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第三章
旅の途中②
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肩から手を離したダレルはさりげなく私の手を取ると、誘う様に人込みの中へ紛れ込んでいく。
どこへいくのかわからぬまま連れられる中、ダレルはどんどん先へと進んでいった。
こっちは森と反対側よね……?
私は顔を上げダレルへ声をかけようとするが、人込みにのまれ、中々ダレルに声をかけることができない。
一体どこへ行くのかしら……?
どこへ行くのかもわからぬまま、背中を必死に追ってると、彼が突然立ち止まる。
その様子に私も慌てて立ち止まると、ダレルは見惚れるような笑みを浮かべながら、こちらへと振り向いた。
「ちょっとここで待っていて」
「えっ、ダレルさん!?」
彼は可愛くウィンクを浮かべると、私の手を離し、人込みの中へ紛れていく。
彼を引き留めようとした手は空を切り、次の瞬間には彼の姿はあっという間に見えなくなっていた。
私はその場で深く息を吐きだすと、通行の妨げにならぬよう道路の脇へと移動し、近くに会った壁へもたれかかった。
どうしたのかしら……?
でもまぁ……行ってしまったし、待つしかないわよね……。
流れゆく人波を呆然と眺めていると、通りを挟んだ向かい側にチラチラとこちらを覗う若い男二人の姿が映った。
何かしら?
こちらを覗いながらコソコソと何かを話す彼らに視線を向けていると、彼らニタリと笑みを浮かべながら、私の方へ近づいてきた。
「ねぇ~君一人?」
「俺らと一緒に遊ぼない?」
突然の言葉に唖然とすると、私は目を見開きその場に制止した。
この街でもナンパなんてあるのね……。
「ごめんなさい、知り合いを待っているので……」
そう丁寧に断りを口にするが、男達に引くどころか、グイグイと体を寄せ始める。
「おっ、その友達って女の子?なら俺ら二人だし丁度いいじゃん」
「だよな~、行こうぜ~」
一人の男が私の腕を掴むと、ニヤリと口角を上げた。
はぁ……鬱陶しいわね……。
「結構です。離して下さい!」
捕まれた手を強く振り払うと、男達は楽しそうな様子を見せた。
「ははっ、気の強い美人っていいよなぁ」
男はまた私の腕に手を伸ばすと、今度は先ほどとは違い、しっかりと握りしめられる。
鈍い痛みを手首に感じる中、私は無言のまま跳ね除けようと力を入れるが……先ほどとは違い中々引きはがすことが出来ない。
「あぁもう!私は行きません!離して!」
何度も手を振り払おうとするも、男はニタニタと楽しそうに笑い私を見下ろしている。
「えぇ~そう言わずに行こうぜ。なぁっ?」
強引に引っ張ろうとする力に必死に抗っていると、突然に割り込んできた別の手が、男の手を引きはがした。
「いてぇ、何だお前は」
「お前ら女が嫌がっているだろう!」
その声に顔を向けると、そこにはクルクルとカールした真っ青な髪に、サファイヤの瞳をした青年が佇んでいた。
まだあどけなさが残る青年は男たちを強く睨みつけると、小さな体で威嚇している。
この男の子……。
「このクソガキっ!!」
生意気な態度に男たちは顔を歪めると、青年へと腕を大きく振りかぶった。
「ちょっと、やめなさい!!」
ドカッ
私は咄嗟に青年を庇おうとした瞬間、彼の蹴りが男腹へと直撃した。
腕を振り上げていた男は悶絶するようにその場に蹲ると、痛みに顔を歪めている。
突然の事に唖然としていると、続くようにもう一人の男が青年へと殴りかかった。
