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第三章
旅の真実②
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どんどん物が床へと積みあがっていく中、ふと見覚えのある物が視界を掠めた。
咄嗟に手を伸ばすと、山の中に埋もれていたそれをしっかりと握りしめ引っ張り出してみる。
これって……あの時貰ったスマホじゃない!
私はスマホを手にしたままその場を離れ、電源ボタンを押してみると、充電はなく、やはり電源は入らない。
魔女はこちらに気が付いた様子もなく、何かを探し続ける中、私は静かにスマホへ魔力を流していった。
スマホの画面がピカッと光ると、すぐに液晶をタップしていく。
電話帳やアプリ、それにファイルを開いてみるが……やはりデーターは何も残っていなかった。
このスマホには最初から何も入っていなかったのね……。
そういえば私が初めてスマホをつけたとき、トップ画面に大きなメモが貼られていたわね。
そしてそのメモを頼りに、私のスマホから《時空移転魔法》を見つけることができた。
確か……金髪の女性、私が魔女へ未来の私にこのスマホを渡してほしいと頼んだと言っていたけれど……。
今そのメモが貼られていない……という事は……あのメモを貼ったの私……?
そっと待ち受けに置いてあるメモをタップしてみると、見覚えのあるピンク色の付箋が現れる。
私は記憶をよびおこしながら、ゆっくりとフリックで文字を入力していくと、この世界にはない文字が浮かび上がった。
確かあの時見た言葉は……。
あなたの……スマホの……えーと、画像データーを見ると良いわ。
「あったわぁ~!」
ポチポチと入力を終えた瞬間、魔女はニコニコとした様子で私へと振り向いた。
すると手にしてたスマホを見て、彼女はパッと目を輝かせながら私の傍へと走り寄ってくる。
「あら、あなた……あぁ~、それって異世界の物だったのねぇ。どおりで私が触っても何の反応もしないわけねぇ~」
魔女は探していたのだろう、スーパーボールほどの小さな水晶玉を片手に、興味津々の様子でスマホの画面を覗き込んだ。
私の真似をして画面を指先でつつく彼女の姿が昔……タクミが初めてスマホ触った時と重なり、思わず笑みが零れ落ちる。
彼も私の世界に存在していた機械とか、科学とかに興味津々だったわ……。
「それ~、ついこの間、屋敷の外へ落ちてきたのよね~。面白そうな物だったから持ち帰ってきたはいいんだけれど、うんともすんとも言わなくてぇ~。ふふっ、これは一体何なのかしら?それに見た事のない文字ね、これはあなたの国の言葉……?」
「はい。……これは電話じゃなくて……えーと、離れた人と話をするための道具なの」
私はメモをそのままに魔女の前へスマホを差し出して見せると、スライドし画面を切り替えていく。
アプリの一覧を開き並んだアイコンをジロジロと眺めたかと思うと、魔女は感嘆とした声を漏らした。
「へぇ~、すごいわねぇ~。でも離れた人と話すのに、魔法は使わないの?そっちの方が楽でしょう~」
「あっ、私の居た世界には魔法はなかったので……こういった物を使って生活してました」
魔女は私の言葉に大きく目を見開くと、ジロジロと興味深げに私の姿を眺め始めた。
「なら……あなたはどうしてそれほどの魔力を持っているの?それに命に別状はないようだけれど、呪符魔法も植え付けられているじゃない」
その言葉に私は口を閉ざすと、気まずげに魔女から目を反らせる。
「この呪符は私自身にもわからないんです。この世界に来た時にはもうすでにあったので……」
魔女は私の首筋へ触れると、何かに気が付いたのか……ニヤリと口角を上げた。
「ふ~ん、珍しい呪符ね……。それよりも、ふふっ魔法使わなくても、これは指で叩くだけで動くのね、面白いわ~」
魔女は私からスマホを取り上げると、魔力の流れが遮断されたため、スマホの電源が落ちた。
画面が真っ黒になり、タップしても動かない事に魔女は眉間に皺を寄せると、突っ返す様にスマホを私へと差し出した。
「これは私が持っていても意味がないようだから、あなたにあげるわ~」
「えっ!?あっ、なら……このスマホをいつかこの迷宮の屋敷へ来る、黒髪で黒い瞳をした女性に渡してもらえないでしょうか?」
魔女は私の言葉に訝し気な視線を浮かべると、考え込むような素振りを見せる。
ブツブツと独り言をつぶやくと、そっと顔を持ち上げた。
「これはスマホと言うのね~、ふふふっ変な名前。さてどうしようかしらねぇ~、まぁ覚えていれば渡してあげるわぁ~」
素っ気ない回答に私は魔女の腕を掴むと、スマホを棚へと片づけようとした彼女を引き留める。
「あの、きっとその女性から、あなたが欲しがっていた聖獣のその………………をもらえるとおもうの。だからお願いします」
「あら、それも未来視?黒髪に黒い瞳の人間なんて見たことがないけれど……あなたが言う通り、その女が私に聖獣の精液をくれたら渡してあげてもいいわぁ~」
魔女は流し目で私を見つめると、艶やかな笑みを浮かべていた。
咄嗟に手を伸ばすと、山の中に埋もれていたそれをしっかりと握りしめ引っ張り出してみる。
これって……あの時貰ったスマホじゃない!
