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第1章 44 たっくんとの時間と会えない人
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「今日は楽しかった~」
帰りのバスの中、たっくんは嬉しそうに言った。
「本当?私もとっても楽しかったよ」
「お姉ちゃん…僕、明日から頑張れそうだよ…新しい学校でも…」
たっくんがしんみり言った。
「たっくん…」
「だって、僕にはお姉ちゃんがついてるから」
たっくんは私に笑顔を向けてきた。
「うん、そうだよ。お姉ちゃんはいつだってたっくんの味方だよ。何があっても必ず守ってあげるから」
私はたっくんの頭を撫でた。
「僕も…僕もお姉ちゃんの味方だよ」
そして、不意に暗い表情に変わった。
「どうしたの?たっくん」
突然どうしたのだろう…?
「僕…早く大人になりたいよ…」
「え?」
「僕がまだ子供だから…お父さんに暴力を振るわれても何も出来ないし…お姉ちゃんだって助けてあげられない…」
その声には悔しさがにじみ出ているように感じた。
「たっくん…大丈夫だよ。大人になるのなんて、あっという間だよ。後10年もすれば、たっくんは20歳の大人になるんだから」
「お姉ちゃん…」
「それにね、今だって十分たっくんに助けて貰ってるよ?だってたっくんがいるから、こうして一緒にお出かけ出来るんだから。たっくんと一緒にいると、とても幸せを感じるもの」
「本当?!僕…僕、お姉ちゃんが大好きだよ」
「うん。私もたっくんが大好きだよ。また一緒にお出かけしようね?」
「うん!行くっ!」
そして私とたっくんはバスの中で指切りをした―。
****
15時50分―
予定時刻より10分早く私とたっくんは児童相談所に帰ってきた。
「お帰りなさい、ほぼ時間通りでしたね」
午前中に対応してくれた男性職員が私とたっくんを玄関まで出迎えてくれた。
「はい、間に合ってよかったです。それで…あの…また来週の土曜か日曜に面会に訪れても良いでしょうか?」
チラリとたっくんを見ながら尋ねた。
「ええ、いいですよ。卓也君も貴女によく懐いているようですし…」
「本当ですかっ?!ありがとうございますっ!」
また…たっくんに会える…!
「お姉ちゃん、また来週も来てくれるの?」
たっくんが手を繋いできた。
「うん、又来るよ」
「ありがとう!」
そしてたっくんは私に抱きついてきた。
「また来週来るから…それまで待っててね?」
私はたっくんの小さな背中を撫でながら言った―。
****
その後―
毎週土曜か日曜は必ず私はたっくんに会いに児童相談所へ足繁く通った。
あるときは土曜日にたっくんに会いに行き、アパートに連れ帰って泊めてあげることもあった。
一方、たっくんの方はあれ程不安がっていた新しい学校もすぐになれて、今では放課後一緒に遊ぶ友達も出来た。
私とたっくんの時は…穏やかに流れていき、季節は気づけば5月になっていた。
拓也さんとの連絡はあの夜以来、ずっと途絶えたままだった。
ひょっとすると、あの夜の出来事は私が見た夢だったのではないだろうかといつしか思い始めていた矢先…。
拓也さんは再び…私の前に現れた―。
帰りのバスの中、たっくんは嬉しそうに言った。
「本当?私もとっても楽しかったよ」
「お姉ちゃん…僕、明日から頑張れそうだよ…新しい学校でも…」
たっくんがしんみり言った。
「たっくん…」
「だって、僕にはお姉ちゃんがついてるから」
たっくんは私に笑顔を向けてきた。
「うん、そうだよ。お姉ちゃんはいつだってたっくんの味方だよ。何があっても必ず守ってあげるから」
私はたっくんの頭を撫でた。
「僕も…僕もお姉ちゃんの味方だよ」
そして、不意に暗い表情に変わった。
「どうしたの?たっくん」
突然どうしたのだろう…?
「僕…早く大人になりたいよ…」
「え?」
「僕がまだ子供だから…お父さんに暴力を振るわれても何も出来ないし…お姉ちゃんだって助けてあげられない…」
その声には悔しさがにじみ出ているように感じた。
「たっくん…大丈夫だよ。大人になるのなんて、あっという間だよ。後10年もすれば、たっくんは20歳の大人になるんだから」
「お姉ちゃん…」
「それにね、今だって十分たっくんに助けて貰ってるよ?だってたっくんがいるから、こうして一緒にお出かけ出来るんだから。たっくんと一緒にいると、とても幸せを感じるもの」
「本当?!僕…僕、お姉ちゃんが大好きだよ」
「うん。私もたっくんが大好きだよ。また一緒にお出かけしようね?」
「うん!行くっ!」
そして私とたっくんはバスの中で指切りをした―。
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15時50分―
予定時刻より10分早く私とたっくんは児童相談所に帰ってきた。
「お帰りなさい、ほぼ時間通りでしたね」
午前中に対応してくれた男性職員が私とたっくんを玄関まで出迎えてくれた。
「はい、間に合ってよかったです。それで…あの…また来週の土曜か日曜に面会に訪れても良いでしょうか?」
チラリとたっくんを見ながら尋ねた。
「ええ、いいですよ。卓也君も貴女によく懐いているようですし…」
「本当ですかっ?!ありがとうございますっ!」
また…たっくんに会える…!
「お姉ちゃん、また来週も来てくれるの?」
たっくんが手を繋いできた。
「うん、又来るよ」
「ありがとう!」
そしてたっくんは私に抱きついてきた。
「また来週来るから…それまで待っててね?」
私はたっくんの小さな背中を撫でながら言った―。
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その後―
毎週土曜か日曜は必ず私はたっくんに会いに児童相談所へ足繁く通った。
あるときは土曜日にたっくんに会いに行き、アパートに連れ帰って泊めてあげることもあった。
一方、たっくんの方はあれ程不安がっていた新しい学校もすぐになれて、今では放課後一緒に遊ぶ友達も出来た。
私とたっくんの時は…穏やかに流れていき、季節は気づけば5月になっていた。
拓也さんとの連絡はあの夜以来、ずっと途絶えたままだった。
ひょっとすると、あの夜の出来事は私が見た夢だったのではないだろうかといつしか思い始めていた矢先…。
拓也さんは再び…私の前に現れた―。
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