298 / 519
第18章 8 聞いておきたいこと
しおりを挟む
「ねぇ、亮平」
住宅街の中、大股で前を歩く亮平に声を掛けた。
「何だ?」
亮平は振り向くこともなく返事をする。
「何でお姉ちゃんは一緒に行かないの?ひょっとして一緒に温泉行こうって誘わなかったの?」
「いや、一応誘った。だけど行かないって忍が断ってきたんだ」
「そうなの?」
「ああ。忍はあんまり大勢人がいる場所にまだ行きたくないらしいんだ」
「そうなんだ…もう今までと変わりないように感じてたけど」
「まだ忍は完治していない。精神安定剤も欠かせないしな」
「…知らなかった」
「まあ、離れて暮らしているから分からなくても当然だな」
「ところで…ねえ。亮平」
「何だよ」
「どうしてさっきから前ばかり見てこっち見ないのよ」
するとこの時になって亮平はピタリと足を止めて振り返ると私を見た。
「お前…俺に何か話すこと無いか?」
「え?亮平に…話し?」
う~ん…何か話さなければならないことあったかな…?
「あ!そうだ、ある」
「言ってみろよ」
「話さなければならないことっていうか、聞きたいことがあるんだけど…」
「うん、言ってみろ」
何故か亮平の目が期待に満ちている?ように見えた。
「亮平は何日に家に泊まりに来るの?」
「…は?」
何故か亮平が落胆したように見えた。
「亮平も家に泊まりに来るって言ってたよね?何日に来るのかは聞いていなかったから」
「ああ…それなら明日泊まるんだよ。」
「え?いいの?年末年始はおじさんやおばさんたちと過ごさなくても」
「別にいーんだよ。大体俺たちいくつだと思ってるんだよ。ほら、行こうぜ」
亮平はそれだけ言うと、くるりと背を向けた。
「う、うん」
再び亮平は歩き初めたので、私はその後を追った。そして亮平の後ろ姿を見ながら思った。
違う。こんな事聞きたいわけじゃなかった。本当に聞きたかったのはお姉ちゃんとの事だった。さっき玄関先で見た2人の様子…恋人同士のようにはあまり見えなかった。亮平はお姉ちゃんと交際しているような素振りを見せていたけど…。
私は本当はこう、聞きたかった。
『亮平とお姉ちゃんは本当に今、恋人同士なの?』
と・・・。
****
スーパー銭湯に着いた私達は今、券売機の行列に並んでいた。
「やっぱり今日は普段より混んでるな~」
亮平は券売機に並ぶ列を見ながら言う。お客の半分以上は男性客で占めていた。
「男湯のほうが混んでいそうだね」
「ああ、そうだな。だけどあんまり女性客と違って風呂の中では長居しないんじゃないか?むしろサウナとか長いけどな」
「亮平、悪いけど…私はサウナには入らないから…」
「ああ、分かってるって。お前と一緒に来てるから俺も今夜はサウナには入らないさ」
「ありがとう」
交通事故に遭ってからはなんとなくサウナでのぼせたらいけない気がして、私はずっとサウナを避けていた。
ようやく券売機で2人分の入浴券を購入した亮平が言った。
「よし、それじゃ今7時半だから…待ち合わせは9時でいいか?」
「え?そんな長くなくていいよ。8時半で大丈夫だから」
「ああ、分かった。それじゃまたな」
「うん。またね」
亮平と手を振って別れると女湯へと向かった。
カコーン
洗面器の音が湯気立つ温泉に響き渡る。
「は~…やっぱり大きい温泉は気持ちいいな…」
そう言えば直人さんとお付き合いしている頃…一度も温泉に行った事無かった。もし今も付き合っていたら…年末年始は温泉旅行に行けてたのかな…。
ズキリとする胸の痛みを押さえて、身体が温まったので湯船を出た。
そして食事の時、私は亮平から問い詰められることになる―。
住宅街の中、大股で前を歩く亮平に声を掛けた。
「何だ?」
亮平は振り向くこともなく返事をする。
「何でお姉ちゃんは一緒に行かないの?ひょっとして一緒に温泉行こうって誘わなかったの?」
「いや、一応誘った。だけど行かないって忍が断ってきたんだ」
「そうなの?」
「ああ。忍はあんまり大勢人がいる場所にまだ行きたくないらしいんだ」
「そうなんだ…もう今までと変わりないように感じてたけど」
「まだ忍は完治していない。精神安定剤も欠かせないしな」
「…知らなかった」
「まあ、離れて暮らしているから分からなくても当然だな」
「ところで…ねえ。亮平」
「何だよ」
「どうしてさっきから前ばかり見てこっち見ないのよ」
するとこの時になって亮平はピタリと足を止めて振り返ると私を見た。
「お前…俺に何か話すこと無いか?」
「え?亮平に…話し?」
う~ん…何か話さなければならないことあったかな…?
「あ!そうだ、ある」
「言ってみろよ」
「話さなければならないことっていうか、聞きたいことがあるんだけど…」
「うん、言ってみろ」
何故か亮平の目が期待に満ちている?ように見えた。
「亮平は何日に家に泊まりに来るの?」
「…は?」
何故か亮平が落胆したように見えた。
「亮平も家に泊まりに来るって言ってたよね?何日に来るのかは聞いていなかったから」
「ああ…それなら明日泊まるんだよ。」
「え?いいの?年末年始はおじさんやおばさんたちと過ごさなくても」
「別にいーんだよ。大体俺たちいくつだと思ってるんだよ。ほら、行こうぜ」
亮平はそれだけ言うと、くるりと背を向けた。
「う、うん」
再び亮平は歩き初めたので、私はその後を追った。そして亮平の後ろ姿を見ながら思った。
違う。こんな事聞きたいわけじゃなかった。本当に聞きたかったのはお姉ちゃんとの事だった。さっき玄関先で見た2人の様子…恋人同士のようにはあまり見えなかった。亮平はお姉ちゃんと交際しているような素振りを見せていたけど…。
私は本当はこう、聞きたかった。
『亮平とお姉ちゃんは本当に今、恋人同士なの?』
と・・・。
****
スーパー銭湯に着いた私達は今、券売機の行列に並んでいた。
「やっぱり今日は普段より混んでるな~」
亮平は券売機に並ぶ列を見ながら言う。お客の半分以上は男性客で占めていた。
「男湯のほうが混んでいそうだね」
「ああ、そうだな。だけどあんまり女性客と違って風呂の中では長居しないんじゃないか?むしろサウナとか長いけどな」
「亮平、悪いけど…私はサウナには入らないから…」
「ああ、分かってるって。お前と一緒に来てるから俺も今夜はサウナには入らないさ」
「ありがとう」
交通事故に遭ってからはなんとなくサウナでのぼせたらいけない気がして、私はずっとサウナを避けていた。
ようやく券売機で2人分の入浴券を購入した亮平が言った。
「よし、それじゃ今7時半だから…待ち合わせは9時でいいか?」
「え?そんな長くなくていいよ。8時半で大丈夫だから」
「ああ、分かった。それじゃまたな」
「うん。またね」
亮平と手を振って別れると女湯へと向かった。
カコーン
洗面器の音が湯気立つ温泉に響き渡る。
「は~…やっぱり大きい温泉は気持ちいいな…」
そう言えば直人さんとお付き合いしている頃…一度も温泉に行った事無かった。もし今も付き合っていたら…年末年始は温泉旅行に行けてたのかな…。
ズキリとする胸の痛みを押さえて、身体が温まったので湯船を出た。
そして食事の時、私は亮平から問い詰められることになる―。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
755
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる