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第五章
新章14:立ちはだかる壁
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次第に森が深くなっていく中、カミールは速度を保ったままに、道なき道をどんどん進んで行く。
すごいわね、どうして迷わないのかしら。
グルリと周りを見渡してみるも、どこを見ても木が生い茂り同じ風景に見える。
さらに壁が光を遮り、大きな影を作っているのだろう……森は昼にも関わらず視界が悪く、ぬかるみに何度も足を取られそうになった。
そうしてどれぐらい歩いたのだろうか……足に疲れを感じ始める中、次第に壁が近づいてくると、ふと異変に気が付いた。
その先へ目を向けてみると、ドーム型建物だろうか……シルバー色の屋根がチラリと視界に映る。
あれは……?
大自然の中、あまりにも不自然な建物に目を凝らしてみると、やはりそこには建造物が佇んでいた。
もしかしてあそこが目的地かしら……?
次第に建物が大きくなる中、並び立っていた木々が減り視界が開けてくると、目の前に人が作り出しとは到底思えない大きな壁が現れた。
改めて壁を前にすると、その大きさに圧倒される。
これが壁……。
首を上げ見上げてみると、壁はどこまでも続き、天に向かって高く伸びている。
こんな大きな壁、魔法で作るにしても相当な魔力が必要そうね……。
茫然とその壁を見上げる中、カミールは壁沿いに進み始めると、そこに小さな人影が目に映る。
その姿に目を凝らしてみると、パトリシアが大きくこちらへ手を振っていた。
彼女の隣には腕を組み苛立った様子のワリッドの姿も見える。
「皆さん~遅いですよ~!突然いなくなるなんて、魔法使い様は何をしていたんですか?……あれその方は?」
パトリシアはネイトへ顔を向けると、首を傾げてみせる。
「ごめんなさい、ちょっと色々あって……。それよりも彼は私の友人のネイト。壁を壊す手助けになると思って連れてきたの」
そうネイトを紹介してみると、彼女はスッと目を細めながらに、ネイトの顔を覗き込んだ。
「ふぅ~ん、この人も魔法使いなんですか?」
「えぇ、彼も魔法を使えるわ」
パトリシアはネイトへ探るような視線を向ける中、ネイトは不快な表情を見せると、その視線から逃れ、私へと顔を寄せた。
「この者たちは何者だ?」
コソコソと話すネイトの様子に、私は声を潜めると、彼の耳元へ顔をよせる。
「彼らはお城の関係者で……。あっ、えーと、まだ説明していなかったわね。私は今お城で生活をさせてもらっているの。そこで壁を壊す算段を立てているのよ。彼らと協力してね」
ネイトは納得した表情を浮かべると、彼女へ視線を戻し、軽くお辞儀をみせる。
「ふぅ~ん、まぁ、いいです。ではでは中へご案内しますねぇ~」
パトリシアはパッと表情を変え、ニコニコと愛嬌のある笑みを浮かべると、私たちを引きつれドームの中へと入って行った。
中へ入ると、そこは広々とした空間にテーブルが並べられ、白衣姿の研究者だろうか……数十人ほどの人が集まっていた。
しかし私達の姿を気に留める研究者は誰もいない。
皆忙しそうに動き回っていた。
「こちらは壁を研究しているラボとなります~。ではでは私について来て下さい。あっ、あまり研究者さんたちの邪魔をしないように気を付けて下さいね~」
パトリシアは私達へ見せるように大きく腕を広げたかと思うと、すぐに通路の奥へ進んで行く。
彼女の背を追いかける中、研究者たちへ目を向けると、彼らは大きな紙へ数式のようなものを書き記していた。
机には鉱石のようなものが積み上げられ、何とも言えない臭いが鼻につく。
そんな中、ふとガチャガチャとの金属音に顔を向けると、そこは隠されるようにカーテンが引かれていた。
あの中で何をしているのかしら……?
そんな事を考えながらに進んで行くと、私たちは別の部屋へと案内される。
中へ入ると、部屋は円状になっており、中央には台座が設置されていた。
その上には手のリサイズの小さな箱がポツンと置かれ、周辺に薄っすらとだが魔法陣が浮かび上がっていた。
「えーでは、すでにご存じかもしれませんが、東と西の国ではこの箱に入るサイズの物を送ることが出来ます。そしてこれがその装置で~す。先日御見せした無線機も、最初はこの箱から送られてきたんですよ。ですがこれは東の国が作った物、まだこちらでは詳しく解明出来ておりません。そこで魔法使い様に見て頂きたいのですが、これが何かわかりますか~?」
彼女の言葉に私はゆっくり中央へ進んで行くと、じっと魔法陣を眺めてみる。
白い靄のように箱の周りに浮かび上がるそれは、蜃気楼のようにゆらゆら揺れていた。
どうやって物を送りあっているのか、壁を見てから女王様へ確認しようと思っていたけれど、手間が省けたわ。
そっと魔法陣へ顔を近づけてみると、強い魔力をヒシヒシと感じる。
魔法で作られた何かなのは間違いなさそう。
なら移転魔法の一種かしら……?
