[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

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第三章

旅の始まり⑤

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現れた男へ視線をあわせると、彼の威圧感に自然と体が震えていた。
そんな私の様子に男はニヤリと口角を上げると、笑みを深めながらズカズカと部屋の中へとやってくる。
そんな男の後ろには、卑しい笑みを浮かべた骨董店の店主が、私を見据えていた。

「あんたか、このネックレスを売りに来た女は」

男は先ほど宝石店で売ったネックレスを掲げると、私へと見せつける。
威圧するような低い声に私は何とか体の震えを抑え込むと、気取られない様、必死に顔を上げた。

「……えぇ、そうだけれど。それが何か……?」

そう冷たく言い放つと、男は楽しそうに私を見下ろした。

「ほぅ……あんた、何も知らないのか。これは王宮……しかもかなり位の高い奴じゃないと持てない貴重なネックレスだ。ほらみろ、チェーンに刻印がほられているだろう?あんたこれをどこで手に入れた?こんな代物は、簡単に市場へ出回るはずがない。もちろん家から出てくる物でもない。……お前はなにもんだ。城の回し者か?」

えぇっ……あのネックレスに刻印なんて入っていたの!?
あぁ……まずいわねぇ……なんて誤魔化そうかしら……。
私は押し黙るように口を閉ざすと、気まずげに視線を落とした。

「どこで手に入れたのかは話せないけれど、私は城の回し者ではないわ」

そう話すと厳つい男は徐に手を伸ばしたかと思うと、グイッと私の顎を持ち上げた。
サファイアの様に輝く瞳にじっと見据えられる中、私は拳を強く握りしめると、恐怖を悟られない様に睨みつける。

「ふんっ……威勢がお嬢ちゃんだ。気に入った、あんた俺の女にならないか?」

「なるはずないでしょう」

そうバッサリと切り捨てると、私は顎にかかる手を強く振り払う。
そんな私の様子に男は肩を揺らしクツクツと笑い始めた。

「ははっ、気の強い女は嫌いじゃねぇが……。よしっ、ならあんたに選ばせてやるよ。ここで俺の女になるか……売られて娼婦に落ちるか……さぁ選べ」

脅す様な低い声に思わず肩が大きく跳ねた。
男は余裕の笑みを浮かべながら腕を上げると、彼の後ろからガタイの良い3人の男が部屋へと踏み込んでくる。
ジリジリと距離を詰めてくる男達から、ゆっくりゆっくりと後退っていると、突然目の前にダレルが私を庇う様に飛び出してきた。

「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ!約束が違うじゃない!、彼女には何もしないっていたじゃない!!」

「うるせぇ、退けろ」

男は軽々と払いのけると、ダレルの体が後方へ大きく吹き飛ばされる。
私は慌ててダレルへ手を伸ばすと、彼女を庇う様、一緒に床へと倒れ込んだ。
背中に鈍い痛みが走る中、ダレルは慌てて私から体を離すと、今にも泣きそうな表情を浮かべ私を見つめていた。

「あなたどうして……?」

「私は大丈夫。だからここに居て」

私はそう無理矢理に笑みを返すと、ゆっくりと立ち上がり、破落戸共の前へと進み出る。
卑しい笑みを浮かべ近づいてくる男達を一瞥する中、その後ろからさっさと選べ、と言わんばかりに、厳つい男が鋭い目で訴えかけてきていた。
こんなところで、捕えられるわけにはいかないわ。
私は大きく息を吸い込みそっと瞳を閉じると、体に廻る魔力を少しずつ足元へ集めていく。
イメージを鮮明に……あいつらを全て取り押さえる……。
床を静かに這っていく蔦をイメージし、私は男たちに気取られない様、慎重に慎重に魔力を流していく。

「はっ、さっきの威勢はどうしたんだ、もう降参か?」

男のクツクツとした笑い声が耳に届く中、蔦をは男たちの足の傍までのばしていた。
今だわ……。
私はパチッと目を見開くと、男達に蔦を絡ませ捕縛していく。
武器を持っている可能性もあるので、蔦を一気に放出し男達に隙を与えない様、グルグル巻きに拘束していった。

「うわっ、何だこれ!!おぃっ、ぎゃっあああ」

「一体どこからっ、離れろ!!がぁっ、うぎゃぁ」

「いてぇっ、やめろ!!!くそっ、うわぁぁぁぁ」

煩い男どものを蔦で締め上げ身動きを取れなくすると、私は射抜くように顔に傷のある男を見据えた。

「私はあなたの女にもなるつもりはないし、娼婦に落とされる筋合いもないわ」

「……お前……魔導師か……」

顔に傷のある男は危険を察知したのか、いち早く部屋から出て行くと、蔦から逃れていた。
先ほどまで男の後ろにいたはずの骨董店の店主の姿も見当たらない。
追撃しようと蔦を向けるが……男は勢いよくバタンッと部屋の扉を閉めると、走り去っていく足音が耳に届く。
追いかけようと体を動かそうとした瞬間、ふと窓の外には先ほどよりも多くの破落戸たちが集まっている事に気が付いた。
深追いしないほうがよさそうね……。

私はウゥグググと唸り声を上げる男達三人を窓際へ運んでいくと、蔦を操り外へ放り投げる。
この程度の高さなら死にはしないでしょう。
パンパンと手を払い、一仕事終わった事にほっと胸をなでおろす中、部屋の隅にはダレルが唖然とした様子で座り込んでいた。
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