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第2章 51 心を強く
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「そうか…分かった」
教授は静かに頷いた。
「ええっ?!ほ、本気ですかっ?!俺…もうこの時代に戻ってこないかもしれないんですよ?!つまり…この世界からいなくなるってことですよ?いいんですかっ?!」
まさかあっさり頷くとは思わなかった。
「何だ?上野…ひょっとして引き止めてもらいたかったのか?俺が引き止めればお前は過去にとどまるのをやめるのか?」
からかうように教授は笑った。
「別にそういうわけではありませんけど…。でも彩花と恋人同士になれるなら俺は別にこの時代に未練はありません」
「上野…」
教授が悲しげな目で俺を見た。その眼差しに少しだけ罪悪感を感じた。
「で、でも教授に関しては別ですよ?寂しい気持ちはありますけど…いざとなったら過去の教授に会うことは可能ですからね?」
チラリと教授を見ながら、我ながら言い訳じみたことを言っているのは自覚していた。
例え俺が過去の教授に会っても俺のことを知るはずもないのに…。
しかし教授は頷いた。
「うん、そうだな。過去に戻れば…ひょっとしてどこかで出会うことがあるかもしれないな。だが…忘れるなよ?上野。何度も言うが、南さんは6月9日に必ず死ぬという運命にある。これに逆らうのは容易なことじゃない」
「ええ、分かっています」
「ひょっとすると、ここから…お前の本当の戦いが始まるかも知れない。何度もやり直しをすることになるかもしれない」
教授の目は真剣だった。
「はい…」
「眼の前で南さんを失ってしまう事態になる可能性だってある。だが…お前は何が起こっても心を強く持つんだ。この先も何度も絶望の淵を彷徨うことになるかもしれないが…お前が希望を失わない限りは…いずれどこかの平行世界で南さんを救って、お前の望む未来を手に入れること出来る日が…やがて訪れるはずだ」
「教授…。分かりました。この先、何度彩花を助けることに失敗したとしても…俺は希望を失いません。約束します」
自分に言い聞かせるように返事をした。
「分かった…お前の意志を確認出来たなら…それでいい」
そして教授はPCに向かうと、何やらものすごい速さでキーボードを叩き始めた。
「教授?」
教授はこちらを見ることもなく言った。
「上野、今からこの『磁場発生装置』に別のプログラミングを加える。少し時間がかかるから…待っていろ」
「そうですか…。ではお言葉に甘えて…ここで休ませて貰えませんか?寝かせて下さい…」
次に過去に戻ればいつ眠れるか分からない。
「ああ、分かった…そうすればいい」
「ありがとうございます…」
いつも教授が仮眠に使っているソファベッドに横たわると俺は目を閉じた。
俺はその時夢を見た。
彩花と晴れて恋人同士になれて、2人でデートをする夢を―。
教授は静かに頷いた。
「ええっ?!ほ、本気ですかっ?!俺…もうこの時代に戻ってこないかもしれないんですよ?!つまり…この世界からいなくなるってことですよ?いいんですかっ?!」
まさかあっさり頷くとは思わなかった。
「何だ?上野…ひょっとして引き止めてもらいたかったのか?俺が引き止めればお前は過去にとどまるのをやめるのか?」
からかうように教授は笑った。
「別にそういうわけではありませんけど…。でも彩花と恋人同士になれるなら俺は別にこの時代に未練はありません」
「上野…」
教授が悲しげな目で俺を見た。その眼差しに少しだけ罪悪感を感じた。
「で、でも教授に関しては別ですよ?寂しい気持ちはありますけど…いざとなったら過去の教授に会うことは可能ですからね?」
チラリと教授を見ながら、我ながら言い訳じみたことを言っているのは自覚していた。
例え俺が過去の教授に会っても俺のことを知るはずもないのに…。
しかし教授は頷いた。
「うん、そうだな。過去に戻れば…ひょっとしてどこかで出会うことがあるかもしれないな。だが…忘れるなよ?上野。何度も言うが、南さんは6月9日に必ず死ぬという運命にある。これに逆らうのは容易なことじゃない」
「ええ、分かっています」
「ひょっとすると、ここから…お前の本当の戦いが始まるかも知れない。何度もやり直しをすることになるかもしれない」
教授の目は真剣だった。
「はい…」
「眼の前で南さんを失ってしまう事態になる可能性だってある。だが…お前は何が起こっても心を強く持つんだ。この先も何度も絶望の淵を彷徨うことになるかもしれないが…お前が希望を失わない限りは…いずれどこかの平行世界で南さんを救って、お前の望む未来を手に入れること出来る日が…やがて訪れるはずだ」
「教授…。分かりました。この先、何度彩花を助けることに失敗したとしても…俺は希望を失いません。約束します」
自分に言い聞かせるように返事をした。
「分かった…お前の意志を確認出来たなら…それでいい」
そして教授はPCに向かうと、何やらものすごい速さでキーボードを叩き始めた。
「教授?」
教授はこちらを見ることもなく言った。
「上野、今からこの『磁場発生装置』に別のプログラミングを加える。少し時間がかかるから…待っていろ」
「そうですか…。ではお言葉に甘えて…ここで休ませて貰えませんか?寝かせて下さい…」
次に過去に戻ればいつ眠れるか分からない。
「ああ、分かった…そうすればいい」
「ありがとうございます…」
いつも教授が仮眠に使っているソファベッドに横たわると俺は目を閉じた。
俺はその時夢を見た。
彩花と晴れて恋人同士になれて、2人でデートをする夢を―。
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