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第2章 8 研究の成果
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「教授、次元を超える方法…早く教えて下さいっ!」
思わず教授に詰め寄った。
「ああ、まぁ落ち着きなさい。私の緻密な計算により、戻りたい過去へ自由に設定出来る磁場発生装置が完成したんだよ。初めは人の大きさほどの装置だったが…みたまえ!研究に研究を重ね…この様な小型の装置を作ることが出来たのだよ」
宮田教授は引き出しの中から手のひらサイズのスピーカーのようなものを取り出すとテーブルの上に置いた。
中央には液晶画面が着いており、青く数字が表示されている。数字の下には4つのアイコンが並んでいた。
「教授?これは何ですか?」
磁場発生装置を見つめながら尋ねた。
「いいか?今画面に映し出されている数字…これが今の時間だ。西暦から年月日、そして時間がここに表示されている。分かるな?」
「ええ、勿論です」
「下のアイコンだが、まず一番左のアイコンはプラスとマイナス表示される。プラスは未来、マイナスは過去だ。そして隣のアイコンで何年前の何月何日、何時に戻りたいか設定する。そして…次のアイコン。これをタップすると磁場が発生するのだ」
「そうなのですね…」
思わずアイコンに触れようとした時…。
「おっと、まだ説明は終わっていない。だから勝手に触るなよ?いいかね?ここからが一番重要な話だ。よく聞きなさい」
「はい」
素直に頷く。
「君は平行世界のことは知っているだろう?」
「ええ、勿論ですよ。代替宇宙…いわゆるパラレルワールドのことですよね?ある世界から分岐して、それに並行して別の世界が存在する…バタフライ効果も似たようなものですよね?」
「ああ、そうだ。いいかね?本来過去というものは…絶対に変えてはいけないのだ。何故なら過去を変えることによって、そこに繋がる未来が枝分かれしてしまうからだ。それこそ無限に続く宇宙のようにね」
俺は黙って教授の話を聞く。
「今、我々が住んでいるこの世界がA地点とする。そして過去へ戻って本来の結果を変えてしまうことによって、平行世界Bが生まれていく。このBの世界はAの世界とでは全く違う世界なのだ」
「そうなりますね。本来とは違う過去を経験しているのですから」
「そう、そこが重要なのだ。いいか?過去を変えて現代に戻っても、そこが平行世界BやCだったら意味が無いのだよ?結局Aの世界では何も変わっていないことになるのだから」
「確かにそうなりますね…」
「つまり、この一番右にあるアイコンは…過去を変えて、この世界に戻ってくる為の道標なのだ。本来戻るべき座標を定めてくれるのだ。…この研究が一番大変だったよ…」
「そうですね…俺が過去を変えて、違う並行世界に戻れば別の俺が存在している事になるわけですからね」
「ああ、流石私の弟子だ。理解が早くて助かる」
宮田教授はニヤリと笑うと俺に尋ねた。
「どうだ?上野。これはある意味…時を操る神『クロノス』への挑戦だ。かなり危険を伴うかもしれん。過去へ戻れば私は君の手助けが一切出来ない。何しろこの機械は1人しか過去へ送れないのだよ。それでも…やるか?」
「ええ、勿論です。俺は…必ず過去を変えて…彼女を助けて、またこの世界へ戻ってきます」
「そうか…。分かった。俺もできるだけの事は協力しよう」
「はい!」
必ず彩花の命を救って見せる。
何、大丈夫だ。きっとうまくいくはずだ…。
だが…この時の俺はまだ事態を軽く考えていた。
歴史を元の世界に戻そうとする強制力の存在など念頭にも無かったのだ。
その為…その後、何度も何度も歴史の強制力に翻弄され…俺は絶望を味わうことになるのだった―。
思わず教授に詰め寄った。
「ああ、まぁ落ち着きなさい。私の緻密な計算により、戻りたい過去へ自由に設定出来る磁場発生装置が完成したんだよ。初めは人の大きさほどの装置だったが…みたまえ!研究に研究を重ね…この様な小型の装置を作ることが出来たのだよ」
宮田教授は引き出しの中から手のひらサイズのスピーカーのようなものを取り出すとテーブルの上に置いた。
中央には液晶画面が着いており、青く数字が表示されている。数字の下には4つのアイコンが並んでいた。
「教授?これは何ですか?」
磁場発生装置を見つめながら尋ねた。
「いいか?今画面に映し出されている数字…これが今の時間だ。西暦から年月日、そして時間がここに表示されている。分かるな?」
「ええ、勿論です」
「下のアイコンだが、まず一番左のアイコンはプラスとマイナス表示される。プラスは未来、マイナスは過去だ。そして隣のアイコンで何年前の何月何日、何時に戻りたいか設定する。そして…次のアイコン。これをタップすると磁場が発生するのだ」
「そうなのですね…」
思わずアイコンに触れようとした時…。
「おっと、まだ説明は終わっていない。だから勝手に触るなよ?いいかね?ここからが一番重要な話だ。よく聞きなさい」
「はい」
素直に頷く。
「君は平行世界のことは知っているだろう?」
「ええ、勿論ですよ。代替宇宙…いわゆるパラレルワールドのことですよね?ある世界から分岐して、それに並行して別の世界が存在する…バタフライ効果も似たようなものですよね?」
「ああ、そうだ。いいかね?本来過去というものは…絶対に変えてはいけないのだ。何故なら過去を変えることによって、そこに繋がる未来が枝分かれしてしまうからだ。それこそ無限に続く宇宙のようにね」
俺は黙って教授の話を聞く。
「今、我々が住んでいるこの世界がA地点とする。そして過去へ戻って本来の結果を変えてしまうことによって、平行世界Bが生まれていく。このBの世界はAの世界とでは全く違う世界なのだ」
「そうなりますね。本来とは違う過去を経験しているのですから」
「そう、そこが重要なのだ。いいか?過去を変えて現代に戻っても、そこが平行世界BやCだったら意味が無いのだよ?結局Aの世界では何も変わっていないことになるのだから」
「確かにそうなりますね…」
「つまり、この一番右にあるアイコンは…過去を変えて、この世界に戻ってくる為の道標なのだ。本来戻るべき座標を定めてくれるのだ。…この研究が一番大変だったよ…」
「そうですね…俺が過去を変えて、違う並行世界に戻れば別の俺が存在している事になるわけですからね」
「ああ、流石私の弟子だ。理解が早くて助かる」
宮田教授はニヤリと笑うと俺に尋ねた。
「どうだ?上野。これはある意味…時を操る神『クロノス』への挑戦だ。かなり危険を伴うかもしれん。過去へ戻れば私は君の手助けが一切出来ない。何しろこの機械は1人しか過去へ送れないのだよ。それでも…やるか?」
「ええ、勿論です。俺は…必ず過去を変えて…彼女を助けて、またこの世界へ戻ってきます」
「そうか…。分かった。俺もできるだけの事は協力しよう」
「はい!」
必ず彩花の命を救って見せる。
何、大丈夫だ。きっとうまくいくはずだ…。
だが…この時の俺はまだ事態を軽く考えていた。
歴史を元の世界に戻そうとする強制力の存在など念頭にも無かったのだ。
その為…その後、何度も何度も歴史の強制力に翻弄され…俺は絶望を味わうことになるのだった―。
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