ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第八話父と娘、愛の死闘

20.アリスの告白

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その頃集中治療室ではアリスが懸命に癒しの魔法でエステルを癒していた。


「なんとか治療は終了しました」

「すまないアリス」


傍には宮廷医師も傍にいるが、重傷を負っているエステルは傷を治せても魔力の消費まで癒すのは一介の魔導士や医師では不可能だった。

この世界で唯一存在する光魔法の保持者ならではの治癒魔法でなくては救えなかった。


「傷は見た目ほど酷くありませんでした」

「そうか…」

「ただ、魔力の消費が酷すぎます…直ぐに目覚めればいいのですが」

光魔法を使い傷を癒そうとした時に感じたのは、普通は直ぐに意識を取り戻すのに未だ眠っている状態だということ。


「まさか、このまま目を覚まさないと?」

「そうは思いたくありませんが…」


アリスもそんな最悪な事態を想定したくないが、未だ目覚めないエステルに不安を感じる。


「ですが、傷も修復しましたし…眠っている状態です」

「命には別条はないということか」

「はい…自然に目覚めるのを持つのみなのですが」


なんらかの力が働き、エステルの目覚めを妨げていた。
その原因が解らないので手の施しようがなく、歯がゆく思っていた。


「クロード殿下、私は貴方が嫌いです」

「は?」

いきなり言われた言葉に驚くクロードにお構いなしだった。


「エステル様は私の天使様でした」

「えっ…」

「一人だった私に優しくしてくださり居場所をくださったのです。私にとって天使様でした」

平民でありながら光魔法を持つ所為で孤立し蔑まれ友達もいなかった。

けれど、エステルに出会い、弱い自分に打ち勝つことができた。
誰よりも傷つき、苦しみ、傷つくエステルは一度だって逃げなかった。

その強さに憧れ、隣に立つべく努力を重ねた。


「正直貴方が憎いです。大嫌いです」

「あっ…ああ」

「私のエステル様にさも当然のように傍にいる貴方が大嫌いです」


アリスの言葉は容赦がなかったが、クロードは言い返す気にもなれなかった。


「でも、エステル様が一番大切に思うのは貴方です」

「アリス…」

「だからエステル様をお願いします」


大好きな人の心を奪っていく男が憎くて仕方なくても、大好きな人の愛する人だからこそアリスは頼んだ。


「エステル様はご自分の胸の内を誰も明かされない…お一人で抱え込まれる方です」

「ああ」

「もっと頼って欲しいと思っても、今の私が小さく弱いからできません」

今はまだ守られるだけかもしれないが、何時かエステルを守れるように強くなりたいと思っていた。


だから今は、エステルを守れるクロードに託した。


「エステル様をの心を守ってください」


「心を…?」

「エステル様は誰よりも不安定なお心を持たれてます。だからこそ壊れやすいお心を誰かが守らなくてはなりません」

その役目はアリスにもユランにもミシェルにもできない。


できるとしたらただ一人。


クロードしかいなかった。


「この約束を違えないでください」


「違える気は無い」

「もし破ったらスクラップです」

「おっ…おお」


冗談に聞こえず、アリスの目は本気マジだった。


「では、私は失礼します」

「えっ…ちょっと」

アリスは付き添いの医師の首を鷲掴みにして病室を出てい行く。


「何故我々まで」

「気を使ってください」


ズルズルと医療班を引きずり病室には二人だけとなるのだった。

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