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3章

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 前々作の「転生して王子になったボクは、王様になるまでノラリクラリと生きるはずだった」のオマケ話も更新始めました。
(エロ多めですので背後に注意です)
 そちらも読んでいただけると嬉しいです!


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「おやすみ」

 遠くに村の明かりが見える山の上の場所。
 以前アルゼを連れてきたこともあるこの場所に俺は小さな小屋を建てた。

 アルゼが村へと連れていいかれたあの日から俺はここを動けなかった。

 もしかして戻ってくるんじゃないか--------

 もしかしたら逃げ帰ってくるかもしれない--------


 願望ともいえる妄想が頭から離れず村の方向をずっと見つめていた数日。
 諦めが侵食してきてもここを訪れ村を見るのをやめることが出来なくて、家にいても落ち着かずいつの間にかここで寝起きするようになっていた。

 両親もよくここに来ていた。
 俺にとっては単なる遊び場の1つだった。
 あの頃はわからなかったが両親は村を見ていたんじゃなく、村にいる会えない肉親に想いを寄せていたんだ。

 昼間、畑の世話をしに家に戻るが誰もいない家の中はガランとしていて胸が苦しくなる。
 いないとわかっているのにアルゼを呼んでしまう。
 当たり前だがアルゼがいなくなってから寄ってくる動物や鳥はいなくなった。

(もともとこうだっただろう)


 独りぼっちだった俺がまた一人に戻っただけ--------


 だと言うのにこのつらさはなんだろう

 独りぼっちがこんなに孤独だったか?
 両親が死んだ後、誰とも会話せずに一人で死んでいくんだと思った。
 独り言が癖になるほどに寂しくはあったが仕方がないと諦めてもいた。

 アイツがいなくなって、いつでも肉が食える隠れて食う必要もないというのに、ボーラ投げ縄を手に動物を捕まえようとしても投げる寸前にアイツの悲しそうな顔が浮かんで投げれなかった。

 アルゼの小屋を覗いてもいるはずがないのに覗いてしまう。

(一緒に寝てやればよかった)

 人化してからアルゼを性の対象と見てしまう自分が恐ろしくて一緒に寝ることが出来なかった。

『ごえんあさい』

 俺の寝床にもぐりこんでいた後、あんなに謝っていたのに俺はこの小屋を建てた。

(こんなに早く離れる日がくるとわかっていたら…)

 畑の世話をしていても思い出すのはアルゼの事ばかり。
 この苗を植えた時、黄金色の甘い実がなると教えたらアイツは涎を垂らさんばかりに瞳をキラキラさせて苗を撫でていたっけ。

(食べさせたかったな)

 家にいると思い出が押し寄せ胸が苦しくなり逃げるように山上の小屋へと戻った。
 そのうちに俺は家に戻るのをやめた。

 俺が誰からも忌避される存在だともうアルゼに知られてしまったんだ--------

 今頃アイツは俺の事なんて忘れて、ここにいた時よりももっと美味しいものを食べ、綺麗な衣服を着てみんなに愛されて村で楽しく暮らしているだろう。

 どうせ独りぼっちなんだから旅に出るのもいいかもしれないと考えた時、死んでしまった交易の女を思い出した。

(旅をしたところで出会う人を怖がらせ逃げられるだけか…)

 乾いた笑いが漏れる。

 あぁ、俺はまだ笑えるんだな--------

 元に戻っただけだ。
 この生活に慣れるしかないんだと自分に言い聞かせた。





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