を止められない。
大きな魔法を放って避けられてしまったら……観客に被害がでる恐れがあるわ……。
でも勝つためには、大きな魔法を彼に当てる必要がある。
避けられることなくヒットさせるには……避けられないほどに接近した時を狙うしかないわよね……。
でも接近すればあの剣が飛んでくるし……あぁもう、どうしてこんなことに!!!
ジレンマにうんうんと頭を悩ませながら逃げ続けていると……気がつけば私は会場の隅に追い詰められていた。
彼は何も考えず突進してきていたわけではないのだと……そこでようやく気が付いたが……時すでに遅し。
逃げ道を探してみるが……壁が邪魔をして上手く逃げだせない。
まずいっ、ここは向き合うしかないわ。
一発なら……必ず防御魔法で耐えられる。
私は先ほどよりも防御魔法に魔力を流すと、強化していった。
彼の攻撃が届かない空中へ逃げることも出来るが……それだと魔力を消費しすぎて、他の魔法が使えなくなってしまう。
少し浮かせ風で移動するのは問題ないが、空を飛ぶとなると全くの別物だ。
一度ギルドの依頼時に試したことがあるが……かなりの魔力を持っていかれたのは記憶に新しい。
後ろは壁……横へ逃げるにはスペースが狭すぎる。
こちらを追い込むようにワリッドが私の前に佇むと、つまらなそうに剣を振り下ろした。
それを何とかギリギリで避けると、彼は次々と剣を繰り出してくる。
避けきれずに防御魔法に剣先が霞め、膜にどんどんヒビが入っていった。
「本気を出せ、まさかこのまま逃げ続け戦わないつもりか?……やはりお前がギルドの依頼をクリアしていたなんてデマだったのか?……まぁ、いい、戦う気が無いのならば、このまま死ね」
壁の隅に追い詰められ、冷たく放たれた言葉に私は脚を止めると、足元にかけていた風魔法を解いた。
ここで、やるしかないわ……っっ。
振り下ろされる剣を見つめながらに、私は彼の前に震えながらに両手を伸ばすと、素早く魔力を集めていく。
この距離なら、外さないし避けられないでしょう。
カキンッ、バリッバリバリパリン、
強い衝撃に共に防御魔法が壊れ、剣先が私の肩を掠め鈍い痛みが走るが……、私はそれを何とか堪えると、集めた魔力を一気に解き放った。
剣先が体を離れ、そのまま彼の体が風の渦に飲み込まれると、場外へと吹き飛んでいく。
会場内にドカーンと大きな音が響くと、彼がぶつかった壁が崩れ落ち、会場が騒然となっていった。
あぶな……、ギリギリだったわねぇ……
あぁ、もう痛いわね……。
肩から流れる血を押さえながらに、私はそっとローブから魔力玉を取り出すと口へと運ぶ。
そうして使用した魔力を補充すると、私はゆっくりと中央へと戻っていった。
「なんという破壊力、これはもう起き上がれない!!!逃げまどっていた美少女の大逆転勝利だ!!!!」
勝利宣言なのだろうか……会場にその言葉が響き渡ると、辺りが歓声につつまれる。
私は粉々に砕けた壁の元へ行ってみると、意識を失いグッタリとする彼の傍へしゃがみ込んだ。
動かない彼をよく観察してみると、あちらこちらに打撲はあるが……息はしているようだ。
その姿にほっと胸をなでおろすと、私は横たわる彼に治癒魔法をかけておく。
ひどい外傷のみをパパッと治癒すると、私は早々に会場を去っていった。
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