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そんなわけで本日、約束の時間通りにディルハムが我が家にやってきた。
天気は快晴。
せっかくだからと思い、ディルハムをテラスの方へ案内する。
2年前よりも少し大人びた姿で現れた彼は、原作のディナール様そのもので、ついつい見惚れてしまった。
今日のディルハムはなんだか機嫌も悪くはないようで、話をするには絶好の日のような気がした。
メイドがディルハムのティーカップに紅茶を注ぎ終え、屋敷のほうへ戻ったところで、私は口を開く。
「私、覚悟はできておりますの」
「……なんのことだ?」
「しらじらしいことをおっしゃらないでください。婚約破棄の件ですわ」
「……だから、何の話だ」
「ですから、あなたと私の婚約破棄の話ですわ!」
「だから!一体何の話だ!」
「ですから、婚約破棄の話だと申しておりますでしょう」
「だから、…………わかった。そんな話をどこから聞いたのかはわからないが、俺はルビーと婚約破棄をするつもりはない。これでこの件は解決だな」
そういうと、ディルハムは溜息をつき、出された紅茶を口に含んだ。
だけど、私としてはこんな適当な解決の仕方は納得ができるわけがなかった。
溜息をつきたいのはこちらのほうである。
「解決ではありません。未解決ですわ」
「……わかった、わかった。とにかく、どういう経緯でそんな口に出したくもないようなことを考え付いたのか言え。それから考えてやるから」
「ディルハム様、あなたは隣国の姫様のことがお好きでしょう?だから、私、別れて差し上げてもよろしいですわよ、って話しですの」
断罪イベントなんて真っ平ごめんだ。良いことなんて何一つない。
それならこちらから提案し、先に王子の方から婚約を解消してもらうのが一番だ。
誰もが思いつくけどわかりやすい解決法だ。と思ってうんうん、とうなずくけど、ディルハムはそんな私を呆れたように見つめ、溜息をついた。
「アデールのことは好きとか嫌いとかそういう存在じゃない」
「でも、あんなに丁寧な対応をしていたではありませんの」
「相手は他国の姫だぞ。丁寧な対応をして当たり前だろう。それにアデールには向こうで世話になったんだ。今度はこちらが尽くす番だろう」
「それでもあんなにべったりすることはないじゃないですの!」
思わず大きな声をだしてしまい、私は慌てて口を閉じた。淑女として今のはあまりにもはしたない行為だ。反省する。
だけど、この場が妙に静かなのでちらりとディルハムのほうを確認すると、驚いたように目を見開いて私を見ていた。
そんなにはしたなかっただろうか。
確かにいままで私はディルハムの前ではディナール様以外のことで興奮……えーっと、ちょっとテンションが上がった感じで話したことはない。
だからって驚きすぎだと思うのだけれど。
どれだけ私を完璧な令嬢だと思っているのかしら。
これでも前世の影響でだいぶ思考回路が平民じみていると思うのだけれど。
「ごめんなさい。騒いでしまって。とにかく、私はいつでも婚約の解消を受け入れる覚悟があるということをわかってほしいんですの。聞いています?ディルハム様」
そういって念を押すように、私が改めて婚約破棄の件を取り出すと、ディルハムは眉間に皺をよせた。
「聞いている」
ディルハムは自分のカップの中身を一気に飲みほし、立ち上がった。
「婚約の解消はしないし、俺はアデール姫のことをそういった意味で愛してもいない。俺はどんなにお前が嫌がろうと必ずお前と結婚する。話はこれで終わりだ。この後予定があるから俺はもう行く。まだ何かあるなら、また手紙を寄越せ。」
そう言ってディルハムは帰っていった。
天気は快晴。
せっかくだからと思い、ディルハムをテラスの方へ案内する。
2年前よりも少し大人びた姿で現れた彼は、原作のディナール様そのもので、ついつい見惚れてしまった。
今日のディルハムはなんだか機嫌も悪くはないようで、話をするには絶好の日のような気がした。
メイドがディルハムのティーカップに紅茶を注ぎ終え、屋敷のほうへ戻ったところで、私は口を開く。
「私、覚悟はできておりますの」
「……なんのことだ?」
「しらじらしいことをおっしゃらないでください。婚約破棄の件ですわ」
「……だから、何の話だ」
「ですから、あなたと私の婚約破棄の話ですわ!」
「だから!一体何の話だ!」
「ですから、婚約破棄の話だと申しておりますでしょう」
「だから、…………わかった。そんな話をどこから聞いたのかはわからないが、俺はルビーと婚約破棄をするつもりはない。これでこの件は解決だな」
そういうと、ディルハムは溜息をつき、出された紅茶を口に含んだ。
だけど、私としてはこんな適当な解決の仕方は納得ができるわけがなかった。
溜息をつきたいのはこちらのほうである。
「解決ではありません。未解決ですわ」
「……わかった、わかった。とにかく、どういう経緯でそんな口に出したくもないようなことを考え付いたのか言え。それから考えてやるから」
「ディルハム様、あなたは隣国の姫様のことがお好きでしょう?だから、私、別れて差し上げてもよろしいですわよ、って話しですの」
断罪イベントなんて真っ平ごめんだ。良いことなんて何一つない。
それならこちらから提案し、先に王子の方から婚約を解消してもらうのが一番だ。
誰もが思いつくけどわかりやすい解決法だ。と思ってうんうん、とうなずくけど、ディルハムはそんな私を呆れたように見つめ、溜息をついた。
「アデールのことは好きとか嫌いとかそういう存在じゃない」
「でも、あんなに丁寧な対応をしていたではありませんの」
「相手は他国の姫だぞ。丁寧な対応をして当たり前だろう。それにアデールには向こうで世話になったんだ。今度はこちらが尽くす番だろう」
「それでもあんなにべったりすることはないじゃないですの!」
思わず大きな声をだしてしまい、私は慌てて口を閉じた。淑女として今のはあまりにもはしたない行為だ。反省する。
だけど、この場が妙に静かなのでちらりとディルハムのほうを確認すると、驚いたように目を見開いて私を見ていた。
そんなにはしたなかっただろうか。
確かにいままで私はディルハムの前ではディナール様以外のことで興奮……えーっと、ちょっとテンションが上がった感じで話したことはない。
だからって驚きすぎだと思うのだけれど。
どれだけ私を完璧な令嬢だと思っているのかしら。
これでも前世の影響でだいぶ思考回路が平民じみていると思うのだけれど。
「ごめんなさい。騒いでしまって。とにかく、私はいつでも婚約の解消を受け入れる覚悟があるということをわかってほしいんですの。聞いています?ディルハム様」
そういって念を押すように、私が改めて婚約破棄の件を取り出すと、ディルハムは眉間に皺をよせた。
「聞いている」
ディルハムは自分のカップの中身を一気に飲みほし、立ち上がった。
「婚約の解消はしないし、俺はアデール姫のことをそういった意味で愛してもいない。俺はどんなにお前が嫌がろうと必ずお前と結婚する。話はこれで終わりだ。この後予定があるから俺はもう行く。まだ何かあるなら、また手紙を寄越せ。」
そう言ってディルハムは帰っていった。
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