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第五章
閑話:情報屋の思惑(セドリック視点)
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これはまた……貴重な情報を得ることが出来た。
まさか……北の国から来たとは……予想だにしておりませんでしたが……。
ですがそれでしたら、どれだけ調べても彼女の事がわからなかったのも頷ける。
すぐにあのお方に知らせなければ……。
彼女の存在は今回の大仕事に、必ず役に立つことでしょう。
私は外へ出るや否や、遣い魔を召喚すると、空へと解き放つ。
飛び立った遣い魔は真っ青な空を昇っていくと、次第に影が小さくなっていく。
空へ紛れていくその様を見届けると、私は人ごみを避けるように裏路地へと進んでいった。
まさかこれほどまでに素晴らしい情報を得られるとは思っていなかった。
彼女に会わせてほしいと頼んだのは、あの女の正体を明かしたかっただけ。
私がどれだけ調べてもわからなかった彼女の存在が、不気味でしかたがなかった。
自分で言うのもなんですが、私の情報網はそこそこに確立されている。
西の国内でしたら、どんな情報でも手に入る。
しかしあれほど目立つ風貌に、魔法使いという稀なる者にも関わらず、彼女の情報は一切手に入れることが出来なかった。
どこからきて、そして何者なのか。
何度か彼女を尾行したこともありましたが、何も情報は得られませんでした。
あれほど自分の存在を隠そうとしているぐらいだ、きっと叩けば相当価値のある情報が手に入るはずだと思ったんですよね。
それにこのままでは、主に貴重な魔法使いの情報を提供できない。
私が知る事が出来た彼女は、魔法使いであるという事と珍しい見目をしている事ぐらい。
年齢も名前も、何者かすらわからない彼女の存在。
初めて彼女の戦闘を見た時には衝撃を受けました。
何もないところから風を起こしたり、魔法で自分自身を強化したり、空中に水の玉を作りだしたり……。
それは私が初めてあの人に出会った時に見たものと同じだった。
あれほどの魔法を一体いつどこで習ったのか……。
将又自分で考え出したものなのか……。
気になって仕方がありませんでしたが……彼女は本当に用心深かった。
ギルドへの依頼は全てカミールへ一任し、自分の身分証明書は一度も提示したことはない。
ギルドの中へすら入らず、常にカミールと行動を共にし、話しかけるタイミングなどなかった。
だから私はあの時、普段であればわざわざ自分から情報提供することはないにも関わらず、これはチャンスだと……カミールへ会いに行った。
魔法使いは自分のしたことを理解していないようでしたからね……。
きっとあのまま黙っていれば、彼女はあっさり捕まっていたことでしょう。
魔法が効かない相手では、ただの女性にすぎない。
戦闘を見る限り……剣や体術は空っきりだろうとはわかりましたからね……。
そして今日、初めて彼女と真面に会話する事が出来た。
警戒されぬよう、答えられないことは答えなくて良いと……彼女が話しやすいように……。
名前を聞かなくとも、口調や何気ない会話の端々から情報を収集出来れば御の字だと思っていたが……。
まさか向こうから話してくれると思いませんでした。
後は……主に彼女を合わせなければいけませんね。
私は薄暗い路地裏の中立ち止まると、徐に袖をまくり上げる。
そして流れる血を掬い取りミサンガへ落としてみると、ポッと光の球が浮かび上がった。
その球を覗き込んでみると、そこには戸惑う様子を見せる彼女の姿が映し出される。
彼女はまだあの家にいるようですね……。
このミサンガは、主様お手製の物だ。
対となるミサンガに居場所を知らせる魔法具。
私が持っているミサンガは、彼女の腕に付けているもの対となっている。
そしてそれを怪しまれないよう、彼女のミサンガに対となる別のミサンガを作って頂いた。
それはあの獣が持っているはず。
そういえばあの獣はどこへ行ったのでしょうか。
屋敷を見張っていた限りでは……獣の姿を見ていない。
まぁ……あの獣人に何か出来るとは思えませんが。
今、彼らを見張る者はたくさんいる。
あの魔法使いを手に入れるため……いや、手中に収めるために奮闘する貴族達。
彼らに仕えている遣い魔使い達が、チャンスを窺うようにじっと見つめているのだから。
本来であれば、家に押し入り彼女を捕まえたいところなのだろうが……。
生憎あの家周辺には、カミールの遣い魔で守られている為、それは出来ない。
なら彼らが外へ出てくるのを待つしかありません。
外へ出てさえくれれば、カミールに一人あてがい、彼女をそのまま捕らえることが出来るでしょう。
彼女は前回の戦闘で、遣い魔に魔法が効かない事を証明してしまったのですから。
カミールも全く詰めが甘い。
私なら……あの場で必ず男の息の根を止めていましたよ。
あの襲ってきた相手にちゃんととどめを刺さなかったからこんな事になる。
あの魔法使いを襲った遣い魔使いは、深手を負ったが……生きていた。
カミールが彼女を助けている間に逃げ延び、主へ報告してしまった。
だから貴族たちに彼女の弱点が公になっているはず……。
ふふっ、彼らはこれから海を渡るのでしょうが、さぁ……無事に船に乗ることが出来るのだろうか。
時間がたてばたつほど、彼女を追う貴族は増えていくだろう。
