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第1章 32 私からの申し出
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「ねぇ、たっくんは…これからどうなるのかな?」
自室で拓也さんと2人、向い合せでコーヒーを飲みながら私は尋ねた。何となく彼に聞けばたっくんの事は何でも答えてくれそうな気がしたからだ。
「卓也は、今日は1日警察の方で預かって貰えるだろう。そして…明日からは取り敢えず児童養護施設に入れられる事になるだろうな」
案の定、拓也さんはスラスラと答えた。
「たっくん…。私が引き取りたかったのに…」
ポツリと言うと拓也さんが首を振った。
「いくら何でもそれは無理だ。だいたい独身女性では養子縁組する資格がないし、実の親の許可がいる」
「そんな…っ!あんな…あんな父親、たっくんを育てる権利は無いよっ!自分の子供に酷い暴力を振るうなんて…!父親が子供を殺しかねないような状況なら、そんなの適用されないんじゃないのっ?!」
ついつい、たっくんの事になると感情が高ぶってしまう。
「あ、彩花…」
拓也さんは困ったように私を見ている。
「あ…ご、ごめんなさい…。つ、つい…」
「いや…別にいいよ。それだけ、彩花が卓也のことを思ってくれているって証拠だろう?きっと…卓也は感謝しているよ」
私の頭を撫でながら拓也さんが声を掛けてくる。
「だけど…児相になんて…」
私はあの施設で育ったけれども…あまり良い思い出は無かった。
「私じゃ…どうあってもたっくんを引き取れないのね…?」
「…そうだな」
私が独身だからたっくんを引き取れないなら…目の前にいる拓也さんをじっと見た。
「彩花?どうした?」
拓也さんが首を傾げながら私を見てくる。
そうだ、ここに…最適な人がいる。確か彼には交際している女性がいなかったはず…。
「…ねぇ、拓也さん」
「ん?」
コーヒーを飲みながら拓也さんが返事をする。
「拓也さんは…。今、恋人はいないんだよね?」
「あ、ああ…。今はもう…いないよ」
その瞳は悲しげに揺れている。…きっと辛い別れをしたのかもしれない」
「ねぇ、それなら…私と結婚してくれる?」
「は…はぁっ?!」
拓也さんは驚きの顔で私を見た。
「あ、彩花…!い、一体何を言い出すんだよ!」
「お願い…私、たっくんを助けてあげたいの…。たっくんが18歳になるまでの間…書類上だけの結婚でいいから…私と結婚してもらえない?そうすればたっくんを引き取る事が出来るもの」
「あ、彩花…」
たっくんを引き取る為だけの偽装結婚の話をしているにも関わらず、拓也さんの顔が赤くなっている。
え…?何でそんな赤い顔をしているの?
けれど、そんな姿を見てしまえばこちらもつい拓也さんを意識してしまいそうになる。
「あ、あの…だ、駄目…かな…」
よくよく考えてみれば私は自分から男性にプロポーズをしていることになる。でも、それでも相手が拓也さんだから…私はこんな事が言い出せるのだ。
「彩花…」
けれど、次の瞬間…拓也さんの顔が一気に悲しげな表情に変わる。
え…?も、もしかして…そんなに私と結婚するのが…い、嫌なの…?
「ご、ごめんなさい…変な事…言って…。やっぱり…たっくんの養子縁組の話は…」
すると拓也さんが口を開いた。
「2ヶ月後…」
「え?」
「2ヶ月後の…6月9日に…返事してもいいかな?」
「え?6月9日…?それって…?」
「ああ、卓也の…誕生日だ。それを過ぎたら…養子縁組の話…しないか?」
「う、うん…いいよ」
私は拓也さんの言葉に頷いた―。
自室で拓也さんと2人、向い合せでコーヒーを飲みながら私は尋ねた。何となく彼に聞けばたっくんの事は何でも答えてくれそうな気がしたからだ。
「卓也は、今日は1日警察の方で預かって貰えるだろう。そして…明日からは取り敢えず児童養護施設に入れられる事になるだろうな」
案の定、拓也さんはスラスラと答えた。
「たっくん…。私が引き取りたかったのに…」
ポツリと言うと拓也さんが首を振った。
「いくら何でもそれは無理だ。だいたい独身女性では養子縁組する資格がないし、実の親の許可がいる」
「そんな…っ!あんな…あんな父親、たっくんを育てる権利は無いよっ!自分の子供に酷い暴力を振るうなんて…!父親が子供を殺しかねないような状況なら、そんなの適用されないんじゃないのっ?!」
ついつい、たっくんの事になると感情が高ぶってしまう。
「あ、彩花…」
拓也さんは困ったように私を見ている。
「あ…ご、ごめんなさい…。つ、つい…」
「いや…別にいいよ。それだけ、彩花が卓也のことを思ってくれているって証拠だろう?きっと…卓也は感謝しているよ」
私の頭を撫でながら拓也さんが声を掛けてくる。
「だけど…児相になんて…」
私はあの施設で育ったけれども…あまり良い思い出は無かった。
「私じゃ…どうあってもたっくんを引き取れないのね…?」
「…そうだな」
私が独身だからたっくんを引き取れないなら…目の前にいる拓也さんをじっと見た。
「彩花?どうした?」
拓也さんが首を傾げながら私を見てくる。
そうだ、ここに…最適な人がいる。確か彼には交際している女性がいなかったはず…。
「…ねぇ、拓也さん」
「ん?」
コーヒーを飲みながら拓也さんが返事をする。
「拓也さんは…。今、恋人はいないんだよね?」
「あ、ああ…。今はもう…いないよ」
その瞳は悲しげに揺れている。…きっと辛い別れをしたのかもしれない」
「ねぇ、それなら…私と結婚してくれる?」
「は…はぁっ?!」
拓也さんは驚きの顔で私を見た。
「あ、彩花…!い、一体何を言い出すんだよ!」
「お願い…私、たっくんを助けてあげたいの…。たっくんが18歳になるまでの間…書類上だけの結婚でいいから…私と結婚してもらえない?そうすればたっくんを引き取る事が出来るもの」
「あ、彩花…」
たっくんを引き取る為だけの偽装結婚の話をしているにも関わらず、拓也さんの顔が赤くなっている。
え…?何でそんな赤い顔をしているの?
けれど、そんな姿を見てしまえばこちらもつい拓也さんを意識してしまいそうになる。
「あ、あの…だ、駄目…かな…」
よくよく考えてみれば私は自分から男性にプロポーズをしていることになる。でも、それでも相手が拓也さんだから…私はこんな事が言い出せるのだ。
「彩花…」
けれど、次の瞬間…拓也さんの顔が一気に悲しげな表情に変わる。
え…?も、もしかして…そんなに私と結婚するのが…い、嫌なの…?
「ご、ごめんなさい…変な事…言って…。やっぱり…たっくんの養子縁組の話は…」
すると拓也さんが口を開いた。
「2ヶ月後…」
「え?」
「2ヶ月後の…6月9日に…返事してもいいかな?」
「え?6月9日…?それって…?」
「ああ、卓也の…誕生日だ。それを過ぎたら…養子縁組の話…しないか?」
「う、うん…いいよ」
私は拓也さんの言葉に頷いた―。
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