私はスマホを手にしたままその場を離れ、電源ボタンを押してみると、充電はなく、やはり電源は入らない。
魔女はこちらに気が付いた様子もなく、何かを探し続ける中、私は静かにスマホへ魔力を流していった。
スマホの画面がピカッと光ると、すぐに液晶をタップしていく。
電話帳やアプリ、それにファイルを開いてみるが……やはりデーターは何も残っていなかった。
このスマホには最初から何も入っていなかったのね……。
そういえば私が初めてスマホをつけたとき、トップ画面に大きなメモが貼られていたわね。
そしてそのメモを頼りに、私のスマホから《時空移転魔法》を見つけることができた。
確か……金髪の女性、私が魔女へ未来の私にこのスマホを渡してほしいと頼んだと言っていたけれど……。
今そのメモが貼られていない……という事は……あのメモを貼ったの私……?
そっと待ち受けに置いてあるメモをタップしてみると、見覚えのあるピンク色の付箋が現れる。
私は記憶をよびおこしながら、ゆっくりとフリックで文字を入力していくと、この世界にはない文字が浮かび上がった。
確かあの時見た言葉は……。
あなたの……スマホの……えーと、画像データーを見ると良いわ。
「あったわぁ~!」
ポチポチと入力を終えた瞬間、魔女はニコニコとした様子で私へと振り向いた。
すると手にしてたスマホを見て、彼女はパッと目を輝かせながら私の傍へと走り寄ってくる。
「あら、あなた……あぁ~、それって異世界の物だったのねぇ。どおりで私が触っても何の反応もしないわけねぇ~」
魔女は探していたのだろう、スーパーボールほどの小さな水晶玉を片手に、興味津々の様子でスマホの画面を覗き込んだ。
私の真似をして画面を指先でつつく彼女の姿が昔……タクミが初めてスマホ触った時と重なり、思わず笑みが零れ落ちる。
彼も私の世界に存在していた機械とか、科学とかに興味津々だったわ……。
「それ~、ついこの間、屋敷の外へ落ちてきたのよね~。面白そうな物だったから持ち帰ってきたはいいんだけれど、うんともすんとも言わなくてぇ~。ふふっ、これは一体何なのかしら?それに見た事のない文字ね、これはあなたの国の言葉……?」
「はい。……これは電話じゃなくて……えーと、離れた人と話をするための道具なの」
私はメモをそのままに魔女の前へスマホを差し出して見せると、スライドし画面を切り替えていく。
アプリの一覧を開き並んだアイコンをジロジロと眺めたかと思うと、魔女は感嘆とした声を漏らした。
「へぇ~、すごいわねぇ~。でも離れた人と話すのに、魔法は使わないの?そっちの方が楽でしょう~」
「あっ、私の居た世界には魔法はなかったので……こういった物を使って生活してました」
魔女は私の言葉に大きく目を見開くと、ジロジロと興味深げに私の姿を眺め始めた。
「なら……あなたはどうしてそれほどの魔力を持っているの?それに命に別状はないようだけれど、呪符魔法も植え付けられているじゃない」
その言葉に私は口を閉ざすと、気まずげに魔女から目を反らせる。
「この呪符は私自身にもわからないんです。この世界に来た時にはもうすでにあったので……」
魔女は私の首筋へ触れると、何かに気が付いたのか……ニヤリと口角を上げた。
「ふ~ん、珍しい呪符ね……。それよりも、ふふっ魔法使わなくても、これは指で叩くだけで動くのね、面白いわ~」
魔女は私からスマホを取り上げると、魔力の流れが遮断されたため、スマホの電源が落ちた。
画面が真っ黒になり、タップしても動かない事に魔女は眉間に皺を寄せると、突っ返す様にスマホを私へと差し出した。
「これは私が持っていても意味がないようだから、あなたにあげるわ~」
「えっ!?あっ、なら……このスマホをいつかこの迷宮の屋敷へ来る、黒髪で黒い瞳をした女性に渡してもらえないでしょうか?」
魔女は私の言葉に訝し気な視線を浮かべると、考え込むような素振りを見せる。
ブツブツと独り言をつぶやくと、そっと顔を持ち上げた。
「これはスマホと言うのね~、ふふふっ変な名前。さてどうしようかしらねぇ~、まぁ覚えていれば渡してあげるわぁ~」
素っ気ない回答に私は魔女の腕を掴むと、スマホを棚へと片づけようとした彼女を引き留める。
「あの、きっとその女性から、あなたが欲しがっていた聖獣のその………………をもらえるとおもうの。だからお願いします」
「あら、それも未来視?黒髪に黒い瞳の人間なんて見たことがないけれど……あなたが言う通り、その女が私に聖獣の精液をくれたら渡してあげてもいいわぁ~」
魔女は流し目で私を見つめると、艶やかな笑みを浮かべていた。
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