箱を見つめたままに考え込んでいると、ふとある疑問が浮かび上がった。
「ちょっと待って、確認したいことがあるんだけれど。これは東の国が作った物なのよね?なら最初はどうやってこれを送ったのかしら?魔法陣が描かれているようだけれど……」
「魔法陣ですか?どこに描かれているんですか?」
パトリシアは驚いた様子で私の隣へやってくると、覗き込むように箱を見つめた。
「ほら、箱の周りよ。薄っすらと霧のような光が見えるでしょ?」
彼女は箱を見つめたままに口を閉ざすと、静かに首を横に振った。
すごいわね、どうして迷わないのかしら。
グルリと周りを見渡してみるも、どこを見ても木が生い茂り同じ風景に見える。
さらに壁が光を遮り、大きな影を作っているのだろう……森は昼にも関わらず視界が悪く、ぬかるみに何度も足を取られそうになった。
そうしてどれぐらい歩いたのだろうか……足に疲れを感じ始める中、次第に壁が近づいてくると、ふと異変に気が付いた。
その先へ目を向けてみると、ドーム型建物だろうか……シルバー色の屋根がチラリと視界に映る。
あれは……?
大自然の中、あまりにも不自然な建物に目を凝らしてみると、やはりそこには建造物が佇んでいた。
もしかしてあそこが目的地かしら……?
次第に建物が大きくなる中、並び立っていた木々が減り視界が開けてくると、目の前に人が作り出しとは到底思えない大きな壁が現れた。
改めて壁を前にすると、その大きさに圧倒される。
これが壁……。
首を上げ見上げてみると、壁はどこまでも続き、天に向かって高く伸びている。
こんな大きな壁、魔法で作るにしても相当な魔力が必要そうね……。
茫然とその壁を見上げる中、カミールは壁沿いに進み始めると、そこに小さな人影が目に映る。
その姿に目を凝らしてみると、パトリシアが大きくこちらへ手を振っていた。
彼女の隣には腕を組み苛立った様子のワリッドの姿も見える。
「皆さん~遅いですよ~!突然いなくなるなんて、魔法使い様は何をしていたんですか?……あれその方は?」
パトリシアはネイトへ顔を向けると、首を傾げてみせる。
「ごめんなさい、ちょっと色々あって……。それよりも彼は私の友人のネイト。壁を壊す手助けになると思って連れてきたの」
そうネイトを紹介してみると、彼女はスッと目を細めながらに、ネイトの顔を覗き込んだ。
「ふぅ~ん、この人も魔法使いなんですか?」
「えぇ、彼も魔法を使えるわ」
パトリシアはネイトへ探るような視線を向ける中、ネイトは不快な表情を見せると、その視線から逃れ、私へと顔を寄せた。
「この者たちは何者だ?」
コソコソと話すネイトの様子に、私は声を潜めると、彼の耳元へ顔をよせる。
「彼らはお城の関係者で……。あっ、えーと、まだ説明していなかったわね。私は今お城で生活をさせてもらっているの。そこで壁を壊す算段を立てているのよ。彼らと協力してね」
ネイトは納得した表情を浮かべると、彼女へ視線を戻し、軽くお辞儀をみせる。
「ふぅ~ん、まぁ、いいです。ではでは中へご案内しますねぇ~」
パトリシアはパッと表情を変え、ニコニコと愛嬌のある笑みを浮かべると、私たちを引きつれドームの中へと入って行った。
中へ入ると、そこは広々とした空間にテーブルが並べられ、白衣姿の研究者だろうか……数十人ほどの人が集まっていた。
しかし私達の姿を気に留める研究者は誰もいない。
皆忙しそうに動き回っていた。
「こちらは壁を研究しているラボとなります~。ではでは私について来て下さい。あっ、あまり研究者さんたちの邪魔をしないように気を付けて下さいね~」
パトリシアは私達へ見せるように大きく腕を広げたかと思うと、すぐに通路の奥へ進んで行く。
彼女の背を追いかける中、研究者たちへ目を向けると、彼らは大きな紙へ数式のようなものを書き記していた。
机には鉱石のようなものが積み上げられ、何とも言えない臭いが鼻につく。
そんな中、ふとガチャガチャとの金属音に顔を向けると、そこは隠されるようにカーテンが引かれていた。
あの中で何をしているのかしら……?
そんな事を考えながらに進んで行くと、私たちは別の部屋へと案内される。
中へ入ると、部屋は円状になっており、中央には台座が設置されていた。
その上には手のリサイズの小さな箱がポツンと置かれ、周辺に薄っすらとだが魔法陣が浮かび上がっていた。
「えーでは、すでにご存じかもしれませんが、東と西の国ではこの箱に入るサイズの物を送ることが出来ます。そしてこれがその装置で~す。先日御見せした無線機も、最初はこの箱から送られてきたんですよ。ですがこれは東の国が作った物、まだこちらでは詳しく解明出来ておりません。そこで魔法使い様に見て頂きたいのですが、これが何かわかりますか~?」
彼女の言葉に私はゆっくり中央へ進んで行くと、じっと魔法陣を眺めてみる。
白い靄のように箱の周りに浮かび上がるそれは、蜃気楼のようにゆらゆら揺れていた。
どうやって物を送りあっているのか、壁を見てから女王様へ確認しようと思っていたけれど、手間が省けたわ。
そっと魔法陣へ顔を近づけてみると、強い魔力をヒシヒシと感じる。
魔法で作られた何かなのは間違いなさそう。
なら移転魔法の一種かしら……?
箱を見つめたままに考え込んでいると、ふとある疑問が浮かび上がった。
「ちょっと待って、確認したいことがあるんだけれど。これは東の国が作った物なのよね?なら最初はどうやってこれを送ったのかしら?魔法陣が描かれているようだけれど……」
「魔法陣ですか?どこに描かれているんですか?」
パトリシアは驚いた様子で私の隣へやってくると、覗き込むように箱を見つめた。
「ほら、箱の周りよ。薄っすらと霧のような光が見えるでしょ?」
彼女は箱を見つめたままに口を閉ざすと、静かに首を横に振った。
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