異世界ハーレム漫遊記

けんもも

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第五章 魔物の森の変革期編

エルフ王国の国王の陰謀

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「何?第二遠征隊からの連絡が途絶えた?」

「はい、マザータランチュアの洞窟の前で、黒目黒髪の謎の人族と遭遇した後、急に連絡が途絶えております。謎の人物のパーティーと思われる、兎族の少女、忌k・・・ハーフエルフの幼女、同じく黒目黒髪の少女2人、赤髪の幼女の5人を確認しております。」

「何があったのだ。現地へは調査に向かったか?」

「はい、すでに遠征隊団長が精鋭を連れて出発しています。」

「何と言うことだ。皇太子だぞ。行方不明になりましたでは済まされない。国王になんと報告すれば。一番、安全な第二遠征隊の隊長につけていたのに。そもそもなんで、第二遠征隊が、マザータランチュアの洞窟のある、あんな奥地に行っていたのだ。誰の許可だ。」

「師団長殿、実は、今回の遠征は皇太子陛下の独断でして。昨日の第一遠征隊のゴブリンロードの単独討伐の話を聞かれまして、現在、確認されている魔物のコロニーの情報を提出するように情報部に指示されて、マザータランチュアの討伐に向かわれたようです。」

「なんと無謀なことを。我々では対処できないから、遠目からの状態観察対象にしておったのに。どのみち、隊の中だけで処理できることではない。私は、すぐに参謀本部に行ってくる。団長から連絡があったら、そっちへ回してくれ。」

半日後、参謀本部で、極秘裏に上級将校のみで緊急会議が行われた。

「参謀長官、実に由々しき事態が発生いたしました。本日午前10時頃、第二遠征隊隊長以下14名が、魔の森マザータランチュアの洞窟に向かい、当洞窟の前で何者かと交戦後全員死亡した模様です。尚、第二遠征隊隊長と思われる跡が見つかっておりますが、隊長の遺体だけは確認されておりません。また隊員全ての所持品並びに装備は持ち去られております。」

「司令官、ここは秘密会議だ、記録も取っておらん。ざっくばらんに述べよ。皇太子は死亡しているのか?何者かに連れ去られておるのか?」

「私も、先ほど遠征隊団長より念話石で報告を受けただけですので、詳細は解りかねますが、団長の報告をそのままお伝えしますと、皇太子だったと思われる遺体が、頭から大きな力でつぶされたような状況で、洞窟の前で見つかったそうです。装備ごと、そのまま頭から、完全に押しつぶされていたと。他の隊員は、全てその後ろに隊列を組んだまま一撃で殺されていたようで、その所持品、装備だけが綺麗になくなっているということです。さらに報告ではマザータランチュアの洞窟は魔物が殲滅された跡があるものの一体も見つけられなかったと。尚、洞窟の最奥には、マザータランチュアの巣があったと思われる場所で、戦闘の跡はあったものの、マザータランチュアの気配はなく、討伐されたものと思われる。以上です。」

会議に集まった者は、誰も声を出さなかった。その報告があまりにも長命と豊富な知識を持っていることを誇っているエルフの重鎮たちを持ってしても、常識を越えた話だったからだ。

「信じられん。」

参謀長官がそう言うのがやっとだ。
それでも気を取り直して

「まずは、ことの真偽を確かめなくてはならん。他国による皇太子の誘拐ではなかったことは、ある意味行幸ではあるが、わがエルフ国の皇太子を殺害されたとすれば、国家として相応の対応をせねばならん。問題は、その相手が何者であるかということ。そしてその者の力が、マザータランチュアを巣ごと殲滅できる力をもっておること。皇太子の死亡が報告の通りであったとすれば、我々の知らない力を持っておると言うこと。これらを正確に読み説かねば、わがエルフ国の存亡にかかわる。この世に我らが知らぬ知識があってはならん。われわれは全てを知っておかねばならんのだ。
団長は、明日には戻れるな?明日の夕方、団長から詳細な報告を受けて、夜、御前で王の判断を仰ごう。」