青年はそれを軽く避けると、また鳩尾に蹴りをお見舞する。
「ぐはっっ……」
くぐもった声を上げながら倒れ込んだ男たちを横目に、私は青年へ顔を向けると、彼は一仕事終えたように余裕の笑みを浮かべていた。
その姿は私に治癒魔法を教えてくれた、(彼の姿)に重なった。
「あんた大丈夫?」
「えぇ……ありがとう。レッ……君も怪我はない?」
青年は当たり前だろうという表情を浮かべると、余裕の笑みを浮かべている。
「あんたこそ怪我はない?こんなところで一人で立っていると危ないぜ」
「えぇ、大丈夫よ。もう少しで知り合いが戻ってくるはずだから……」
そう笑みを浮かべると、青年安心した様子を見せる。
レックスって昔は結構悪ガキっぽいイメージだったのね。
でも女性に優しい所は変わっていない。
大人の彼と、今の彼を頭の中で描いていると、自然と笑みが零れ落ちる。
そんな時、人込みの中から燕尾服を着た男が青年へと、焦燥感に駆られる様子で走り寄ってきた。
「レックス様!!!また屋敷を抜け出して!!あぁぁぁ、またこんな喧嘩をして!!!」
燕尾服を着た男性は地面に倒れ込んでいる男たちの様子に嘆く中、レックスは飄々とした様子を見せる。
男達は腹を抑えたままレックスを睨みつけたかと思うと、慌てた様子でその場を立ち去っていく。
「うるせぇな~、俺は困っていた女を助けただけだ」
その言葉に燕尾服を男は私へ視線を向けると、その様子に私は慌てて頭を下げた。
「そうなんです。すみません、私が絡まれていたところを彼に助けてもらって……」
そう早口で説明すると、燕尾服を着た男性はなぜか深く息を吐きだした。
「はぁ……まぁいいでしょう。さぁ、レックス様帰りますよ」
執事はレックスの腕を強く握りしめると、そのまま人込みの中、嫌がる青年をひきつれたまま消えて行った。
そんな二人の呆然と眺めていると、街中にダレルの姿が視界を掠める。
ダレルは慌てた様子でこちらへ走り寄ってくると、片手には大きな紙袋を下げていた。
「ごめんなさい~遅くなっちゃったわね。はい、これ!この街一番の美味しいって有名なパンなの」
ダレルは私の前に紙袋を差し出すと、中からは香ばしいパンの匂いが漂ってくる。
その香りに思わず腹の虫がグ~と音をたてると、ダレルはクスクス笑っていた。
「ふふ、あそこのベンチで頂きましょう」
正直な腹の虫に恥ずかしさのあまり頭を垂れている中、ダレルは私の手を優しく取ると、そのままベンチへと誘っていった。
どこへいくのかわからぬまま連れられる中、ダレルはどんどん先へと進んでいった。
こっちは森と反対側よね……?
私は顔を上げダレルへ声をかけようとするが、人込みにのまれ、中々ダレルに声をかけることができない。
一体どこへ行くのかしら……?
どこへ行くのかもわからぬまま、背中を必死に追ってると、彼が突然立ち止まる。
その様子に私も慌てて立ち止まると、ダレルは見惚れるような笑みを浮かべながら、こちらへと振り向いた。
「ちょっとここで待っていて」
「えっ、ダレルさん!?」
彼は可愛くウィンクを浮かべると、私の手を離し、人込みの中へ紛れていく。
彼を引き留めようとした手は空を切り、次の瞬間には彼の姿はあっという間に見えなくなっていた。
私はその場で深く息を吐きだすと、通行の妨げにならぬよう道路の脇へと移動し、近くに会った壁へもたれかかった。
どうしたのかしら……?
でもまぁ……行ってしまったし、待つしかないわよね……。
流れゆく人波を呆然と眺めていると、通りを挟んだ向かい側にチラチラとこちらを覗う若い男二人の姿が映った。
何かしら?