そんな事を考えながらに私は一人小さく笑うと、これから起こるだろう騒ぎに胸を躍らせていた。
まさか……北の国から来たとは……予想だにしておりませんでしたが……。
ですがそれでしたら、どれだけ調べても彼女の事がわからなかったのも頷ける。
すぐにあのお方に知らせなければ……。
彼女の存在は今回の大仕事に、必ず役に立つことでしょう。
私は外へ出るや否や、遣い魔を召喚すると、空へと解き放つ。
飛び立った遣い魔は真っ青な空を昇っていくと、次第に影が小さくなっていく。
空へ紛れていくその様を見届けると、私は人ごみを避けるように裏路地へと進んでいった。
まさかこれほどまでに素晴らしい情報を得られるとは思っていなかった。
彼女に会わせてほしいと頼んだのは、あの女の正体を明かしたかっただけ。
私がどれだけ調べてもわからなかった彼女の存在が、不気味でしかたがなかった。
自分で言うのもなんですが、私の情報網はそこそこに確立されている。
西の国内でしたら、どんな情報でも手に入る。
しかしあれほど目立つ風貌に、魔法使いという稀なる者にも関わらず、彼女の情報は一切手に入れることが出来なかった。
どこからきて、そして何者なのか。
何度か彼女を尾行したこともありましたが、何も情報は得られませんでした。
あれほど自分の存在を隠そうとしているぐらいだ、きっと叩けば相当価値のある情報が手に入るはずだと思ったんですよね。
それにこのままでは、主に貴重な魔法使いの情報を提供できない。
私が知る事が出来た彼女は、魔法使いであるという事と珍しい見目をしている事ぐらい。
年齢も名前も、何者かすらわからない彼女の存在。
初めて彼女の戦闘を見た時には衝撃を受けました。
何もないところから風を起こしたり、魔法で自分自身を強化したり、空中に水の玉を作りだしたり……。
それは私が初めてあの人に出会った時に見たものと同じだった。
あれほどの魔法を一体いつどこで習ったのか……。
将又自分で考え出したものなのか……。
気になって仕方がありませんでしたが……彼女は本当に用心深かった。
ギルドへの依頼は全てカミールへ一任し、自分の身分証明書は一度も提示したことはない。
ギルドの中へすら入らず、常にカミールと行動を共にし、話しかけるタイミングなどなかった。
だから私はあの時、普段であればわざわざ自分から情報提供することはないにも関わらず、これはチャンスだと……カミールへ会いに行った。
魔法使いは自分のしたことを理解していないようでしたからね……。
きっとあのまま黙っていれば、彼女はあっさり捕まっていたことでしょう。
魔法が効かない相手では、ただの女性にすぎない。
戦闘を見る限り……剣や体術は空っきりだろうとはわかりましたからね……。
そして今日、初めて彼女と真面に会話する事が出来た。
警戒されぬよう、答えられないことは答えなくて良いと……彼女が話しやすいように……。
名前を聞かなくとも、口調や何気ない会話の端々から情報を収集出来れば御の字だと思っていたが……。
まさか向こうから話してくれると思いませんでした。
後は……主に彼女を合わせなければいけませんね。
私は薄暗い路地裏の中立ち止まると、徐に袖をまくり上げる。
そして流れる血を掬い取りミサンガへ落としてみると、ポッと光の球が浮かび上がった。
その球を覗き込んでみると、そこには戸惑う様子を見せる彼女の姿が映し出される。
彼女はまだあの家にいるようですね……。
このミサンガは、主様お手製の物だ。
対となるミサンガに居場所を知らせる魔法具。
私が持っているミサンガは、彼女の腕に付けているもの対となっている。
そしてそれを怪しまれないよう、彼女のミサンガに対となる別のミサンガを作って頂いた。
それはあの獣が持っているはず。
そういえばあの獣はどこへ行ったのでしょうか。
屋敷を見張っていた限りでは……獣の姿を見ていない。
まぁ……あの獣人に何か出来るとは思えませんが。
今、彼らを見張る者はたくさんいる。
あの魔法使いを手に入れるため……いや、手中に収めるために奮闘する貴族達。
彼らに仕えている遣い魔使い達が、チャンスを窺うようにじっと見つめているのだから。
本来であれば、家に押し入り彼女を捕まえたいところなのだろうが……。
生憎あの家周辺には、カミールの遣い魔で守られている為、それは出来ない。
なら彼らが外へ出てくるのを待つしかありません。
外へ出てさえくれれば、カミールに一人あてがい、彼女をそのまま捕らえることが出来るでしょう。
彼女は前回の戦闘で、遣い魔に魔法が効かない事を証明してしまったのですから。
カミールも全く詰めが甘い。
私なら……あの場で必ず男の息の根を止めていましたよ。
あの襲ってきた相手にちゃんととどめを刺さなかったからこんな事になる。
あの魔法使いを襲った遣い魔使いは、深手を負ったが……生きていた。
カミールが彼女を助けている間に逃げ延び、主へ報告してしまった。
だから貴族たちに彼女の弱点が公になっているはず……。
ふふっ、彼らはこれから海を渡るのでしょうが、さぁ……無事に船に乗ることが出来るのだろうか。
時間がたてばたつほど、彼女を追う貴族は増えていくだろう。
そんな事を考えながらに私は一人小さく笑うと、これから起こるだろう騒ぎに胸を躍らせていた。
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