その日は、それで終わった。

翌日の夕方、二回目の秘密会議が開かれた。

「まず、私が、見てきたことを報告します。
皇太子陛下が連絡不能になったと報告を受け、精鋭3名を連れて私が捜索に向かいました。魔物とのエンカウントは無視し、最短距離でマザータランチュアの洞窟に辿りつきました。洞窟の前は、静けさにつ包まれており、周囲数キロにわたって魔物の反応が全くありませんでした。魔物どころか空の鳥も生物の反応が消えていました。
洞窟の前には捜索陣形を保った、第二遠征隊の隊員の遺体がありました。14名全員が、それぞれ異なる方法で一撃を加えられ、死亡しておりました。奇妙なことに身につけていたと思われる装備や武器、アイテムボックスに入っていたはずの遠征に必要な物品が全てなくなっていました。本当に全てです。しかも剥ぎ取った感じではなく、装備だけが忽然と剥ぎ取られていました。
隊員の先頭に、隊長である皇太子が立っていたであろう場所には、窪んだ地面に押しつけられて潰れたような何かがありました。よくよく見て、潰れたものを取りあげてみると、衣服が垂れたのです。おそらく押し付けられていた衣服が取りあげた時に、延ばされたのでしょう。そこでもう一度確認すると、それが人の押しつぶされた跡だと解ったのです。他の隊員の遺体はその場に残し、回収隊に指示し回収に向かわせております。皇太子と思われる遺体については、こちらにお持ちしています。」

そう言って、箱を取り出し、会議に集まった面々に見せた。そういう報告がなければ、遺体とは解らないものだった。軽甲冑とはいえ、それなりの硬度のある甲冑でさえ、その原型を全く留めていなかった。

「これが、これがそうだと言うのか・・・」

「報告を続けますが、我々も、マザータランチュアの洞窟にこれほど近づいたことはありません。しかし、洞窟から全く魔物の反応がないため、慎重に洞窟内に進みました。洞窟内は、戦闘の跡は見れますが、全く魔物の反応はなく、洞窟の最奥部、一番広くなった場所に、マザータランチュアがいたらしい跡と戦闘の跡を見つけましたが、マザータランチュアの死体も気配もありませんでした。こちらが、最奥の間で見つけた、マザータランチュアの糸です。」

「そう言って、別の箱を渡した。」

「団長、御苦労であった。昨日、念話石での報告を聞いた時、信じられない話だと思ったが、こうして現物をみるとその報告で間違いはあるまい。御苦労であった。尚、言わなくともわかっておると思うが、この度のことは全て最高機密扱いとなる。事情を知っている部下にも再度機密順守を徹底するように。」

この後、王を交えた話でも結論は出なかった。王も最初は激怒したが仮に皇太子を殺した相手をエルフ国として指名手配した場合、未知の相手に対して国家として敵対することになる。それは国家として非常に悪手であると、参謀長官から進言され長老会でもこの意見が採用されたためである。自分達の知らない殺害方法。自分達の英知を集めても討伐などできなかった魔物を全滅させる未知の力。それを行使したのが1人の人族の少年と5人のさまざまな種族の少女達であったこと。たったそれだけの戦力でこれほどのことを成したとすれば、その少年少女を抱える国家なり組織がどれほどの力を持つのか、想像すらできない。そのように思ったからだ。

この決定に従っておれば、エルフ国もこれ以上の被害を出さずに済んだのに、この時の王は暗愚王であった。軍部を預かっていた者は知恵があったが、文官の側近が暗愚王にしてしまったのだ。

王は秘密裏に、側近を通じて、冒険者ギルドに対して、黒目黒髪の人族の討伐を依頼した。理由は、王城に忍び込み国宝の世界樹の杖を盗み出そうとしたという濡れ衣である。この世界樹の杖はエルフ族にとっては神器とみられており、これに手を出そうとした人族は極悪な奴といことがすんなり受け入れられたのである。
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