こちらを覗いながらコソコソと何かを話す彼らに視線を向けていると、彼らニタリと笑みを浮かべながら、私の方へ近づいてきた。
「ねぇ~君一人?」
「俺らと一緒に遊ぼない?」
突然の言葉に唖然とすると、私は目を見開きその場に制止した。
この街でもナンパなんてあるのね……。
「ごめんなさい、知り合いを待っているので……」
そう丁寧に断りを口にするが、男達に引くどころか、グイグイと体を寄せ始める。
「おっ、その友達って女の子?なら俺ら二人だし丁度いいじゃん」
「だよな~、行こうぜ~」
一人の男が私の腕を掴むと、ニヤリと口角を上げた。
はぁ……鬱陶しいわね……。
「結構です。離して下さい!」
捕まれた手を強く振り払うと、男達は楽しそうな様子を見せた。
「ははっ、気の強い美人っていいよなぁ」
男はまた私の腕に手を伸ばすと、今度は先ほどとは違い、しっかりと握りしめられる。
鈍い痛みを手首に感じる中、私は無言のまま跳ね除けようと力を入れるが……先ほどとは違い中々引きはがすことが出来ない。
「あぁもう!私は行きません!離して!」
何度も手を振り払おうとするも、男はニタニタと楽しそうに笑い私を見下ろしている。
「えぇ~そう言わずに行こうぜ。なぁっ?」
強引に引っ張ろうとする力に必死に抗っていると、突然に割り込んできた別の手が、男の手を引きはがした。
「いてぇ、何だお前は」
「お前ら女が嫌がっているだろう!」
その声に顔を向けると、そこにはクルクルとカールした真っ青な髪に、サファイヤの瞳をした青年が佇んでいた。
まだあどけなさが残る青年は男たちを強く睨みつけると、小さな体で威嚇している。
この男の子……。
「このクソガキっ!!」
生意気な態度に男たちは顔を歪めると、青年へと腕を大きく振りかぶった。
「ちょっと、やめなさい!!」
ドカッ
私は咄嗟に青年を庇おうとした瞬間、彼の蹴りが男腹へと直撃した。
腕を振り上げていた男は悶絶するようにその場に蹲ると、痛みに顔を歪めている。
突然の事に唖然としていると、続くようにもう一人の男が青年へと殴りかかった。
青年はそれを軽く避けると、また鳩尾に蹴りをお見舞する。
「ぐはっっ……」
くぐもった声を上げながら倒れ込んだ男たちを横目に、私は青年へ顔を向けると、彼は一仕事終えたように余裕の笑みを浮かべていた。
その姿は私に治癒魔法を教えてくれた、(彼の姿)に重なった。
「あんた大丈夫?」
「えぇ……ありがとう。レッ……君も怪我はない?」
青年は当たり前だろうという表情を浮かべると、余裕の笑みを浮かべている。
「あんたこそ怪我はない?こんなところで一人で立っていると危ないぜ」
「えぇ、大丈夫よ。もう少しで知り合いが戻ってくるはずだから……」
そう笑みを浮かべると、青年安心した様子を見せる。
レックスって昔は結構悪ガキっぽいイメージだったのね。
でも女性に優しい所は変わっていない。
大人の彼と、今の彼を頭の中で描いていると、自然と笑みが零れ落ちる。
そんな時、人込みの中から燕尾服を着た男が青年へと、焦燥感に駆られる様子で走り寄ってきた。
「レックス様!!!また屋敷を抜け出して!!あぁぁぁ、またこんな喧嘩をして!!!」
燕尾服を着た男性は地面に倒れ込んでいる男たちの様子に嘆く中、レックスは飄々とした様子を見せる。
男達は腹を抑えたままレックスを睨みつけたかと思うと、慌てた様子でその場を立ち去っていく。
「うるせぇな~、俺は困っていた女を助けただけだ」
その言葉に燕尾服を男は私へ視線を向けると、その様子に私は慌てて頭を下げた。
「そうなんです。すみません、私が絡まれていたところを彼に助けてもらって……」
そう早口で説明すると、燕尾服を着た男性はなぜか深く息を吐きだした。
「はぁ……まぁいいでしょう。さぁ、レックス様帰りますよ」
執事はレックスの腕を強く握りしめると、そのまま人込みの中、嫌がる青年をひきつれたまま消えて行った。
そんな二人の呆然と眺めていると、街中にダレルの姿が視界を掠める。
ダレルは慌てた様子でこちらへ走り寄ってくると、片手には大きな紙袋を下げていた。
「ごめんなさい~遅くなっちゃったわね。はい、これ!この街一番の美味しいって有名なパンなの」
ダレルは私の前に紙袋を差し出すと、中からは香ばしいパンの匂いが漂ってくる。
その香りに思わず腹の虫がグ~と音をたてると、ダレルはクスクス笑っていた。
「ふふ、あそこのベンチで頂きましょう」
正直な腹の虫に恥ずかしさのあまり頭を垂れている中、ダレルは私の手を優しく取ると、そのままベンチへと誘っていった。
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