ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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最終章運命の先

32.浄化の旋律

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封印の準備は整い、アリスは聖女としての能力を開花させた。


祈りの歌がすべてを包み込み、部屋から抜けて学園内を包み込んで行く。



「ぐぐ…ぐあぁぁぁぁ!」

光に目がくらみ悲鳴をあげるバルトーク公爵から悪魔切り離されるも器は限界だったのか灰も残らず消えてしまった。


『許さん聖女ぉぉぉ!』

実態を失い、気体となった悪魔ことエレボスはアリスに襲い掛かるも。

『ぎゃああああ!』

強い光に弾かれてしまう。

『無駄ですエレボス』

凛とした威厳のある口調で言い放つアリス。


「これは…アリスじゃないぞ」

「聖女エルキネスの魂がアリスの体に憑依してます」

クロードとエドワードはすぐにこの現象があの時と同じだと思った。


ロバートと戦い破れ、ピンチになった時のエステルと同じ現象だった。

『人の悪の心に入り、多くの人を苦しめた悪魔よ、今こそ封印します』

『悪だと?我ら悪魔を悪とするならお前達は正義とでも言いたいのか?欲望に囚われ実の娘ですら利用し、娘は母親を殺しても平気な者が悪ではないと?悪そのものが貴様等ではないか!』


エレボスの言っている言葉は間違いではなかった。
人間ほど欲が深い生き物はいないことをエルキネスもエステルも知っている。

『この世の悪があるとすれば人間だ。我らを利用しようとしたこの男のようにな!封印しても再び悪魔は生まれるだろう。我ら以上の悪魔…それが人間の心だ!』

「確かにそうでしょうね」

「エステル!」


誰もが沈黙を貫く中言葉を放ったのはエステルだった。

「人は弱くて浅はかで汚い。私利私欲のためにどんなことだってするのですから」

「止めろエステル!惑わされるな」

クロードが急いで止めようとするも、アルフォードは気づく。

「待ってください殿下」

「ええ、彼女は冷静です。惑わされていない」


エレボスに惑わされているのかとも思ったがエステルの瞳はまっすぐに前を向いている。


どことなくエレボスを哀れむような眼差しだった。


「人はとても弱い生き物です、他者を痛めつけ自分の守る為に力を振るう…その一方で一人では生きることができない。私達は傷つけられ傷つけてしまう…でもその中で手を取り合うこともできる」


どんな人間でも過ちを犯してしまうかかもしれない。
選択を間違えれば破滅の道に進み、闇の中で光の無い場所で心を閉ざしてしまう。


「エステル…」

ロバートは目を奪われる。
かつて暗闇の中で閉ざされた場所で苦しんでいた娘はどれだけの苦しみを受けて来たか。

光を求めても諦めなくてはならなかった。

けれど、今は違う。


「私達は間違っても間違いを正してくれる人がいる。何度間違えてもその間違いを繰り返さないようにすることだってできる!先を恐れては道は開けないわ…私は未来を信じている!」


光指す場所に出ることができたエステルはまぎれもなく光の下を歩いていた。

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